ちょっと怪しくて愛おしい…ディープな店が軒を連ねた神戸元町高架下「モトコー」ひっそり最終日

元町駅西口を出てすぐ、燦然と輝く「MOTOKOH TOWN」の文字(2026年3月31日「元町高架通商店街」)
JR元町駅の西口から神戸駅までの高架下約1.2㎞に、個性的な店舗がひしめき合っていた「元町高架通商店街」(通称:モトコー)。その最後のエリア、旧1番街、2番街のシャッターが3月31日に閉められ、戦後の闇市をルーツとする神戸の名物スポットが、ついにその歴史に幕を下ろした。

4月以降、高架下の7つの区画のうち、元町駅に最も近いエリア・モトコー1・2街区(旧1番街、2番街)がいよいよ解体作業に入る。それにあわせ再開発に伴って営業が終了した各店舗スペースの閉じられたシャッターを再び開けようと、アートプロジェクト『MOTOKOLOGY』が、2025年7月にスタート。2月28日からの最後の約1ヶ月間は『モトコー大前夜祭』と題して、さまざまな展示やイベントを開催してきた。

最後の夜は、この『MOTOKOLOGY』の関係者やイベント参加者のほか、熱心に写真を撮る人、メッセージを書く人らが、偶然通りがかりこの日が最終日と知り驚く人なども巻き込みながら、それぞれの時間を過ごしていた。

◆ 「モトコー」とは、どんな場所だったのか?

戦後の闇市から始まったとされるモトコーは、当時めずらしかった輸入品などをはじめ、ファッション、雑貨、中古レコード、古書、町中華、酒場、洋装店など、多種多様な店舗が、細い通路の両側に並んだ路地裏のような場所。

はみ出さんばかりに積み上げられた商品の中から掘り出し物を探すようなディープでカオスな雰囲気の店舗も多く、長年お気に入りの店に通うファンも多かった。


しかし、防火・防犯の問題解決、および高架の耐震補強のために2010年代後半ごろから、店舗の立ち退きが進められ、多くの店舗が近隣に移転したり、営業を終了。以降、ほとんどの店舗のシャッターが閉じられたままとなっていた。

◆ それぞれのやり方でモトコーとお別れ…『元町高架下をひっそり歩く会』

最後の夜、モトコーを愛する有志らが企画したイベントに、筆者も参加させてもらった。最後の夜に高架下をひっそりと歩いて、味わうだけの『元町高架下をひっそり歩く会』とは…?

壁や隙間に向け、リコーダー、ベル、マラカスなど、さまざまな楽器を鳴らしながら、1番街から2番街までゆっくりと時間をかけて歩く。

生活道路として通路を足早に歩く人たちに少し驚かれながら、いろいろな想いがあったであろうこの場所について考えながら、モトコーを一緒に歩いた。

参加者には、昔からしょっちゅうモトコーに通いつづけてきた、というモトコーのベテランもいれば、この『MOTOKOLOGY』をきっかけに、通うようになったと言う人も。さらにたまたまやってたから参加したと言う人まで、参加者のバックボーンは異なるが、モトコーがつないだ縁で、最後のひとときを、ともにゆるーく過ごすことに。

1番街からゆっくりと移動して2番街へ。そして歩き終わると、モトコーに通い続け、思い入れがある参加者からは「なんか泣けてくる…」というつぶやきも。

その流れで、参加者たちは、信号をわたってすぐの「花隈公園」へ。咲き始めた桜と、提灯の灯りの下で日本酒を飲み、モトコーを見下ろしながらプチお花見をして解散に。

歩く会の発案者のひとり山本さんは、「モトコーはかつて闇市だったり、いろんなの思いがあった場所。最後にひっそり歩きたいなと思って。でもひとりだとちょっと怖いし、せっかくならみんなで歩きたいと相談して、急遽ゲリラ的にイベント開催が決まりました。意外にも10人以上が参加してくれて、一緒にモトコーでの新たな思い出が作れて嬉しい」と話す。


「いよいよ最後だから、壁やシャッターをたくさんさわりたくなって。埃に今日の思いをひっそり書きました。きっと誰にも見つからないと思います」と笑っていた。

◆ モトコーがモトコーらしく、最後に雑多な一花咲かせる『モトコー大前夜祭』

上記で紹介した『3/31元町高架下をひっそり歩く会』は、アートプロジェクト『MOTOKOLOGY』の一環。『MOTOKOLOGY』は、約20団体にスぺ―スを貸し、自由に使ってもらうスタイルをメインにしつつ、6人の現代アーティストには、新たにモトコー各所に作品の制作を依頼。かつて店舗だった各スペースや、通路や壁、シャッターを活かしたアート作品の展示などが行われた。



さらに、最後の週末となった3月28日と29日には、合計14件のイベントが立ち上がった。物販やアート展示、ライブなどさまざまなイベントが同時開催され、多くの人が集まった。さながら、かつてのモトコーの活気がよみがえったかのような、盛り上がりをみせていた。

そして最終日の31日夜には、神戸の若手建築家たちが、神戸のこれからなどをテーマにしたトークイベント「KobeArchitectural Study」を開催され、こちらも遅くまで盛り上がった。

◆ 全てを受け入れるおおらかな神戸らしさが、モトコーにはあった

『MOTOKOLOGY』のプロデューサー・田村圭介さんは、「この取り組みは、このモトコーの建物そのものを残そうと思ってやっているのではなくて、モトコーで生まれたものから、記憶の中で残すべきものを探ろうというテーマで活動しています」と話す。今後は『MOTOKOLOGY』であったいろいろな出来事など、モトコーでの日々を、書籍としてしっかり記録に残す予定だ。

独特な空気感と多様な文化と歴史を持ったモトコーを惜しむ声も非常に多い。この1年は『MOTOKOLOGY』のさまざまな取り組みにより、モトコーをあまり知らなかった世代の人の記憶にも、モトコーが残り、モトコーらしさ、ひいては神戸らしさを考える機会をつくったように思う。

4月1日からは、全てのシャッターが下ろされ、電気の供給などもなくなるそう。しばらくは通路を歩くことができるが、その後は、閉鎖され再整備に向けた作業が本格的に始まる。それまでは、外壁のアートなども見ることができるようなので、気になる人は今のうちにその姿を目に焼き付けてみては?
取材・文・写真(一部)/太田浩子 写真/Lmaga.jp編集部

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