ミルクマン斉藤が選ぶ、ベスト洋画
2015.12.28 20:30

いよいよ年末。賞レースやベスト企画が各業界で賑わうなか、Lmaga.jp・映画チームも独断と偏見の「2015年のベスト映画」企画を実施。最後の選者は、デザイン集団・groovisionsの、唯一デザインしないメンバー。テレビブロス、キネマ旬報などでも連載中の映画評論家・ミルクマン斉藤さん。まずは洋画のベスト5+注目新人から。

【ミルクマン斉藤・2015年洋画総評】
とにかく2015年は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の年だった。もはやジョン・フォード『駅馬車』に並ぶ映画的純粋性に達したこの映画をベストにすると、あまりにほかが不憫なのであえて外した上のベスト5であります。そんな意味では、モフセン・マフマルバフ『独裁者と小さな孫』も近いが、個人的には去年のベストに入れたのでこれも割愛。

Best5『インヒアレント・ヴァイス』

アリ・フォルマン監督の『コングレス未来学会議』と並ぶアタマのおかしな映画だが、あっちが鬱系だとするとコチラは躁系。次々と現れるフザケたエロキャラ(マッサージ嬢ジェイド最高!)、怖いんだかなんだかよく判らない警察と悪の組織と、ラリりっぱなしのホアキン・フェニックス。PTAらしく選曲センスも抜群で、ハワード・ホークス『三つ数えろ』ばりに物語の筋などどうでもいいと吹っ切って「グルーヴィ」すれば最高のコメディなんだけど・・・(4月公開/R15+)。
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice

Best4『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』

2015年はスパイ映画ネオ・ルネッサンスともいうべきで、’60年代テイストの荒唐無稽系が新たなアレンジを施されて続々登場。『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E.』も大いに楽しんだが、パロディやオマージュに頼らず、娯楽映画としてほとんど隙のない脚本・演出でシリーズ断トツの完成度に達した本作がベストだろう。トム・クルーズの映画バカ度はいよいよ病膏肓、どメジャーのシリーズものをほぼ制覇しながら持ち味を全く失わないサイモン・ペグも凄いなあ(8月公開)。
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー
配給:パラマウント
http://www.missionimpossiblejp.jp

Best3『フレンチアルプスで起きたこと』

男性既婚者ならヘラヘラ笑って観続けることは到底無理なブラック・コメディ。のんびり始まった家族のヴァカンスが、瞬時にして修復不可能なまでに瓦解。しでかしてしまった「行為」を自己否定しようとすればするほど、事件とは無関係なボロまで漏れはじめる夫の醜態は悲惨の極み。ある意味、究極のファミリー映画といえるだろう。しかし冷徹なまでの画づくりは、終始シャープでダイナミズムに満ちているのだ(7月公開)。
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ、リサ・ロブン・コングスリ、ほか
配給:マジックアワー
http://www.magichour.co.jp/turist/

Best2『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

今やアメリカ映画の良心だとさえ思うJ.ファヴロウ作品。さまざまな人種・文化の総合体であることを謳うUSA賛歌ではあるのだが、その土地ごとの食事(なんせ料理人の話だし)と同等に扱われるのが音楽。フロリダからLAまで大陸横断の旅がそのままアメリカ音楽の混血性をたずねる旅になっているのが素晴らしい。2015年はさまざまな映画でWEBツールへのアプローチが試みられたけれど、SNSやLINEやVine等の使い方も意識的かつ実に洒落ている(2月公開/PG12)。
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ジョン・ファヴロー、ロバート・ダウニーJr、ほか
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://chef-movie.jp

Best1『コングレス未来学会議』

こんなケッタイな映画、そうあるモンじゃない。前半は自虐的だが現実的なデジタル映画時代の考察で、意地の悪い皮肉に満ちつつも突発的な感動に襲われる秀逸さ、でも後半はほぼすべて、極彩色でうねうね動きまくるフライシャー兄弟ふうの幻覚アニメに! しかしトータルで観ると世界像は全篇一貫していて、原作者スタニスワフ・レム(「ソラリス」)へ真摯にリスペクトしながらも妥協なき挑発的アプローチを貫いた、近年屈指のSF映画(6月公開)。
監督:アリ・フォルマン
出演:ロビン・ライト、ハーベイ・カイテル、ほか
配給:東風+gnome
http://www.thecongress-movie.jp

【注目新人】ショーン・ベイカー(『タンジェリン』監督・編集・撮影・脚本)

『マッドマックス』を除くと、2015年を最も象徴する驚愕の作品が、『東京国際映画祭』で観た『タンジェリン』。ハリウッドの街頭を舞台にしたトランスジェンダーなヒトビトのスクリューボール的コメディだが、これがiPhone5sにマクロレンズをくっつけて全篇撮ったと明記されるシロモノで、大スクリーンで観ても何の遜色もないどころか隅から隅までピントの合った気色悪さにクラクラくる。そのスタイリッシュな感覚もスパイク・リーの登場時を想起させ、監督ショーン・ベイカーの才能が尋常でないのは確か。日本公開の噂は今のところ聞かないが、速攻コレを買いに走ってないようじゃ日本の配給会社もおしまいだよ!!(日本劇場未公開)
監督:ショーン・ベイカー
出演:キタナ・キキ・ロドリゲス、マイヤ・テイラー、ほか
http://www.magpicturesinternational.com/tangerine

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