「口からも涙」前代未聞の慟哭シーン…髙石あかり、“トキを生きた”集大成【ばけばけ】

2026.3.27 08:15

『ばけばけ』第125回より。「ママさん、泣かないで」と言っているかのように、トキ(髙石あかり)の手に1匹の蚊がとまる(C)NHK

(写真4枚)

連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)が最終回を迎えた。

「パパさんの最後、台無しにしてしまったけん」──。トキ(髙石あかり)は、ヘブン(トミー・バストウ)が世を去る間際、自分が彼の作家としての自由を奪ってしまったのではないかと自責の念にかられていた。

イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)の叱咤激励、母・フミ(池脇千鶴)の助言、そしてリテラリーアシスタントとなる丈(杉田雷麟)によるサポートもあり、回顧録を綴るべく、ヘブンとの思い出を語りだしたトキだったが、出てくるのは後悔と懺悔の言葉ばかり。

■「“フロッグ”コート」の思い出とフミの言葉が、トキを突き動かす

追憶のなかでトキは、「“フロッグ”コート」の思い出を語った。帝大に和服で通いたがっていたヘブンに、トキは「西洋人らしいほうがよい」と、洋装と「“フロッグ”コート」を勧めた。

はじめのうちは「シブシブ」だったヘブンだが、いつの日からか嫌がらずに、笑いながら着るようになった。これをトキは、「縛りつけようとする私に愛想が尽きて、笑っちょったんです」と回顧する。すると、聞き書きをしていた丈が思わず吹き出す。

フロックコートを「“フロッグ”(蛙)コート」と言うトキが愛おしくて、ヘブンは笑っていたのだ。そう丈は言う。そしてフミが、トキに語りかける。

「こげな話がええんだない? ヘブンさんとふたり、こげな夫婦だっただない。他愛もない、ほんに他愛もない、スバラシな毎日だっただない」。

するとトキの脳裏に、ヘブンと過ごした何気ない日常の記憶が鮮明に蘇る。慟哭するトキの手元に、一匹の蚊がとまる。「生まれ変わったら蚊になりたい」と言っていたヘブンが、まるで「ママさん、泣かないで」と言いにきたかのように。

そうしてトキは、ヘブンとの「他愛もない、スバラシな毎日」を語り出し、やがてそれが『思ひ出の記』というタイトルの書籍として出版され、物語は幕を下ろした。

『ばけばけ』第125回より。(C)NHK
『ばけばけ』第125回より。「これが、私、トキの話でございます」。『ばけばけ』は、トキがヘブンに心で語りかけた「お話」だった(C)NHK

■「蛙コート」はオリジナルエピソード

ところで、トキのモデルとなった小泉セツさんが記した『思ひ出の記』のなかで、フロックコートについて書かれた箇所を探してみると、

《(ヘルンは)フロックコートなど大嫌いでした》

《フロックコートは『なんぼ野蛮の物』と申しました》

など、ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンが大層嫌っていたこと、そしてセツさんが着ることをうながしたことは記されている。しかし、セツさんが「フロッグ」と聞き間違えたという記述はない。「“フロッグ”コート」は『ばけばけ』のオリジナルエピソードだ。

制作統括の橋爪國臣さんに、最終回に「“フロッグ”コート」と「蚊」のエピソードを持ってきた意図を聞いた。

■「正しくは『フロックコート』ですよ」との意見が多数寄せられた

遡って第24週で、トキが出かけるヘブンにコートを着せながら『“フロッグ”コート』と言う“前フリ”があった。これについて橋爪さんは、「視聴者の皆さんから『間違ってます』とたくさんのお叱りとご意見をいただきました」と明かし、こう続ける。

「第24週でトキが言った『“フロッグ”コート』。特別際立たせることなく、さりげなく仕込んだつもりだったのですが、視聴者の皆さんはよく見て、よく聞いてくださっているのだなと感心しました。

最終回では、今までトキが『うらめしい』と思っていたことが逆転するようなエピソードを作りたいと思いました。説教臭くなく、何気ない日常のなかの出来事で、あとから考えれば『素敵だったな』と思える。

そんな『おかしみ』のあるエピソードはできないかと、脚本打ち合わせで話し合ったときに、ふじき(みつ彦)さんからこのアイデアが出たんです」

『ばけばけ』第125回より。(C)NHK
『ばけばけ』第125回より。「“フロッグ”コート」の思い出が「うらめしい」から「すばらしい」に「ばけ」た(C)NHK
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