こんな出来事もあった!? 5月に閉館の「大阪松竹座」、危機も乗り越えた103年

4時間前

現在の「大阪松竹座」外観(C)松竹

(写真3枚)

2026年5月末で、103年の歴史に幕を閉じる「大阪松竹座」(大阪市中央区)。3月31日には今後の活用について大阪府市との協議に入ると発表されたが、まずは現在の歴史に一区切りが付く。

歌舞伎公演をはじめとする数多くの名作舞台や映画、アイドルのコンサートなども行われてきた長きにわたる劇場の歴史のなかでは、当時の熱狂ぶりが分かるエピソードや、今だから笑って話せるアクシデントなどが数多あった。

■ ハリウッドスター、見物人が多すぎて引き返す事態に

開場当時の「大阪松竹座」(提供:松竹)
開館当時の「大阪松竹座」

『奇傑ゾロ』などのヒット作を持ち、「ハリウッドのキング」とも言われた戦前の映画スター、ダグラス・フェアバンクス。彼が1929年に夫人連れでプロモーション来日をしたとき、大阪松竹座でも舞台挨拶が行われることになった。

大正時代といえば、今以上にハリウッドスターの素顔を見るのは困難な時代。そこに物見高い大阪人の気質も重なり、2500人以上の見物客が劇場周辺に集まって現場は大混乱。フェアバンクスは舞台に立つどころか、車から降りることすらできずに大阪を去るはめになった。

生フェアバンクスが見られなくて観客は暴徒化するかと思いきや、その場にいた人々に月内有効の観覧券を配布することで騒ぎを収めたそうだ。ちなみに3年後に喜劇王・チャップリンが来た時は、やはり道頓堀が人であふれたものの、無事に舞台挨拶は実現した。フェアバンクスの経験を活かして、警備や群衆整理を見直したのかもしれない。

■ 道頓堀の劇場の運命…タイガース優勝に翻弄された歴史

新築再開場時の「大阪松竹座」外観(提供:松竹)
新築再開場時の「大阪松竹座」外観

「大阪松竹座」が位置する道頓堀といえば、阪神タイガース優勝の際には人々が詰めかけるのが恒例。2003年に18年ぶりのリーグ優勝に王手をかけた試合が終了したときは、おりしも松本幸四郎(当時七代目市川染五郎)主演の「劇団☆新感線」の舞台『阿修羅城の瞳』の上演中だった。

終演頃には大勢の人が、道頓堀に面した劇場エントランスまで溜まり、ここからの退場は危険と判断。通常は関係者以外立ち入り禁止の楽屋口の方から、少しずつ退出するという異例の方法が取られた。ちなみに終演後の挨拶で、阪神の優勝報告とともにこの退出方法を伝えた幸四郎は大の巨人ファンなので、さぞ複雑な心境だっただろう。

さらに2005年のリーグ優勝時は、新作歌舞伎『夢の仲蔵千本桜』千穐楽の日(これにも松本幸四郎が出演!)。幸い芝居自体は、優勝が決まる試合開始の前に終了したが、舞台機構の搬出作業は優勝の騒ぎに巻き込まれ、翌日の明け方までずれ込んだという。阪神優勝は大阪松竹座のほとんどの職員には歓喜であると同時に、危機管理能力を試される試練でもあった。

■ 俳優たちに好評だった楽屋…アドバイザーはあの人間国宝

1990年代に、大阪松竹座が映画館から劇場へと生まれ変わるとき、楽屋部分の改装計画に関わったのが、なんと片岡仁左衛門(当時片岡孝夫)!  実は独学で設計を学んでいた仁左衛門は、自身のような幹部俳優用の個室ではなく、一人分の専有面積が狭いのに待機時間が長い名題下の俳優や、スタッフたちの部屋の方に窓を付けるよう指示。少しでも彼らの居心地が良くなるようにと、配慮してのことだった。

さらに劇場がほぼ完成した時点で、男子トイレの小便器が入口から丸見えとなっていたことに苦言を呈し、反対側の壁に入れ替えさせたとか。ちなみに大阪松竹座の楽屋は、利用経験のある俳優たちから「お風呂が素晴らしい」という話をよく聞いたが、入口に並べたスリッパが飛び散らないような扉に変えたのは、仁左衛門の意見が元になったそうだ。

■ SUPER EIGHT、音響トラブルでライブ中止も…その後に神対応

比較的機材が新しいこともあってか、大きなテクニカル面のトラブルはさほど多くはなかった大阪松竹座だが、それでもアクシデントはあった。2006年に「SUPER EIGHT」(当時関ジャニ∞)が夏の恒例にしていたライブ『Anoter’s ANOTHER』で、第二幕を迎えたところで音響トラブルが起こり、そのまま公演中止に。ファンは落胆しただろうが、退場時にはメンバー全員がロビーに並んで、一人ひとりに握手をしたというから、むしろ「ラッキー!」ととらえた人は多かったかもしれない。

また2018年、台風接近中に行われた「松竹新喜劇」の公演では、何度か瞬間的な停電が起こり、ついに舞台のエレベーターが停止。それでも公演は最後まで行われたが、風雨が強まったため、来場していた90人ほどの観客(芸能人も何人かいたそう)は、劇場ロビーに待機せざるを得なくなったという。公共交通機関の荒天時の計画運行が実施され、早めに公演中止を選択するケースが増えた今となっては、レアな出来事かもしれない。

大阪松竹座では今後、4月3日~26日に「御名残四月大歌舞伎」、5月2日~26日に「御名残五月大歌舞伎」を上演。片岡仁左衛門、中村歌六、中村鴈治郎、中村扇雀、片岡進之介、片岡孝太郎、松本幸四郎(4月のみ)、中村獅童(4月のみ)、片岡愛之助(5月のみ)などが出演する。両公演とも一等席2万6000円、二等席1万3000円、三等席7000円。チケットは現在発売中(一部完売・貸切の回あり)。

取材・文/吉永美和子

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