「無茶して良かった(笑)」圧倒的な説得力、女優・安藤サクラ

「お相撲さんのような体を作って・・・」(安藤サクラ)
──完成した映画を観ると、全員が闘う映画になるという予感が当たっていたことがうかがえます。
だらしない体から始まって、後半のボクシングが切れれば切れるほどドラマの幅が広がるのはわかっているから、つまり自分次第なんですよね。でも予算がないから、時間も無い。じゃあ何ができるか。ひとつだけ自分でわかっていたやり方が「無茶をすること」だったんです。どのトレーナーに訊いても「それは無理だよ」って言われるレベルのことをやらなければ成立しないので。その無茶が成立して成功できたのは現場が素晴らしかったからだと思います。スタッフ全員が同じ方向を向いて、全員がこの『百円の恋』という作品を愛し、血みどろになっても完成させてやるっていう空気が満ちていて、それが後押ししてくれたんです。だから、撮影中肉体的にはかなりキツかったですが、精神的にはずっと充たされていて、とても幸せな現場でした。
──撮影期間はどれぐらいだったのですか?
2週間です。
──えっ!? 2週間であれほど体を絞り込んだんですか?
そうです。普通なら撮影を2回に分けて、その間に絞りこみ期間を設けたりすると思うんですが、そんな余裕はまったくなかったんです。だから、始めの体を作るとき、脂肪を付けるだけじゃなくて、筋肉も増強して、お相撲さんとかレスラーのような体を作ったんです。それを撮影中に脂肪だけどんどん落としていきました。
──理屈はわかりますが、映画の始めと終わりでヒロインがこれほど変貌する映画は日本映画では前代未聞のレベルです。さらに、終盤に向けて仕上がっていくボクシングの切れも衝撃的です。まさに。スタッフが一丸となった映画の凄さを感じます。最後の試合も見応えがあります。
試合のシーンも現場は壮絶でした。
──その現場の中心には武正晴監督がいたわけですが、安藤さんから見て武監督はどういう監督でしたか?
武組は、映画らしいガテン系の現場だなあって思うんです。殺気立ってるところもあって、生き生きとしていて血が通っている。私は撮ってるとき、もし万一全然面白くない映画ができあがってしまっても、「いいや、この現場にいたことだけでいいや」って思ってました。あと、私が演じていても、武さんの一子になってるんです。ラストの試合で控室からリングに向かうところなど、何回観ても「これ私じゃないよ。かっこいい」って思って笑ってしまう程です。武監督がそうしてくださったんです。
──かっこいいといえば、共演の新井浩文さんがいいですね。なにを考えてるのかまったくわからない男なんだけど(笑)。
この映画の新井君、私も大好きです。この役、ひどい男だし、ぶっきらぼうなんだけど、すごくチャーミングなんですよね。木村大作監督の『春を背負って』では夫婦役をさせてもらったり、これまで何度か共演しているんですが、この映画での新井君はまた、これまでに見たことのない顔をしていて衝撃的にステキでした。

──「何故、いなくなったの?」と訊く一子に、「一生懸命な奴、見たくないんだ」って答える。観ていてなんだそれって思うけど、次の瞬間には、ああそうかって納得する。わからないけど、こういう男いるよなって思わせるリアルな存在感があるんです。
新井君演じる祐二と一子の関係も、実際の恋愛ってそんなドラマみたいなこともなく、この映画で描かれてるようなことなんだよなーって思うんです。
──ほんとにそうですね。劇的ではないけれどリアルで、それですごく面白い映画になっている。映画ってこれでいいんだと思わせてくれます。一方、一子がバイトする百円ショップの店員たちは個性的な人ばかりで、これはこれで映画の厚みになっている。
私が最初に惹かれたのは、この人たちが面白いなってことでしたから。
──でも、やはりこの映画の芯は一子の肉体です。一子のキャラや恋愛が劇的でない分、一子の肉体が見せる説得力がガツンとくるんです。
そう言ってもらえるとうれしいです。あー、無茶して良かった(笑)。
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