「迷ったら笑って」磯村勇斗が語る、映画『mentor』の異質な魅力…綾野剛・末澤誠也との“歪な再会”の裏側

2時間前

映画『mentor』に出演する磯村勇斗(Lmaga.jp撮影)

(写真9枚)

磯村勇斗、末澤誠也(Aぇ! group)、綾野剛が出演する映画『mentor』が10月16日より全国公開される。同作は、少年時代に花火遊びでアパートを全焼させたことがある幼なじみ2人と、彼らに妻子を奪われた男性の“歪な再会”を描いている。

今回は、火事を起こしたことへの罪の意識を、アーチェリー競技に打ち込むことで抑え込む益子龍之介を演じた磯村勇斗に、作品について話を訊いた(取材・文/田辺ユウキ)。

■ 「想像できることをさせない」磯村勇斗が感じた𠮷田監督の演出

──作品資料を読むと、磯村さんは、𠮷田監督の演出について「型にはめてこない」と表現されていらっしゃいましたね。

想像の範囲内で芝居をさせないといいますか、想像できることをさせないというふうに感じました。たとえば誰もがやるような日常的な動きがあったら、同じ動きを芝居には求めず、そこから外れたものを好む監督だと感じました。歩き方一つでも特徴を入れるといいますか、つい目がいってしまうような行動を𠮷田監督はキャラクターに入れてくる印象です。

映画『mentor』より。埜本(綾野剛)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。埜本(綾野剛)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会

──演じられた龍之介の人物像はどのように捉えていますか。

彼は、3人の中心人物の中でもっとも受け身。15年前の事件があり、そこから逃げるようにアーチェリーにのめり込んでいき、それが彼の支えとなり、心の平常を保つ唯一の手段でもあった。そこに拓海と埜本が現れ、過去がよみがえってくる。

その中で、龍之介がどのようにブレていくか。その辺は龍之介の見せ場でもありました。会いたくない人と会ってしまった戸惑いを、芝居として大事に描いていきたいなと思いました。

映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)©2026「mentor」製作委員会

■ 末澤誠也が演じた拓海の行動「耐えるのに必死だった」

──末澤誠也さんが演じた拓海については、どのように感じましたか。

お芝居をしながら、「おかしいな」と思って見ていました。本来であれば「こんなことはしないだろう」ということを、彼は真っすぐやる。だから、どうしてもそれに対しておもしろくなるところがあったのですが、龍之介はそれを見せてはいけないので、耐えるのに必死でした。

しかも、末澤君自身がお芝居に対して誠実な方なので、より拓海というキャラクターが真っすぐ、いきいきとしていました。

映画『mentor』より。埜本(綾野剛)、龍之介(磯村勇斗)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。埜本(綾野剛)、龍之介(磯村勇斗)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会

──確かに、事件被害者のもとを回る場面での、拓海の謝罪は迫真すぎて隣にいると逆に笑ってしまいそうですよね。

謝罪シーンも、拓海はすごくピュアなんです。現実としてその場に鉢合わせてしまったら、自分だったらどうするかなと考えました。「多分、静かに見ているんだろうな」とか、いろいろ想像しました。

映画『mentor』に出演する磯村勇斗(Lmaga.jp撮影)
映画『mentor』に出演する磯村勇斗(Lmaga.jp撮影)

■「分かりやすい姿勢」が求められる時代 『mentor』が描く“謝罪”

──『mentor』では、謝罪のあり方についても考えさせられました。今は、はっきりと目に見える形の謝罪が評価される印象です。逆に、心の底から反省していても、それが表に伝わらなければ「ちゃんと謝っていない」とされる傾向がある。龍之介は謝罪の気持ちを表に出さないタイプでした。だから、拓海に責められてしまいます。

現代は「分かりやすい姿勢」が求められていると思います。何か不祥事が起きたら、謝罪会見を開いてしっかりと頭を下げる。「謝罪をしました」というのを一度、はっきりと見せることが求められるのではないかと感じています。

謝罪するようなことをしてしまったら、すべての声とちゃんと向き合う必要もあると思います。『mentor』はそういう世の中の風刺画のように見えます。拓海によるはっきりと目に見える謝罪と、龍之介の「謝罪という気持ちがあるのか、ないのか分からない」という曖昧さを、明確に分けて描いているのではないでしょうか。

映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)、拓海(末澤誠也)©2026「mentor」製作委員会

──少し話が逸れますが、演技においても「分かりやすさ」が求められている傾向を感じませんか? 悲しい時は泣く、嬉しいときは笑うなど、真っすぐな表現でないと伝わらないようになっている気がします。

たしかに、分かりやすいキャラクター、分かりやすい感情、分かりやすいオチ、分かりやすい説明という流れに向かっているコンテンツもあるように思います。これは僕自身の考えですが、間(ま)の部分をあまり気にしなくなっているからかもしれません。

──というと?

物語は、何かが起きて、そこからいろんな要素があって、結果があるはずなのですが、間の部分を飛ばしてすぐに結果を求めてしまう。5分、10分の動画であってもスキップを繰り返し、「最後どうなるのか」と結末を急ぐようになってきたと感じていて。展開の早い動画も多く、それはやはり、とにかく答えをすぐ知りたい人が増えているからだと思います。

ただ、その間(ま)の中に、そのキャラクターはどういう人間なのかが詰まっています。そこを飛ばす人が多くなっているので、パッと見て分かる表現が求められるようになっているのかもしれません。

映画『mentor』より。拓海(末澤誠也)、龍之介(磯村勇斗)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。拓海(末澤誠也)、龍之介(磯村勇斗)©2026「mentor」製作委員会

■「遠慮なく笑って」磯村勇斗が語る『mentor』の楽しみ方

──『mentor』では、龍之介、拓海、埜本がそれぞれ人生を前に進めるために、自分で自分を鼓舞したり、何かに心の拠り所を求めたりする姿が印象的に描かれています。磯村さんはそういうものはありますか。

僕は、何かを信じて頼ったり、自分を鼓舞するものがまったくないんです。何かに縛られないように生きてきたので、「いいな」と思ったら自分が納得いくまで好きになればいいですし、嫌いになったら別のところへ動けばいい。

もし一つでも支えを持ってしまうと、ずっとそこに縛られる気がしています。自由に動く方が好きだからこそ、そういった対象をできるだけ作らないようにしています。

映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)、埜本(綾野剛)©2026「mentor」製作委員会
映画『mentor』より。龍之介(磯村勇斗)、埜本(綾野剛)©2026「mentor」製作委員会

──龍之介、拓海、埜本の感情が次々にひっくり返っていき、目が離せませんでした。鑑賞された方の感想が楽しみですね。

3人の人間模様が本当におかしくて、奇妙で、時に怖くて、感情を引っ張られたり、押されたりします。気持ちがえぐられるようなシーンからスタートしますが、それに引っ張られず、エンターテインメントとして楽しんでほしいです。

すでにご覧になった方から「どういう感情で見たらいいのか、迷いました」という声も聞いたのですが、僕は「遠慮なく笑ってください」と伝えたいです。何なら、このインタビュー記事も「迷ったら笑え!」と一言だけ書いておいてください(笑)。

映画『mentor』に出演する磯村勇斗(Lmaga.jp撮影)
映画『mentor』に出演する磯村勇斗(Lmaga.jp撮影)

映画『mentor』は10月16日(金)から全国で公開される。

写真/Lmaga.jp編集部


<Lmaga.jp読者プレゼント>
映画『mentor』あの日のレトロシールを3名様にプレゼント!

映画『mentor』

026年10月16日(金)公開
監督・脚本:𠮷田恵輔
出演:磯村勇斗、末澤誠也/木南晴夏、酒井若菜、川上麻衣子、二村仁弥、黒沢あすか、田村泰二郎/綾野剛、ほか
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ、スターサンズ
上映時間:115分
製作:2026年/日本
©2026「mentor」製作委員会

  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本