旅する落語家・柳家三三 再び全国へ

2014.2.25 00:00

47日間で47都道府県を巡るツアーを成功させた落語家、柳家三三。若手実力派として、その動向に世間が注目を集める中、またもや全国ツアーを行うことに! 2月の沖縄・桜坂劇場を皮切りにスタートするツアーについて、話を訊いてきました。

取材・文/竹内厚 写真/バンリ

2013年、47日間で47都道府県を巡るという、前代未聞の独演会ツアーを成功させた柳家三三。実力、人気ともに絶好調の若手実力派にして(『情熱大陸』出演が2010年)、そのチャレンジ精神に驚かされるが、ツアー中はいろいろと大変な場面もあったよう。

「名古屋から福井へ移動する日に特急が止まってしまったので、名古屋で世話してくれた人に福井まで車で送ってもらったり、そういうことは結構ありました。その日のなるべく早いうちに次の街へ入って、街の中をいろいろと散歩したりして。で、宿でやることはとにかく洗濯。荷物を最小限しか持って行ってないんで。ところが、ずっと毎日そうしてると、ものすごい規則正しい生活になったんですよ。ツアーを沖縄からはじめて、1カ月くらいで東京に戻ってきたんですが、知り合いからは『もうちょっとやつれたり、倦んだりしてるのかと思ったら、何? その元気な顔は』って。だって楽しいんだもん」

奈良では鹿にお尻を噛まれたり、和歌山公演はツアーのスタート前には予約が3人しか入ってなかったりと、全国ツアーのエピソードは聞けばいくらでも出てきそう。東京では「思い出日記」と題して、映像付きの報告会が開かれたほどだ。

「知らない土地、はじめて行く土地でもほんとに得難い経験をさせてもらった。けど、前回はお客さんの都合を考えないで、間をあけずに回りきることが目標だったので、今度はわりとお越しいただきやすい土日の日程を選んで、全国の同じ会場で、ほんとにありがとうございましたという思いですね」

大阪では独演会や桂吉弥とのふたり会も重ねているため、大阪の落語ファンにはお馴染みの存在かもしれない。三三自身も大阪だからという気負いはなくなってきたという。

「噺家になって4年目くらいで、はじめて大阪でおしゃべりした時は、こわいところだなと。東京のペーペーの落語を聞いて絶対に笑うもんか、というよりね、大阪のお客さんの雰囲気は『俺のほうがおもしろい』って思いながら聞いてるから(笑)。それが回を重ねるうちに、無理に笑わせようと力まなくても、きちんと落語の物語として興味深く見てくれるんだとわかってきた。最近は、大阪ではあえて笑いの少ない怪談や人情噺をやって、物語がどうなるのかって楽しんでもらう。“東京”“大阪”と意識せず、自分のペースで演じられるようになってきました」

落語にとってお笑いは大事な要素ながら、決してそれがすべてではない。そのことは三三の落語を聞けば、身にしみてわかるはず。

「事前の稽古はもちろん必要だけど、高座では“出たところ勝負”。以前は落語の登場人物を、よくできた物語を成立させるための部品という考え方でしたが、今は逆です。“こんな人たちが集まったら、たまたまこんな物語になっちゃった”って。落語は昔から大勢の噺家によって、何千、何万回と演じられてきたけれど、だからって“どうせこうなるんでしょ”ってつもりで話してたら、物語にも登場人物にも生命は吹き込めない。演じられるたびに登場人物は初めて物語の中の人生を経験するんです。そうすればお客さんにも、噺の世界の中に一緒に入り込んで“この人たちはどうなるんだろう?”ってワクワクしてもらえるはずです。そのためにも、自分がいろんな場所で楽しみ、新鮮な気持ちでいることが必要なんですね」

profile
柳家三三(やなぎや・さんざ)
1974年7月4日生まれ、神奈川県小田原市出身。1993年、柳家小三治に入門。1996年、二ツ目昇進「三三」と改名。2006年には、真打に昇進する。2007年に公開された映画『しゃべれどもしゃべれども』(平山秀幸監督)では、主人公の落語家を演じた国分太一に落語指導を行う。同年、平成19年度(第62回)文化庁芸術祭大衆芸能部門「新人賞」、2010年には平成21年度「花形演芸大賞・大賞」を受賞するなど、数々の受賞歴を誇る。

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本