大変だったのに、あっさり負けた?ドラマに描かれていない“戦国大名4人”の奮闘【豊臣兄弟】

『豊臣兄弟!』より。写真左上から、時計回りに、三河の戦国大名・徳川家康(松下洸平)、甲斐の戦国大名・武田信玄(髙嶋政伸)、越前の戦国大名・朝倉義景(鶴見辰吾)、15代将軍・足利義昭(尾上右近)(C)NHK
豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。
5月3日放送の第17回「小谷落城」では、わずか1年の間に数多くの大事件があった1573年の出来事を、その激動ぶりを視聴者にも体感させるかのように、わずか一話に全部盛り込んだ構成に。秀長とは直接関係ないために、サラッと流されていった事件の数々について、もう少し詳しい背景を探ってみよう。
■ 室町幕府、終了のお知らせ…第17回あらすじ
織田信長(小栗旬)は、武田信玄(高嶋政伸)を焚き付けて自分と戦わせようとした足利義昭(尾上右近)を抑えこみ、京から追放。これにより、約250年の歴史を持つ室町幕府は滅亡した。
つづけて信長は、自分たちに対抗する大きな勢力だった浅井長政(中島歩)と朝倉義景(鶴見辰吾)の攻略を開始。しかし、義景はこの期に及んでも前線に立つことを嫌い、重臣・朝倉景鏡(池内万作)が総攻撃を提案しても、それを拒否する。

状況が不利との報告を受けた義景は引き上げを命じるが、朝倉軍に加わっていた斎藤龍興(濱田龍臣)は、これは竹中半兵衛(菅田将暉)が仕掛けた罠だと制止。しかし、義景は耳を貸さず、龍興の予想通り、退却の隙を突かれた朝倉は総崩れとなる。
本拠地の一乗谷まで逃げた義景は、織田にこの地を渡すぐらいなら自分の手で滅ぼすと景鏡に告げ、景鏡は大勢の命を助けるために、義景を殺害して信長に降伏した。
■ やらなくていいのに…家康、武田信玄に大敗
オープニングクレジットの数分間すらも削って、1573年1月の信玄の挙兵&三方ヶ原の戦い、4月の信玄の死、7月の足利義昭追放、8月の朝倉家滅亡、9月の浅井家滅亡まで、普通なら3週ぐらいに分けて描きたくなるビッグイベントの数々を、たった1話に凝縮した第17回。

ここまでの詰め込み具合は、おそらく大河ドラマ史の伝説になると思われるが、その狙いを渡邊良雄チーフ演出は「情け容赦なく次々と人が亡くなる戦国時代らしさも表現したかった」と振り返っている。
とはいえ、それぞれの事件がどんなんだったのか? というのは、最後の浅井長政の自死以外は「高速! ◯◯の戦い」と表現したくなるぐらいのスピードで描かれたので「一体なにが起こっていたの?」と翻弄された人は、結構いたのではないだろうか。
近年の戦国大河『麒麟がくる』(2020年)『どうする家康』(2023年)で予習済みの人は「あーはいはい、あれですね」という感じで補完できたと思うけれど、そうでもない人たちのために、それぞれの出来事を改めて語っていこう。

まず「甲斐の虎」と呼ばれた武田信玄の挙兵。信玄というと、割といろんな大名と結んだ盟約を反故にしがちというイメージが個人的にはあるのだけど、今回の戦も、織田信長と結んだ「甲尾同盟」を破棄して起こしたものだった。
ドラマでは足利義昭みずからが信玄を口説いたことで、信玄が対決を決意したという風になっていたが、実際は「日本三大山城」として有名な岩村城を信長が攻めたために、いざこざが起こったことが発端だったというので、これに関しては「どっちもどっち」という感じだった。

そして、もともと武田とは緊張関係にあった徳川家康(松下洸平)は「三方ヶ原の戦い」で武田軍と激突し、大敗を喫している。
このとき武田軍が家康の領地を素通りしようとしたために、逆に家康が「なめとんのか!」と腹を立てて城を飛び出した結果、やらなくてもいい戦で負けた・・・みたいな話になってるが、プライドをこじらせてる感のある松下版家康ならやってしまいそうだ(笑)。ちなみに『どうする家康』では、武田軍の進路が正室・瀬名のいる岡崎に向かったため、やむなく兵を動かしたという解釈になっていた。
■ あっさり負けた?意外にも善戦、足利義昭

そして、ドラマでは、あっさりと信長に負けた形になっていた足利義昭だけど、実は三方ヶ原の戦い~武田軍の撤退までは、信長に対してかなり善戦していた。畿内周辺の武将たちが大勢味方についたので、一時は信長の方から和睦を持ちかけるほど優勢だったが、調子に乗った(推測)義昭は和睦案をことごとく拒否。
その結果信長がついにキレて、二城御所周辺に火をかける「上京焼き討ち」を起こし、一般人も多数巻き添えになったのだけど、意外とこの辺りのことがドラマで語られる例は少ない(というか、ない?)。

この容赦ない攻撃にビビった義昭は信長と講和するが、武田軍が甲斐に引き返すと、完全に事態は逆転。義昭は宇治の槇島城で最後の戦いに挑むが、7万人もの織田の軍勢になすすべもなく降伏した・・・というのがドラマで描かれたところだ。
この義昭の挙兵から追放までは、わずか半年足らず。そして周辺の武将たちにとっては、どちらに着くかで明暗がクッキリと分かれる事態となった。なかでも幕臣だった細川藤孝(亀田佳明)、よくこの状況で信長方に寝返る判断ができたものだと、時流の読みの確かさにほとほと感心する。

槇島城での義昭の敗北によって、室町幕府は終えんを迎えたとされる。とはいえ、足利義昭の征夷大将軍職が朝廷に返上されたわけではないので、実はその権力は保持されたままだった。
義昭はその力を活かして、各地の反信長勢力を遠隔操作的に動かして、信長の天下一統をしぶとく阻んでいくことになる。その暗躍がどこまで描かれるかはわからないけど、この変装大好きでフットワークが軽すぎる義昭なら、なかなかの逆襲を見せてくれそうな気配がする。
■ やる気があれば…引きこもり大名・朝倉義景

義昭の敗因として、信玄と並んで信長に敵対できる最有力大名だった朝倉義景(鶴見辰吾)が動かなかった事実は無視できないだろう。信玄が信長と対決するために上京する際、義景にも蜂起を求めたけれど、義景はこれを黙殺し、信玄に怒りの手紙を送られている。
さらにそのあと挙兵した義昭に上洛を命じられても、やっぱり動こうとはしなかった。このどちらかで義景が動いていたら、信長が滅ぼされた可能性は結構あったのではないかと思う。
思えば義景の庇護を受けた義昭が、将軍職を望んで上京を求めても、やはり無視し続けて、結局手柄を信長に取られてしまった。義景にもうちょっとやる気があれば、信長に代わって天下を取れる可能性も高かったのに、慎重にもほどがある。

『豊臣兄弟!』ではその理由として、義景が戦を嫌い、本拠地の一乗谷すら平穏であればいいという、行き過ぎた平和主義ゆえにこうなった・・・という結末にしていた。
ただ、実際に朝倉家が治めた一乗谷城を見ると、義景が「ここさえ平和であればいい」ってなるのもやむを得ないのではと思えてくる。
近年、発掘調査が進んで多くの部分が復元された一乗谷城とその城下町は、都市整備も進んだ非常に暮らしやすそうな場所で、京に近いこともあって、文化人を招いたイベントもしょっちゅう行われていたという。険しい山間にポッと現れる、争いだらけの現世から隔絶された桃源郷のような場所を堅実に治める方が、義景には合っていたのだろう。
■ 主君の首を売り渡した、朝倉景鏡の末路

実際に、義景が領土の外まで出向いた戦は、割と名前を知られる戦国武将にしては非常に少ない。平和な時代であれば、最高の住環境を作ることに力を注いだ義景は名君になれたかもしれない。
戦国時代では、周囲の武将たちと国盗りゲームを繰り広げなければならず、そのためには能動的に国外に出る必要があった戦国武将には、本当に向いてない人物だったように思えてくる。単なる井の中の蛙ではなく、本人も自覚するように「生まれるべき世を間違えた」人だったのだろう。
そして、義景の首を売り渡すような感じで、信長に降伏した朝倉景鏡だけど、その翌年には一向一揆に巻き込まれて討死し、子どもたちまでも処刑され、さらには朝倉氏の興亡を記した軍記物では、すべての元凶となる極悪人扱いされる結果となった。
『豊臣兄弟!』ではそこまでの悪人には描かれず、むしろさらなる大惨事を食い止めた影の英雄扱いになったのが新鮮だったけど、もしかしたら豊かな暮らしを作り上げた義景を慕う一乗谷の人々が「裏切り者」を許さず、悪人に仕立て上げたのかもしれない。
◇
大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。5月10日放送の第18回「羽柴兄弟!」では、ついに藤吉郎が城持ち大名となり「羽柴」姓を名乗ることに。そして新たな家臣を募るなかで、藤堂高虎(佳久創)が再登場、石田三成(松本怜生)が初登場を果たす。
文/吉永美和子
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