最終公演を前に故人を偲ぶ劇団維新派

2016.8.21 12:00

左から、会見に出席した内橋和久、山﨑佳奈子、平野舞、金子仁司

(写真3枚)

主宰・松本雄吉を6月に失いながらも、10月14日〜24日に平城京跡地で新作野外公演『アマハラ』を上演する大阪の劇団・維新派。長年劇中音楽を担当している音楽家・内橋和久や劇団員らによる会見が行われ、公演内容にとどまらず、松本との思い出が語られた。

2010年に上演された過去の公演を全面的に改訂する本作。20世紀前半のアジアの海の歴史を、実在の日本人移民たちの逸話を元に描き出した作品で、松本は生前、野外劇場の設営場所や、廃船をイメージした舞台美術までは決めていたという。「現地を歩いて『お客さんに生駒山に沈む夕陽を見せるならここやな』と、すぐこの場所(第二次朝堂院跡)を会場に決めました。奈良はシルクロードの終着点と言われ、大陸に向けて開かれていた。海のない奈良県に船を作るということが歴史的にも造形的にも面白いのでは、と思ったようだ」と制作の山﨑佳奈子は話す。

今回の舞台の模型を持つ金子(左)、松本が遺した創作ノートのコピーを持つ平野
今回の舞台の模型を持つ金子(左)、松本が遺した創作ノートのコピーを持つ平野

しかし脚本の方は、大まかな構成を決めた段階で力つきた。そのため役者たちを中心に演出部を結成し、松本の遺した創作ノートなどを手がかりに、各自でシーンを作り直している。演出部の平野舞は、「松本さんがどういう風に新しくしたかったか、どういう目線が欲しかったかを考えながらやっていますが、探れば探るほど一体どういうひらめきで作っていたのか」と松本の創造力の底の深さに頭を悩ましている様子だった。

また松本との共同作業や人柄について、内橋が「『こういうことがやりたいんや』としゃべるだけでも創作の大きなヒントをもらえた」と話し、劇団員・金子仁司は「野外劇場を作り始める時、地ならしを一番にやるのが松本さん。この人がやるなら僕らもやらねば、と思わせてくれる人でした」と故人を偲ぶ一幕もあった。

松本が遺した創作ノートのコピー。その内容は検証する平野が「広大な土地が広がるばかり」と頭を抱えるほど
松本が遺した創作ノートのコピー。その内容は検証する平野が「広大な土地が広がるばかり」と頭を抱えるほど

公演場所を決める際には、「お客さんにどういう風景を見せたいか、役者がどこに立ちたいと思うかを考えていた」と山崎が話すように、松本は自分が「見せたい風景」を創作の最大のモチベーションにしていた。これが劇団の最終公演となる本公演。彼が私たちに見せたかった最後の風景を、ぜひとも体感しておきたい。チケットは一般5,500円、U25 3,000円、8月28日に劇団公式サイトで発売される。

取材・文・写真/吉永美和子

2016年維新派野外公演『アマハラ』

脚本・構成:松本雄吉
音楽・演奏 :内橋和久
出演:維新派、ほか

日時:2016年10月14日(金)〜24日(月)・17:15〜
会場:奈良市平城宮跡(奈良県奈良市佐紀町)
料金:一般5,500円、U25 3,000円(全席指定)
電話:06-6763-2634(維新派)

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