意外な「万博レガシー」は兵庫でトラックに乗って…人気「ルクセンブルク館」はとことん循環

3時間前

「Doki Doki–ときめくルクセンブルク」がテーマの「ルクセンブルクパビリオン」は大きな人気を集めた(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

(写真15枚)

2025年4月13日に『大阪・関西万博』が開幕してからまもなく1年。閉幕してから半年が経とうとしている。夢洲では、各パビリオンの解体が進むなか、資材、家具や設備などの「万博レガシー」の活用が模索され、盛り上がった万博の記憶を残す動きが広がっている。中には意外な活用が決まったレガシーも。

「ルクセンブルクパビリオン」は大きな人気を集めた「万博まで、国名しか知らなかった」という来場者も(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
「ルクセンブルクパビリオン」の展示は3エリア。ミラーボールのような装置でサイバーな空間も(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

そんな「万博レガシー」の活用が注目されるパビリオンのひとつが、「ルクセンブルク・パビリオン」だ。同パビリオンは、会期中に延べ37万8千人が入場。街並みや生活、最先端産業・技術を紹介する「ドキドキ」な体験を3エリアで提供した。

「ルクセンブルクパビリオン」は大きな人気を集めた「万博まで、国名しか知らなかった」という来場者も(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
ハンモックのようなネットで映像を楽しむ来館者たち「万博まで、国名しか知らなかった」という人もルクセンブルクの文化に触れる機会に(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

特に人気だったのは、ハンモックのようなネットに座ったり寝転んだりして、同国の名所や街並みの映像を体感するスペース。映像がネットの下にも広がる浮遊感もたまらないと評判に。そんな展示を体験したいと、会期後半は常に3〜4時間程度の行列がでる人気のパビリオンで「狙っていたけど、入れなかった」という人も。

伝統的な「9ピンボウリング(ケーレブン)」も楽しめた。このボウリングレーンは三重県鈴鹿市の施設「スズカト 三重県鈴鹿青少年センター」へ移設される予定(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
パビリオンは、キッズからも人気。取材時も万博大好きファミリーがワイワイとボーリングを応援しあって楽しんでいた(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

◆ 万博開催中のパビリオンは資材の仮置き場…?開幕時からの再利用計画進む

同パビリオンの建物は、最初からリユースを前提とした設計がおこなわれていた。「Doki Doki–ときめくルクセンブルク」と並ぶ、もうひとつのテーマ「循環型経済(サーキュラー・バイ・デザイン)」を実現するため、万博開催中のパビリオンは資材の仮置き場と考えてデザイン。そのため、開幕当初から膜屋根、基礎のコンクリートブロック、外壁のグレイのコンクリート型枠合板ボードなどは、日本での再利用先が決まっていた。

(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
「循環型経済(サーキュラー・バイ・デザイン)」の考え方。『大阪・関西万博』で「サステナビリティ賞( #BIEアワード)」を受賞している(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

「ルクセンブルク・パビリオン」のリユース可能にデザインされた、メインアイテムを紹介する。

【基礎コンクリートブロック】パビリオン解体後に取り外し・洗浄ができる「基礎コンクリートブロック」は、冒険テーマパーク「ネスタリゾート神戸」(兵庫県三木市)が、商業施設などの空間デザイン・設計・施工を手がける「船場」(東京都港区)と連携し、全量(220個)を再利用。5月末お披露目予定。

(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
大屋根リングからみた「ルクセンブルク・パビリオン」その後、低木30本が平田運輸に、植栽15本が内藤ハウス、11本が京都府南丹市に(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

【膜屋根】「大屋根リング」から見ても印象的な屋根の部分の幕は、ボストンバッグ、ショルダーバッグなどに、「モンドデザイン」(東京都港区)がアップサイクル。万博会期中から予約受付し、大人気に。

(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)
膜屋根は、軽くてしっかりとした素材なので、スタイリッシュなバッグに。財布、メガネケースなども展開(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

【軽量鉄骨】ボルトにより解体可能な「軽量鉄骨」の一部を、大阪府交野市の子育て支援施設の建築に利用。2028年完成予定。

【外壁に使用していたコンクリート型枠合板ボード】解体して再利用できるように設置していた「合板ボード」は「神工建設」(京都府京田辺市)がコンクリート基礎の型枠として利用。

「ルクセンブルク・パビリオン」
「ルクセンブルク・パビリオン」外壁は、コンクリート型枠に(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

その他、当初からリユース可能にデザインされていたメインアイテム以外の建築部材や設備、家具、植栽も、さまざまな場所での利用が続々と決まり、引き渡しが進められている。

◆ 縁あって廃棄直前の植栽などを引き受けた、兵庫県加西市の「平田運輸」の場合

今回、パビリオンの植栽のうち低木30本と、膜屋根の雨水を受けていたろ過用の石などを譲り受けた「平田運輸」(兵庫県加西市)の代表取締役・平田優宇氏に話を聞いた。

会場で植栽を手にする「平田運輸」の平田社長。「心ある未来を創る」を掲げ、環境省主催の「令和7年度 気候変動アクション環境大臣表彰」を受けるなど、環境に配慮した経営を実践する(写真提供:平田運輸)

同社は、兵庫県加西市に本社を置き、 岡山県・岐阜県にエリア展開している運送会社。2026年2月に敷地面積約2,457坪の地域協創型物流拠点「KASAI SUSTAINABLE BASE」を完成させ、その建物の敷地内にルクセンブルクの植栽と石を配置。低木は大屋根リングからパビリオンに向かって左手にあったもので、廃棄される直前(2025年11月)に引き受けた。

平田社長は、「ルクセンブルク・パビリオンは、閉幕後の再利用を最初から意識されていたというお話を聞いて、物として植栽をいただくということではなく、『そういったスピリッツと一緒に、この子たち(植栽)を持ち帰らせてもらいます』と、館長に申し上げました」と、引き受けを決めたときの想いを明かした。

膜屋根の雨水を受けていた、ろ過用の石。パビリオンのレストランゾーンに存在した(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

ルクセンブルクの担当者も、「パビリオンの部材や備品をお受け入れいただく際には、その物品に残存する価値を見出し、再利用することで価値を引き継いでいただくことを前提としておりました。平田運輸さまに関しましては、『サステナブルな物流拠点の開設にあたり万博のレガシーを引き継ぎたい』との思いをお持ちであることを丁寧にご説明いただき、ルクセンブルクパビリオンの目指す方向性とも一致していましたので、安心して植栽・資材の譲渡をさせていただきました」と話す。

ビオトープ、遊歩道などを備える物流拠点に、「ルクセンブルク・パビリオン」から、譲り受けた植栽を配置。祝花を辞退し、その代わりに植栽に充てるクラウドファンディングも実施した(写真提供:平田運輸)

昨年秋には、紅葉しはじめた植栽の写真を「平田運輸」からルクセンブルク側に送ったところ、とても喜ばれたそう。その後、一度は元気がなくなったように見えた植栽も、あたたかくなり、現在は新芽が芽吹いてきている。平田社長は水を切らさないように毎日自ら大切に水やりをしているそう。「ルクセンブルクパビリオンの想いを受け継ぐシンボルとして、これからも大切に育てていく」と決意を語った。

また、今後はこの物流拠点を学生たちの活動に貸し出すことや、一般向け見学の機会なども、計画が進んでいると言い、今後公式サイトやSNSで情報を発信していく予定。

平田社長は毎日自ら水やりも行い、万博レガシーを加西市で育み続けている(写真提供:平田運輸)

◆ 確かにぴったり!暗幕は運輸会社ならではの活用予定明かす

さらに平田社長は、行き場がなくなっていた、パビリオン内で使用されていた「暗幕」や「ボード」も引き受けた。「暗幕」は、これからトラックの運転席の後ろにある仮眠室のカーテンとして加工して使用する予定だ。「この幕は外部からの視線と光を遮ることができる生地で、トラックのカーテンとしてとても相性が良い」と喜ぶ。

「ルクセンブルク・パビリオン」の館内の様子(大阪・関西万博 2025年10月12日撮影)

そうした、「ルクセンブルク・パビリオン」から引き継いだ「万博レガシー」について同社社員は、どのように捉えているのだろうか。「万博には行けなかった、という社員も多いのですが、『万博会場にあったものが、職場にあるなんて、すごい!』と周囲の友人や家族に言われ、その価値にあらためて気が付き、誇りに思ってくれているようです」と笑顔で語った。

また、「ルクセンブルク・パビリオン」館長は、「これは特別なプロジェクトであり、ルクセンブルクパビリオンの植栽のいのちが、この先も続いていくことをとても嬉しく思います。この植物が万博のレガシーとして残り、万博での素晴らしい思い出を振り返るきっかけとなってくれることを願っています」とメッセージを寄せた。

4月8日の植栽の様子。温かい季節となり、草抜きなどの世話をしっかりと。この植栽を含め、今後は子どもや、一般の人たちも施設を見学できる機会をつくる予定(写真提供:平田運輸)

なお、ルクセンブルクの公式サイトでは、「『解体から再生へ』―ルクセンブルクパビリオンが挑んだ循環の物語」と題して、再利用先についての詳細を今後、連載形式で日本に向けて発信していく予定。ルクセンブルクと日本に生まれた縁は、これからも続いていく。

取材・文・写真(一部)/太田浩子

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