シェイクスピア・オペラ 斬新な挑戦も

左からカウンターテナー彌勒忠史、演出家アントニー・マクドナルド、カウンターテナー藤木大地
没後400年のシェイクスピア・イヤーにちなみ、兵庫県立芸術文化センター(西宮市)の佐渡裕が芸術監督プロデュースするオペラ喜劇『夏の夜の夢』の上演が7月に行われる。それを前に、大阪で記者会見が行われ、演出家のアントニー・マクドナルド、ダブルキャストとなるオーべロン役の彌勒忠史と藤木大地が出席した。
今回の作品は、イギリスを代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンがオペラ化したもの。同センターの芸術監督・佐渡裕がそのユニークさと繊細さに惚れ込んだ作曲家でもあり、いつかやりたいと思っていた演目だそう。当日は佐渡が高熱のため急遽欠席となったため、「僕が伝えたかったのはなにしろシェイクスピアの素晴らしい脚本と何百年とイギリスで育まれた劇場文化。そのDNAとも言えるお芝居の面白さを見事に音にしたブリテンの天才性を証明したいと思っています」とのメッセージが伝えられた。
戯曲と異なり、オペラ版は日本での上演回数はまだまだ少ない同作。今回は妖精界と人間界を、日本とヨーロッパで分けて演出する新しい試みが注目だ。妖精界は松岡和子(日本シェイクスピア協会会員)の新たな訳詞で日本人キャストが歌い、人間界の登場人物は、ロンドンのオーディションで選抜された面々が、従来の英詞で繰り広げる(双方が登場するシーンは英詞に)。「僕にとっては日本語はエギゾチックで一風変わっているので、ちょうど妖精の世界を表現するのにぴったりだ。そして、妖精のパックは後半で直接、観客に語りかけるシーンもあるので観客にとって共感しやすくなると思う」とマクドナルド。まさにシェイクスピアが描いた、異世界を交錯させる舞台を予感させる。

今回参加するオーベロン役の2人は同作との結びつきも強く、彌勒は「数年前に収録の現場で、佐渡さんに歌う気はあるかと耳打ちされ、それはもちろんと答えて、ずっと待っておりました。もしかして夢だったのかと思ったこともあるほどです。学生の頃にシェイクスピアの劇音楽を作曲したこともありまして、ちょうど出版されたばかりの松岡和子先生の訳でお芝居をした縁もあり、作品としても松岡先生の訳で歌わせていただくのにも思い入れがあります」。そして、2015年度の松方ホール音楽賞を受賞したばかりの、注目のカウンターテナー藤木は「ヨーロッパでキャリアを築こうとしたときに、オーディションやコンクールで、必ず1曲目に歌っていたのがオーベロン役のアリアであります。そして、それで道を作ってきた役であります。やるからには、世界一の歌手になりたいと思っているので一生懸命がんばります」とそれぞれの思いを語った。
また公演期間中には、佐渡たってのリクエストとして「マジカル」をキーワードに、舞台装置をそのまま使った山下洋輔らが参加するコンサート『真夏の夜のジャズ』(7/23)と、『シェイクスピアも笑い出す 夏の夜の 桂文枝落語会』(7/27)なども開催。マクドナルドが「舞台は古い写真のようなイメージだよ、自然がひっくりかえったような世界なんだ。真夏だけれど、雨が降っていて、寒くて、まるでイギリスのような天気の不思議さだね」と語る舞台装置だけに、どんな相乗効果を生むのかも楽しみにしたい。
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2016『夏の夜の夢』
期間:7月22日(金)・24日(日)・26日(火)・28日(木)・30日(土)・31日(日)
時間:14:00
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(西宮市高松町2-22)
料金:A12,000円、B9,000円、C7,000円、D5,000円、E3,000円
電話:0798-68-0255
※2月21日(日)チケット発売
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