ファニーなピエロ、安藤裕子
2013年に、デビュー10周年を迎えた安藤裕子。浮き沈みの激しい音楽業界で自らの信念を貫いて10年にわたり活動するのは、決して容易なことではない。順風満帆に見えた安藤裕子も、実はだいぶ疲弊していたようだ。1月にリリースされた8thアルバム『あなたが寝てる間に』の取材の冒頭、「すごく風通しのいいアルバムになりましたね」という言葉に、「あぁ、よかった、よかった」と笑顔で答えた彼女。「ファニーなおちゃらけた感じ」というニューアルバムについてインタビューしました。
写真/渡邉一生
「ダークな時代は『終焉の曲』を探していましたね」(安藤裕子)
──今回リリースされた8thアルバム『あなたが寝てる間に』。2014年のアコースティック・アルバムを挟んだからか、『勘違い』(2012年)や『グッド・バイ』(2013年)と比べて、すごく風通しのいいアルバムになりましたね。初期・安藤裕子にも通じるポップさというか。
そこはすごく意識していたんです。シンガーソングライターって、どうしても私小説になりがちだと思うんですね。24時間、自分と対話みたいな感じで、どんどん深みにはまりやすくて。自分が疲弊していくことも多かった時期に、東北の大震災があったり、その直後に祖母が倒れて、亡くなったり。さらに、自分も子供ができたなかで、次の作品は明るいものにしたいという思いもあったので。
──激動の2011年だったと。
そう。わたし、ずっと子どもが欲しいって言ってて。で、子どもができたことと引き換えに、おばあちゃんが死んじゃったという感覚になって。ずっとおばあちゃんに面倒みてもらっていたので、精神的によくない感じになってたんですよね、すごく死生観というか、重苦しい雰囲気の曲がすごく増えていって。
──アルバム『勘違い』のジャケットの、ブラックスワンに象徴されるように、そういった楽曲が増えてましたね、明らかに。
そう。だから、自分も苦しいんですよ。そういうところに居ると。で、疲れちゃったなぁて。で、今回のアルバム制作に入るときに、ディレクターらと「明るい曲をやりたいよねー」って話をしてて。わりとホントに意識して、サウンド重視というか。ちょっとこう、心象を描くというところから離れたいなと。
──前作『グッド・バイ』のインタビュー時には、私小説的になって自分がどんどん重くなると同時に、そういった曲を歌ったときのリスナーとの繋がりは悦びもあるとも言ってましたよね。
もちろんあるんだけど・・・。あると共に、みんなの悲しみも感じてしまうから、沈んじゃうんですよね。自分の奥に。だから、体力が持たないというか(笑)。もうちょっとカラッとした、音の楽しさに触れたいなって。
──実はそれに近いことは、2010年のアルバム『JAPANESE POP』のときも言ってたんですよ(関連記事)。
そうですね。『JAPANESE POP』のときも自分の状態は良くなくて。それこそ、もう辞めようかなってくらい。だからちょっとサウンドはカラフルなものを望んでいたところはあったし。気持ちが沈んでいるわりに、音楽的にはいい曲たちが出来た感じがあったんですよね。自分もリスナーのように、「いい曲!」って泣きながら聴いたりしてたんですけど。
──旅行にも自分のアルバムを持っていく、とも。
そう。旅行は自分から離れたくて。全然知らない人に触れてみたいと思って、サンフランシスコにホームステイしたんですよ。でも、わたしはファミリーの中に入りたかったのに、ギリギリで申し込んだせいか、ホームステイをオーガナイズしているひとり暮らしのおばさんの家に引き取られてしまって。その人、昼間働きに行っちゃうし、つまんないとか思って(笑)。
──ファミリーどころか、鍵っ子だったという(笑)。
もう、全然鍵っ子! ひとりでバスに乗って、ふらふらして(笑)。そういうときにひとりで聴いてて。なんか、風景を見ながら自分に投射して、いい曲たちだなぁって思いながら、わりと聴いてたんですよねぇ。だから、自分の曲作りに疲れ切ってたのが、2010年の『JAPANESE POP』くらいからですね。
安藤裕子(あんどう・ゆうこ)
2003年にミニアルバム『サリー』でCDデビュー。2005年には「のうぜんかつら(リプライズ)」が日本酒のTVCMソングに起用され、話題に。近年は、TVドラマ・映画への書き下ろし依頼も多く、ニューアルバムには、NHKドラマ10「全力離婚相談」主題歌の「人魚姫」をはじめ、大阪ガス ダブル発電CMソング「レガート」が収録。ソングライティングのほか、ジャケットデザインなどのアートワーク、スタイリングも自身で手掛け、マルチな才能を見せる。 昨年は、大泉洋主演映画『ぶどうのなみだ』で、デビュー以来となるスクリーン出演を果たしヒロイン役をつとめた。
安藤裕子(あんどう・ゆうこ)
安藤裕子『あなたが寝てる間に』
2015年1月28日発売
CTCR-14840
3,240円
カッティングエッジ
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