織田信長、闇堕ちへ…義弟の裏切りで“弟コンプレックス”どん底【豊臣兄弟】

3時間前

『豊臣兄弟!』第13回より。相撲をとる浅井長政(中島歩)と織田信長(小栗旬)(C)NHK

(写真8枚)

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

4月5日放送の第13回「疑惑の花嫁」では、織田信長が朝倉攻めをはじめたところで、義弟・浅井長政の裏切りが発覚。信長にとっては、現在の戦況が圧倒的に不利になると同時に、過去のトラウマまでえぐられるという過酷な展開となった。


■ 「朝倉討伐」を決めた織田信長…第13回あらすじ

織田信長(小栗旬)は、将軍・足利義昭(尾上右近)に対して五箇条の要望書を送るなど、政務への口出しが激しくなり、義昭は次第に不満を募らせる。

一方、信長は、上洛の気配を見せない朝倉義景(鶴見辰吾)の討伐を決めたことを、義弟・浅井長政(中島歩)に相談。長政は、朝倉とのつながりが強い浅井の家臣たちを阻止することを信長に約束し、信長も朝倉の人質となっている、長政の嫡子・万福丸(近江晃成)の救出を誓った。

『豊臣兄弟!』第13回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第13回より。出陣に備える藤吉郎(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)(C)NHK

近江に帰った長政は、織田の朝倉攻めを静観することを家臣たちに命じるが、そこに父・久政(榎木孝明)と朝倉の使者・朝倉景鏡(池内万作)が登場。長政が信長の妹・市(宮﨑あおい)のために腑抜けになったと責め、朝倉に味方しないのであれば、元凶である市を始末すると言い出す。

そして翌日の総攻撃に備えて金ヶ崎にいた信長や木下藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)や小一郎の元に、長政の裏切りが伝えられた・・・。

■ なぜ、朝倉氏に執着?地政学的な理由が…

この『豊臣兄弟!』に出てきた織田信長の戦を振り返ると、尾張国を統一するための戦いと、隣国・美濃を取るための戦い。そして足利義昭を上京させるために、近江や畿内で繰り広げた戦い(ただしドラマでは端折られた)がある。

ここまでは戦う理由がハッキリしていたけど、この越前の朝倉氏との戦に関してはちょっと動機が分かりづらいのと、あと浅井氏がなんであんなに朝倉の顔色をうかがうの? 長政かわいそう! ってなっただろう。その辺りの状況を整理していこう。

『豊臣兄弟!』第13回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第13回より。朝倉景鏡(写真右、池内万作)に言い返す浅井長政(写真左、中島歩)(C)NHK

朝倉義景が信長の攻撃対象になったのは、このコラムでも以前解説したけれど、信長が義昭の名を借りて「京都まで挨拶に来ないと敵だと見なすよ?」という書状を送ったのを無視しつづけたことだ。

ほかにも上京してない大名が多いのに、なんで朝倉だけそんなに敵視されるの? と考えそうだけど、このときの朝倉氏の領土の一部が、信長のいる岐阜と京都のルートの間に割り込むような形となっていたので、とりあえず真っ先に叩いておきたい相手だったわけだ。領地が京都に近かったのが仇になった。

『豊臣兄弟!』第10回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第10回より。越前の戦国大名・朝倉義景(鶴見辰吾)(C)NHK

あと、朝倉氏には、現将軍に簡単に頭を下げられない事情があった。義昭の兄・義輝と関係が深かった縁もあり、兄の暗殺後に畿内から逃亡した義昭を匿(かくま)いはしたけれど、兄を殺した三好氏を京都から追放して、将軍になりたいという願いは黙殺しつづけた。

加賀一向一揆(『どうする家康』を観た人なら、一向一揆の手ごわさはご存知のはず)などで領内が不安定だったことと、義景の嫡男が幼くして亡くなったりしたことで、割と京都まで戦をしに行くどころじゃなかったのだ。

■ 絶対に頭を下げない朝倉氏…背景に“2つの屈辱”

そこで当時、同じように越前でくすぶっていた明智光秀(要潤)の仲介で、織田信長が手を貸すという話がつき、義昭は越前からとっとと退去して信長の元に身を寄せた。これが義景の名誉を傷つけたため、意地でも頭を下げられないということになったわけだ。

『豊臣兄弟!』第13回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第13回より。朝倉討伐の前に、二条御所で織田信長(写真左、小栗旬)に茶を振る舞う15代将軍・足利義昭(写真右、尾上右近)(C)NHK

そっちが動こうとしなかったのに、なんか大人げないよなあ・・・とは思うけど、やはり朝倉氏にとっては「逃がした魚は大きい」というくやしさがあったのは理解できる。

さらに朝倉氏が腹を立てたのは、50年近く同盟関係にあった隣国の浅井氏が、新興勢力の織田氏とも同盟を結んでしまったこと。

幼い頃から仲良くしていた友達が、自分が気に食わないと思っている新入りと、いつの間にか自分より親密になっていた・・・と考えたら、その苛立ちがスッと入ってくるのではないだろうか。この二重の理由で、義景は決して信長と義昭の命令には従わなかったわけだ。

『豊臣兄弟!』第11回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第10回より。息子・浅井長政の祝言に出席した浅井久政(榎木孝明)(C)NHK

しかし、浅井長政が朝倉方に付くことになり、朝倉は一気に有利な立場となった。この謀反の理由は、まさに「諸説あります」状態で決定打は出ていない。

『どうする家康』(2023年)では、信長に正義を感じなくなったと、長政から積極的にたもとを分かっていたけど、この『豊臣兄弟!』では、嫡男の万福丸と、自分を犠牲にしてでも守りたい愛妻・市を実質的な人質にされたための、苦渋の決断という真逆の形となった。

■ 2度目の裏切り…“弟コンプレックス”どん底へ

『豊臣兄弟!』第12回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第12回より。浅井長政(写真右、中島歩)の肩に手を置く織田信長(写真左、小栗旬)(C)NHK

信長への信頼が崩れたわけではなく、外的要因によってしぶしぶ裏切った・・・というだけで話を進めてくれたら良かったのだけど、脚本・八津弘幸に人の心がない(褒)のは、その前に信長の弟コンプレックスを一度昇華させてから、どん底に落とし込むというやり口だ。

かつては仲良くしていたのに、自分の手で殺した弟・信勝(中沢元紀)の代わりに現れた義理の弟。もう二度と味わえないと思っていた「弟と一緒にはしゃぐ」という体験を味わえたことは、信長にとって心の傷を癒やされる時間となっただろう。

『豊臣兄弟!』第13回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第13回より。織田信長(写真左、小栗旬)と朝倉討伐について話す浅井長政(写真右、中島歩)(C)NHK

だからこそ長政に裏切られた絶望は、喜びが大きくて強かった分、地獄に突き落とされたような心の深手となるはず。

信長はここから「第六天魔王」と呼ばれるのも致し方なしと思えるほど、残虐な行為をどんどん重ねていくわけだけど、「弟」の二度の裏切りから生まれた怒りと復讐心が、その火種となるのだろうか・・・。『鎌倉殿の13人』でも、北条義時の暗黒の心を見事に表現しきった小栗だけに、今後の信長像はすさまじいものになりそうだ。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。4月12日放送の第14回「絶体絶命!」では、浅井長政の挙兵でピンチに陥った信長を無事に京都まで退却させるために、秀吉&秀長がしんがりとして奮闘する「金ヶ崎の戦い」が描かれる。

文/吉永美和子


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