映画「るろうに剣心」に込めた野心、大友啓史監督&武井咲に訊く

2014.8.1 12:00

監督を務める大友啓史(右)とヒロイン・神谷薫を演じる武井咲

(写真6枚)

1990年代の週刊少年ジャンプのなかでも、とりわけ人気の高い和月伸宏の時代劇コミック『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』。累計5800万部を誇るコミックのファンは映画化に際して、ネット上で喧々諤々、賛否両論を巻き起こしていたが、いざ公開されるとその超絶アクション・シーンに悶絶! 結果、200万人を動員する大ヒットとなった。その続編が、2部作となっていよいよ登場する。前作に引き続き監督を務める大友啓史、ヒロイン・神谷薫を演じる武井咲に、映画評論家・ミルクマン斉藤が直撃インタビューした。

取材・文/ミルクマン斉藤 写真/上地智

「猛獣の綱を切ってしまったというか(笑)」(大友監督)

──前作はまさに「日本のアクション映画の歴史を変えた」といっていい作品となっただけに、今回の二部作の期待値は観客の間で相当高くなってると思うんですよ。でも今回はアクションももちろんですが、ストーリーがなんとも骨太で。伝奇時代もの好きとしては前作の比じゃないくらい感心して、僕は世代じゃないもので今まで読まずにいた原作にまで手を付けてしまいました。監督もさほど僕と年齢差はないのですが、原作は以前から読んでらしたんですか?

大友「名前はもちろん知っていたんですが、(映画化を)やるとなってちゃんと読んだって感じですね。NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年放送)を撮っている途中で、俺が会社を辞めるっていう噂を聞いた人たちがいろんな企画を持ってきてくださったときにあった、そのなかの1本だったんですが」

© 和月伸宏/集英社 © 2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会

──特に前作は、キャスティング的にも人物設定的にも『龍馬伝』とかなり似通ったところがありましたよね。もちろん意識されてのことだったと思うんですが。そもそも剣心は原作の時点で人斬り以蔵がモデルであろうし、「もし以蔵が生きていたら」的な発想はあっただろうし、その以蔵を『龍馬伝』でことのほか繊細な若者として演じていたのが佐藤健さんだった。

大友「『龍馬伝』の後、『人斬り龍馬』っていうタイトルの映画を1本企画したんですよ。龍馬って一度も人を斬らなかった人と言われてるんですが、もし龍馬が人生でたった一度だけ人を斬るとしたらそこにどういうドラマがあるのかをフィクションでやりたかったんですね。日曜夜8時の大河ドラマはお茶の間エンタテインメントでなきゃいけないから、あまりやれなかった龍馬の凄味みたいなものを映画でできないかな、と。龍馬は北辰一刀流の達人だったわけでしょ? 1回だけ人を斬って、もしかするとそれが原因で暗殺されたんじゃないか、とか。だからテーマとしての『人斬り』が、なんとなく繋がっていったっていう感じはありますね」

──以蔵とか龍馬とかが混じりあったイメージとして、剣心に自然と繋がった、という。

大友「そう。しかも『龍馬伝』の龍馬は、『みんなが笑って暮らせる時代を作る』と言ってましたよね。龍馬が目指した、『笑って暮らせる時代』というのが、まさに今回の(開巻早々に出てくる)歌舞伎小屋なわけですよ。ま、地続きなんですよね、はっきり言って僕のなかでは。で、そこから『笑って暮らせる時代』が壊されていっちゃうかもしれないって話になっていく」

──しかもその壊れかたが陰惨ですよね。明治新政府が成立する際に見捨てられた暗い澱が甦り、新政府自体を内部崩壊させていくという。

大友「それも歴史の事実ですから。薩長が政権を獲っていく過程で、士族の不平分子がどんどん増えていく。西郷隆盛を斬り、さまざまな乱を斬り、富国強兵のために薩長がかつての仲間たちを斬っていかざるを得ないという・・・この状況はとてもリアルなんです。その一方で、薫の道場『神谷活心流』もまたリアルなんですよ。人をいかに斬るかの『剣術』だった時代が、次第に『剣道』へと移行していくという」

© 和月伸宏/集英社 © 2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会
© 和月伸宏/集英社 © 2014「るろうに剣心 京都大火/伝説の最期」製作委員会

──「剣」の捉えかたにしても、剣心は「剣は凶器であり、剣術は殺人術で、どんな綺麗事やお題目を並べてもそれは真実」といったことを言い放ちますよね。自分は人を斬ることのできない逆刃の剣を持ちながら。僕はどうしても、内田吐夢が『宮本武蔵』(五部作+番外編一作)を延々と創り上げつつも最後の最後で矛盾を恐れず提示した「殺人剣即活人剣」「剣は畢竟暴力」の相反する2つの言葉を思い浮かべるんですけども・・・。そうした剣心のなかの矛盾、いわばダークサイドが志々雄真実という存在ですよね。剣心の葛藤、すなわちそれが明治新政府の葛藤でもあるという構造がとても面白いなと。

大友「その通りですね。歴史に翻弄されている気がするでしょ? しかもこれは現代にも当てはまると思うんですよ。今の政府が向かっているものとしても」

──ま、そんなテーマを持ちながらも、やはりアクション・シーンは大変なものであります。アクション演出の谷垣健治さんにとっても、前作は間違いなくエポックだったでしょう。香港映画を含めてもあれほどの新機軸・・・というか本気度は出されてなかったと思うんです。

大友「猛獣の綱を切ってしまったというか(笑)」

映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』

京都大火編=8月1日(金)公開
伝説の最期編=9月13日(土)公開
監督・脚本:大友啓史
出演:佐藤 健、武井 咲、伊勢谷友介、江口洋介・藤原竜也
配給:ワーナー・ブラザース映画

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本