今もっともヤバい俳優・柳楽優弥
2014.11.13 12:00

今もっともヤバい俳優・柳楽優弥

「(復活したのは)『許されざる者』からです」(柳楽優弥)

──今回の作品は中村文則さんという、かなり癖のある作家さんの原作で。いわば桂人は中村さんの写し鏡のような感じも濃厚なのですが、柳楽さんがその前に演じられた『アオイホノオ』の焔モユル(笑)。あれも原作者の島本和彦さんそのものの役でしたね。最終話には出演もしてられたし。

島本先生、とにかくインパクト強い方ですから。ちょいちょい撮影にも来てましたね。でも福田(雄一)監督が来て欲しいっていう日に限って来てなかったり(笑)。「何で来ないんだよ~」とか監督も言っていて。仲良いんですよね。

──福田さんと島本さんは『逆境ナイン』や『女子ーズ』で一緒に仕事されてますからね。僕は大阪芸大ではないけれど、島本さんや庵野さんとほぼ同世代で。あそこまでアニメマニアじゃなかったけれども、すでに重篤なシネフィル(映画狂)で。サブカルチャー、というよりもアンダーグラウンド文化の場にも足突っ込んでたので、とても他人事として観てられないようなドラマだったんです。

すごい時代ですよね、80年代って・・・。羨ましいです、本当に。ああなるべきだと。情報量が半端じゃなくて、そのバトルになるんですよね。『アオイホノオ』、まじすげーな。結構コアな情報って(あのドラマに)出てますか?

柳楽優弥
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──ディテールの凝りかたが尋常じゃないでしょ? たとえば、焔モユルの本棚とか。

あれ、すごいですよね。みんなあそこ見ますもんね。島本先生の本棚に当時あった本をそのまま置いていたりするので。最終話の最後のシーンで僕が部屋を荒らす、っていうので、すごい絶叫していたらしくて。

──あれはもう痛々しくてマトモに観ていられなかった。いや、本が心配で(笑)。あの本、ダミーじゃないんですか?

あのときだけは、ダミーに差し替えました(笑)。お宝レベルの本もあったらしくて。・・・美術さん(のこだわりも)すごかったですよ。当時の漫画のページを使うのでも「ムフがねーよ!」みたいな。「ムフ」のシーンがなかなか見つからなくて「どこにあるんだよムフ!」みたいな(笑)。
※註:「ムフ」とは、劇中でモユルが発見する、あだち充作品中に現れるラブコメの奥義ともいえる言葉

──でも、しっかり漫画のコマを抜いてましたよね(笑)。ま、美術さんもすごかったのですが、なにしろ福田監督の作風がいつになく真面目なのに驚きましたね。このところ、いくらなんでもフザケすぎじゃないか、というのが多かったので(笑)。

そう考えたら、映画『HK/変態仮面』とはずいぶん違いますね、確かに(笑)。

──福田監督は僕の年代から5~7年あとなんですけど、文化的、歴史的背景がたぶん彼たちの根幹にあるものとそう違わないんだなと思ったんですよ。『アオイホノオ』の舞台は大阪芸大ですけども、外景以外、芸大ではあまり撮ってないんですよね?

第1話だけですね、大阪芸大は。基本的に東京で撮ったので、全部似たようなところでロケしたんです。

──それにしても、リアルなんだけれどもあれほどカリカチュアライズされた役を、あれだけのテンションで11話演じるって相当疲れたんじゃないですか?(笑)

福田さんが「行き過ぎてるからOK」みたいなこと言ってました。「中途半端じゃねぇもん」って。すごい評判が良かったんですけど、ホントあれ(『アオイホノオ』)、良かったですか?

──ええ、良かったです! 素晴らしかった。

ありがとうございます。

──柳楽さんというと、是枝さんの『誰も知らない』でいきなり登場、いきなりカンヌ映画祭最優秀男優賞、という経歴から離れることは一生できないでしょうね。

そうですね。でも是枝監督とはまたやってみたいんですよ。

──そんな話があるんですか?

いや、まだ全然ないんですけど、なんかやりたいですね。台本がなかった『誰も知らない』の演出は特殊だったんで。はっきり言ってあまり覚えてないんですけれども、その人の個性がわりと表面に出る演出ですよね。だから、自分がキャリア積んでいったらまたなんかやりたいなと。

──あそこまでのフリーな演出は是枝さんにとっても特殊だったと思いますね。また『誰も知らない』のスタイルで組んだら面白いかもしれませんね。

最高ですね。それだったら俺、超居心地良くてたまんないですね。その場で台詞とか教えてもらいたいですもん。

──そう言えるのは柳楽さんが演技力についての自信を深められたこそだと思いますね。それにしてもあの時点で、あの年齢とあの経験値でカンヌの賞を獲っちゃったっていうのは、想像を絶するプレッシャーだっただろうなと。当時僕はいろいろなところに書いたりもしたんですが、なんてカンヌは残酷なことをするんだと。まるで才能を潰しにかかってるようなもんじゃないか、と。

いや、プレッシャーですよ、これは。常に周りから高いものを求められたっていうのが、凄く嫌でしたね、キツいな~って。まだ14歳とかだったので家族はいてくれましたけれど、自分一人で考えちゃうモードになったというか。

──でも家族と同居されていて、まだ良かったですね。

良かったです。本当に1人だったら・・・ちょっと考えられないですけど。今思えば後悔は全くないですし、10代の割にいろいろ経験できたので。バイトしたりとか。

──当時芸能ネタで話題になりましたよね。

バイトやりたかったんですよ、結構。中学高校でみんなやってるのにやれなかったから。すごく楽しかった。しっかり夢かなったし。でも太り過ぎちゃったり(笑)。

──結構『戦慄迷宮3D』(2009年)のときとか、しんどかったんじゃないですか? しんどさが画面に出てた感じがするんですね。あれ観たときは怖いとか3Dの効果とかより、柳楽さんの行く末が心配になった。

良くなかったですね・・・良くなかったって言っちゃったら失礼なんだけど、確かにしんどかった(笑)。

『許されざる者』© 2013 Warner Entertainment Japan Inc.
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──でも2014年現在、名前があるだけでこの作品は観なければ、と思わせる俳優のひとりに返り咲いたわけですよね。やっぱりそのきっかけは李相日監督の『許されざる者』だったと思います。いってみれば是枝的演出とは真逆ともいえる監督だと思いますが。

もちろんです。それはもう(李監督には)頭が上がらないです。でも意外と勘違いする人が多いんですよね。(復活したのは)『アオイホノオ』からだとか『クローズEXPLODE』からだ、とかみたいな。じゃなくて『許されざる者』からなんですよ、事実。あれがあったから『闇金ウシジマくん Part.2』でもあんな風に演れたんです。「ファンに嫌われちゃう~」みたいなところは吹っ切れて、「ファンなんて、みんな居なくなれー!」みたいな勢いで(笑)。正直、10代は完敗だったので、20代は完全勝利で攻めたいなと、そんな気持ちでいます。

──やっぱり奥さんが良かったんじゃないですかね? エリーさんの表情見てるとそんな感じがして仕方ない(笑)。

そうですね、出会えたのは本当に。ホントにいい人なんです。それは確実にあります。大きいですね。

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柳楽優弥(やぎら・ゆうや)
URL:http://official.stardust.co.jp/yuyayagira/

映画『最後の命』
2014年11月8日(土)公開
監督:松本准平
出演:柳楽優弥、矢野聖人、比留川游、ほか
配給:ティ・ジョイ R15+
URL:http://saigonoinochi.com

  
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