僕らが「日活ロマンポルノ」にハマる理由
not単なるエロ。ポルノは権力にも立ち向かう!
春岡「ロマンポルノって(描くテーマは)『情念』なんだ。情念なんだけども、それぞれ監督のスタイルがあるんだよね。ロマンポルノの代表的監督で言うと、神代辰巳、曾根中生、田中登、小沼勝、この4人」
高橋「神代辰巳が描くのは、反権力・反体制。今回上映する『ラブ・ハンター 恋の狩人』(※註2)は、神代が監督の山口清一郎と一緒に脚本を書いた作品。警察に(わいせつだと)摘発され、裁判にまでなった。曾根中生の『わたしのSEX白書 絶頂度』(※註3)なんて(ミケランジェロ・)アントニオーニ的というか」
※『ラブ・ハンター 恋の狩人』:最終日、警視庁に上映禁止を言い渡された作品。主演の田中真理は、権力との闘争の象徴として「ロマンポルノのジャンヌ・ダルク」と呼ばれた。
※『わたしのSEX白書 絶頂度』:大病院で働く女とその弟、女を娼婦の道に誘うヤクザとその恋人のストリッパー・・・4人の間で交錯する性を大胆に描いた、曾根中生の傑作。
春岡「『わたしのSEX白書 絶頂度』は、そう。看護師から娼婦になる主人公をはじめ、登場人物の誰もが肉体の結びつきの確かさを求めながら、そこに『愛』という概念がない。つまり愛なんて信用してないわけで、空虚と孤独しかない。愛の不毛を描くイタリアの作家・アントニオーニとタッチが似てる」
高橋「曾根中生は、鈴木清順の門下とも言われていて。清順といえば赤・青・黄の原色の世界でしょ。彼もそれを『色暦女浮世絵師』でやってるんだけど、真っ赤な薔薇を小川節子の股間に置いたりしてねぇ。彼の才能たるや、すごいですよ」
春岡「田中登はシュール派。ムッシュ田中って言われてたんですよね」
高橋「同期の小沼勝が言ったんだよ、『田中登のシュールな映像の映画評論を書ける人が、ついに出なかったな』と。『夜汽車の女』はね、湖で白蛇がシュルシュルシュルシュルって通っていく、もうそれしか覚えてない(笑)」
春岡「田中さんの映画は、ほかにもすげぇシーンがいくつもあるんだけど、もうそれしか残んなくなっちゃう(笑)。パートパートの映像が強烈で。いつも全体像を忘れるんだけど・・・でも傑作だという感想は残る」
高橋「『実録阿部定』(※註4)は、四畳半の部屋から出てこないで、もうヤリまくってばっかり。酔うような性の映画」
※『実録阿部定』:シュール表現のカリスマ・田中登が撮った、阿部定を題材にした映画。阿部定事件を「女の性」の観点から描いている。
春岡「田中登の『(秘)色情めす市場』(※註5)は、ロマンポルノでも特に名作だと言われてる」
※『(秘)色情めす市場』:田中登による、日活ロマンポルノの大傑作と言われる1本。深作欣二監督はこの作品にかなりの影響を受け、『仁義の墓場』を製作したとか。
高橋「ピンク映画では、パートカラーというものがあって。白黒で撮っているんだけど、セックスシーンになったらカラーになるっていうのがパターン。でも『(秘)色情めす市場』はその逆。セックスシーンであろうが、全部白黒なんだよ。ところが大阪・新世界の街を映すときだけ、村田英雄の『王将』が流れて、カラーになる。これ、傑作だよ。それと小沼さんに関しては、代表作に『花と蛇』とかがあるけれど、耽美派ですよ」
春岡「小沼勝は、そうですよね。SM映画で有名な人なんだけど、本質はソレですよね。美に溺れ、耽る、という」
高橋「映像がね、幻想的。『昼下りの情事 古都曼陀羅』という作品では、竹やぶのなかで見え隠れするセックスシーンがあったり・・・」
春岡「谷ナオミ(※註6)が女性器に刺青を入れるシーンとか・・・。まぁ、耽美ですよ」
※谷ナオミ:あらゆるSM映画に出演した伝説の女優。貴婦人のような顔立ち、母性を感じさせるふくよかな肉体で、「杉本彩も、小向美奈子も、話にならない」と春岡氏。
高橋「浣腸とか色んなことやっているんだけど、その世界がきれいに見えるんだよ。それは小沼勝だからであり、女優が谷ナオミだからであり。谷ナオミは、母性というか菩薩観音というか・・・もうホント、ふっくらとしたカラダつきですごく上品」
春岡「あの適度なふくよかさというのが、大事なんだ。縛ったときに美しく映えないとダメ。あの縛られた縄からはみ出る胸の美しさといったら・・・」
高橋「『生贄夫人』という映画で谷ナオミが脱糞するシーンがあるんだけど、落ちた便がもう、黄金のような・・・(※この後、キャッキャとしばらく谷ナオミ最強伝説が続きます・・・)」
『日活ロマンポルノ名作選』
期間:2011年5月21日(土)~6月10日(金)
会場:シネ・ヌーヴォ(大阪市西区九条1-20-24)
料金:前売1回券1000円、3回券2400円、フリーパス券12000円
電話:06-6582-1416(シネ・ヌーヴォ)
※全作品R18指定(18歳未満は鑑賞不可)
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