R18+の異色作、三浦大輔&池松壮亮を直撃
2014.3.6 10:00

R18+の異色作、三浦大輔&池松壮亮を直撃

長編デビュー作『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で、一気に映画ファンの心もつかんだ三浦大輔。その注目の2作目は、彼が主宰する演劇ユニット「ポツドール」で上演した、センセーショナルな舞台作品の映画化だ。「乱交パーティが舞台のR18+映画」なんて言うと、ひるんでしまうかもしれない(特に女子)。しかしこれはセックスを描いた映画ではなく、むき出しにされた人間たちの姿を、淡々ととらえたドキュメンタリー・・・と言ってもいい異色作なのだ。その映画化の狙いや、撮影の裏話などを、監督の三浦大輔、主演の池松壮亮に、それぞれの目線から語ってもらいました。

三浦監督「人間を愛しく描いたつもりです」

──まず、なぜこの作品を映画化しようと?

これは僕発信ではなく、プロデューサーの方から話があったんです。僕自身は、これを映画化するのは非常に困難だと思っていました。というのもこの作品は、乱交パーティの現場に立ち会っているという、その空気感をお客さんにも体感させることによって描いていく舞台だったからなんです。つまり、演劇のライブ性をすごく利用した作品だったんですよね。

──では逆に映像なら、効果的に見せられると思ったポイントは?

クローズアップなどが使える分、個人の感情を描くのは映画の方が適しているな、と。それで、無口で客観的にその場所を見ている〈男1〉と〈女1〉に、映画では焦点を寄せることにしました。2人の視点や感情の起伏を細かく見せることで、観客もその場にいるように思わせたいっていう。舞台とは違う方法で、その場所の空気感を体感してもらいたかったんです。

──さらに設定が過激なことも、苦労した点のひとつだったのではと思います。

実は最初は、R18+にはならない方向で企画を進めていたんですけど、それが上手くいかなかったんです、どうしても。それであえて、最初からR18+にする、セックスシーンもちゃんと撮るという方向に変えました。やはり裸の関係をちゃんと記録しておかないと、この物語の本質的なところにはたどり着けないと思ったので。

──しかも主役の2人は、ほとんどしゃべることなく感情の機微を伝えることが要求されたので、キャスティングは相当難しかったのでは?

脱げるかどうかというのはもちろんありますけど、常に何かが渦巻いているような、強い存在感が必要でした。池松(壮亮)君は僕が選んで、門脇(麦)さんはオーディションで選びました。僕、オーディションでも普通にダメ出しするんですよ(笑)。少しでも可能性のある人には、いろいろしつこく要求したので、かなり厳しく見えたみたいです。でも門脇さんと出会って、「彼女にしよう」と決心できました。

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──この2人を始めとする、登場人物たちの感情を上手く引き出すために、どういう演出を行ったのでしょうか?

この映画は、案外順撮り(注:物語の流れの順番で撮影を行うこと)ができたので、役者同士のリアルな距離感を利用することができました。初めて顔を合わせてから、セックスシーンの撮影まではすごい緊張感があったけど、それが終わると全員一気に開放してきましたね。特に門脇さんは、この映画に出演する彼女自身の気持ちと、乱交パーティーに参加する主人公の女子大生の気持ちを同期させて、演じる時にそれを利用したと言ってましたし。池松君はキャリアが長いけど、もともとその状況に(あえて)影響を受けて役を作る人なんですよ。だからこの映画は、2人のドキュメンタリー的な要素もあるんです。門脇さんと池松君のその時の気持ちや反応を、僕からは何の狙いも持たずにしっかり記録しようという感じでした。

──あまり「もっとこういう気持ちで演じて」みたいな演出は付けないんですか?

演劇でもそうですけど、あまり作りごとではないようなところで、せめぎ合っている役者さんたちを、僕は観たいんですよ。逆に役者の演技力とか、別の何かに成り代わるみたいな姿には、あまり興味を惹かれないんです。

──作品自体は、確かに性的な描写は少なくないですよね。でも、セックスによって一足飛びで始まった関係性ならではの辛らつさや面白さの方が、それ以上に印象に残りました。

そうなんですよ。やっぱり「肌でわかちあう」ってことは、あると思うんです。単純に「ヤってしまう」と、人間関係の壁ってすぐ乗り越えられるし、何の引け目もなくなったりするんですよね。でも一方で、いざ始まるまではその欲望を隠したいという気持ちもあって(笑)。そういう日本人的なもどかしさも、ここでは描きましたけど。

──逆に単純にエロを期待した人は、ちょっと拍子抜けするでしょうね。

やろうと思えばもっと振り切れた方向にも行けたし、もっとエロ満載の作品にもできたと思います。でもやっぱりこの作品のテーマはエロスじゃなくて、人間の動物性と社会性の間で葛藤する人たちを見せること。あの場所にいる自分を、認めることができるかどうか? っていう。いろいろあるけれど、結局は人間を愛しく描いた作品のつもりです。だから多くの人に共感してもらえると思うし、特に本当に、女性に観ていただきたいんですよ。僕の独りよがりな男性目線だけで描いたものではないし、エログロでもないので、楽しんでいただけるはずだと思っています。

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Profile 三浦大輔(みうら・だいすけ)
1975年生まれ、北海道出身。1996年、早稲田大学演劇倶楽部を母体に、演劇ユニット「ポツドール」を結成。様々な手法を用いて、人間の本質を容赦なく浮かび上がらせる世界で注目を集め、2006年に上演した『愛の渦』で「第50回岸田國士戯曲賞」を受賞した。2010年には、銀杏BOYZの峯田和伸主演映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』で長編監督デビューを果たし、その才能を演劇ファン以外にも知らしめた。

池松壮亮インタビューに続く

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『愛の渦』

2014年3月8日(土)公開
第50回岸田國士戯曲賞を受賞した演劇ユニット「ポツドール」の舞台を、劇団主宰の劇作家・三浦大輔が自ら映画化。舞台は六本木のとあるマンションの一室。集まったのは、フリーター、女子大生、サラリーマン、OLなど、ごく普通の人たち。そこでは面倒なやり取りや段取りをすっ飛ばした、後腐れのない乱交パーティが夜な夜な繰り広げられていた。徐々にむき出しになる性欲、そこから生まれる人間関係、露わになる優越感・・・。リアルで精巧な人間喜劇を、池松壮亮、門倉麦、新井浩文、滝藤賢一ら実力派が演じる。

監督:三浦大輔
出演:池松壮亮、門脇麦、滝藤賢一、中村映里子、新井浩文、三津谷葉子、駒木根隆介、赤澤セリ、柄本時生、窪塚洋介、田中哲司
配給:クロックワークス
2時間3分
テアトル梅田ほかで上映
R18+
© 2014「映画 愛の渦」製作委員会
URL:http://ai-no-uzu.com/

  
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