ちょっと怪しくて愛おしい…ディープな店が軒を連ねた神戸元町高架下「モトコー」ひっそり最終日

2時間前

元町駅西口を出てすぐ、燦然と輝く「MOTOKOH TOWN」の文字(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

(写真29枚)

JR元町駅の西口から神戸駅までの高架下約1.2㎞に、個性的な店舗がひしめき合っていた「元町高架通商店街」(通称:モトコー)。その最後のエリア、旧1番街、2番街のシャッターが3月31日に閉められ、戦後の闇市をルーツとする神戸の名物スポットが、ついにその歴史に幕を下ろした。

モトコー
モトコーの完全撤収は3月31日。最後の夜が静かに更けていく(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

4月以降、高架下の7つの区画のうち、元町駅に最も近いエリア・モトコー1・2街区(旧1番街、2番街)がいよいよ解体作業に入る。それにあわせ再開発に伴って営業が終了した各店舗スペースの閉じられたシャッターを再び開けようと、アートプロジェクト『MOTOKOLOGY』が、2025年7月にスタート。2月28日からの最後の約1ヶ月間は『モトコー大前夜祭』と題して、さまざまな展示やイベントを開催してきた。

イカリヤ、三起商会など、以前の看板もそのままに、。人や活動が自然に交わる場を育むことを目的としたアートプロジェクト『MOTOKOLOGY』の装飾が(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

最後の夜は、この『MOTOKOLOGY』の関係者やイベント参加者のほか、熱心に写真を撮る人、メッセージを書く人らが、偶然通りがかりこの日が最終日と知り驚く人なども巻き込みながら、それぞれの時間を過ごしていた。

モトコー最終日
旧2番街入口にはステンドグラスのようなデザイン(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

◆ 「モトコー」とは、どんな場所だったのか?

モトコー
旧1番街、2番街の間の通路(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

戦後の闇市から始まったとされるモトコーは、当時めずらしかった輸入品などをはじめ、ファッション、雑貨、中古レコード、古書、町中華、酒場、洋装店など、多種多様な店舗が、細い通路の両側に並んだ路地裏のような場所。

モトコー最終日
モトコー最終日の「レンセイ製菓」。かつては焼き菓子やケーキを販売し、地元民で賑わっていた(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

はみ出さんばかりに積み上げられた商品の中から掘り出し物を探すようなディープでカオスな雰囲気の店舗も多く、長年お気に入りの店に通うファンも多かった。

モトコー旧1番街のMAP(2026年3月31日「元町高架通商店街」)
「毎日が掘出市でーす!」(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

しかし、防火・防犯の問題解決、および高架の耐震補強のために2010年代後半ごろから、店舗の立ち退きが進められ、多くの店舗が近隣に移転したり、営業を終了。以降、ほとんどの店舗のシャッターが閉じられたままとなっていた。

今回閉鎖となる旧1番街、2番街以外は、旧3番街などJR西日本が新たに整備し、営業する店舗の並ぶ場所もあれば、工事中に伴い閉鎖中のエリアも混在する状況だった(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

◆ それぞれのやり方でモトコーとお別れ…『元町高架下をひっそり歩く会』

モトコー最終日
モトコー最終日『3/31元町高架下をひっそり歩く会』の様子(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

最後の夜、モトコーを愛する有志らが企画したイベントに、筆者も参加させてもらった。最後の夜に高架下をひっそりと歩いて、味わうだけの『元町高架下をひっそり歩く会』とは…?

イベント発案者がゆるく趣旨などを説明『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

壁や隙間に向け、リコーダー、ベル、マラカスなど、さまざまな楽器を鳴らしながら、1番街から2番街までゆっくりと時間をかけて歩く。

『3/31元町高架下をひっそり歩く会』それぞれのやり方でモトコーとお別れ(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

生活道路として通路を足早に歩く人たちに少し驚かれながら、いろいろな想いがあったであろうこの場所について考えながら、モトコーを一緒に歩いた。

モトコー最終日
リコーダーを吹きながらその姿をしっかり目に焼き付けている参加者たち『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

参加者には、昔からしょっちゅうモトコーに通いつづけてきた、というモトコーのベテランもいれば、この『MOTOKOLOGY』をきっかけに、通うようになったと言う人も。さらにたまたまやってたから参加したと言う人まで、参加者のバックボーンは異なるが、モトコーがつないだ縁で、最後のひとときを、ともにゆるーく過ごすことに。

モトコー最終日
隙間にもなにかがいる!?『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

1番街からゆっくりと移動して2番街へ。そして歩き終わると、モトコーに通い続け、思い入れがある参加者からは「なんか泣けてくる…」というつぶやきも。

モトコー最終日
モトコー最終日、ちりんちりんという音を響かせ、参加者たちも「鎮魂という意味があったのかも」『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

その流れで、参加者たちは、信号をわたってすぐの「花隈公園」へ。咲き始めた桜と、提灯の灯りの下で日本酒を飲み、モトコーを見下ろしながらプチお花見をして解散に。

花隈公園からモトコー1番街2番街を見下ろす
花隈公園から「モトコー」旧2番街を見下ろす『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「花隈公園」)

歩く会の発案者のひとり山本さんは、「モトコーはかつて闇市だったり、いろんなの思いがあった場所。最後にひっそり歩きたいなと思って。でもひとりだとちょっと怖いし、せっかくならみんなで歩きたいと相談して、急遽ゲリラ的にイベント開催が決まりました。意外にも10人以上が参加してくれて、一緒にモトコーでの新たな思い出が作れて嬉しい」と話す。

プチ花見をしながら、モトコートークに花を咲かせた『3/31元町高架下をひっそり歩く会』(2026年3月31日「花隈公園」)
モトコー最後の夜『3/31元町高架下をひっそり歩く会』の参加者たち(2026年3月31日「花隈公園」)

「いよいよ最後だから、壁やシャッターをたくさんさわりたくなって。埃に今日の思いをひっそり書きました。きっと誰にも見つからないと思います」と笑っていた。

モトコー最終日
モトコーを見下ろす位置から写真を熱心に撮るのは、モトコーに通い写真を撮り続けてきたアマチュア写真家の西川さん。「最後にいい写真がとれた」と喜んでいた(2026年3月31日「花隈公園」)

◆ モトコーがモトコーらしく、最後に雑多な一花咲かせる『モトコー大前夜祭』

『闇コベ◇カツ』は田岡さんら「CAP」(芸術と計画会議)の有志によって実施されているアート活動。店舗の壁は期間中、誰でもアートに参加できる大人の部活動を展開(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

上記で紹介した『3/31元町高架下をひっそり歩く会』は、アートプロジェクト『MOTOKOLOGY』の一環。『MOTOKOLOGY』は、約20団体にスぺ―スを貸し、自由に使ってもらうスタイルをメインにしつつ、6人の現代アーティストには、新たにモトコー各所に作品の制作を依頼。かつて店舗だった各スペースや、通路や壁、シャッターを活かしたアート作品の展示などが行われた。

モトコー最終日
モトコー最終日にも駆け込みでアート作品を展示しに来たアーティストの姿も(2026年3月31日「元町高架通商店街」)
モトコー
「新しいお店」京都を拠点に活動するアーティストユニット「副産物産店」は、モトコーの中で最後の「お店」を立ち上げた(2026年3月31日「元町高架通商店街」)
無人販売所という形でなんらかのかけらが売られていた(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

さらに、最後の週末となった3月28日と29日には、合計14件のイベントが立ち上がった。物販やアート展示、ライブなどさまざまなイベントが同時開催され、多くの人が集まった。さながら、かつてのモトコーの活気がよみがえったかのような、盛り上がりをみせていた。

モトコー最終日
「レンセイ製菓」跡地では、アーティストチーム「contact Gonzo」による、都市の変容に介入する展示。シャッター越しに鑑賞者は穴を覗くことで作品を鑑賞できる(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

そして最終日の31日夜には、神戸の若手建築家たちが、神戸のこれからなどをテーマにしたトークイベント「KobeArchitectural Study」を開催され、こちらも遅くまで盛り上がった。

「KobeArchitectural Study」は元「ちりん」のスペースで。21時ごろになると店内はぎゅうぎゅうの大入りの状態に(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

◆ 全てを受け入れるおおらかな神戸らしさが、モトコーにはあった

『MOTOKOLOGY』のプロデューサー・田村圭介さん、20の参加団体のひとつ「CAP」の田岡和也さん。旧2番街のこの店舗は、壁にも天井にも田岡さんや参加者たちのドローイングによって最終的にかなりぎやかに(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

『MOTOKOLOGY』のプロデューサー・田村圭介さんは、「この取り組みは、このモトコーの建物そのものを残そうと思ってやっているのではなくて、モトコーで生まれたものから、記憶の中で残すべきものを探ろうというテーマで活動しています」と話す。今後は『MOTOKOLOGY』であったいろいろな出来事など、モトコーでの日々を、書籍としてしっかり記録に残す予定だ。

(2026年3月31日「元町高架通商店街」 )
壁に描かれた大型のアート作品は、かっこよく写真が撮れるフォトスポットでもある(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

独特な空気感と多様な文化と歴史を持ったモトコーを惜しむ声も非常に多い。この1年は『MOTOKOLOGY』のさまざまな取り組みにより、モトコーをあまり知らなかった世代の人の記憶にも、モトコーが残り、モトコーらしさ、ひいては神戸らしさを考える機会をつくったように思う。

モトコー旧2番街の壁に描かれた「日時計」は山田悠による『Sun of the City (Kobe)』(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

4月1日からは、全てのシャッターが下ろされ、電気の供給などもなくなるそう。しばらくは通路を歩くことができるが、その後は、閉鎖され再整備に向けた作業が本格的に始まる。それまでは、外壁のアートなども見ることができるようなので、気になる人は今のうちにその姿を目に焼き付けてみては?

取材・文・写真(一部)/太田浩子  写真/Lmaga.jp編集部

JR西日本
昼のモトコー旧2番街。戦後の闇市を起点に、神戸の人たちの営みが続いてきたモトコーの文化と歴史は、形と場所を変えて受け継がれていく(2026年3月31日「元町高架通商店街」)

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