企画会議なしでヒット連発…神戸老舗駅弁店・淡路屋おもしろSNS「中の人」の正体は?

20時間前

淡路屋本社で代表締役副社長・柳本雄基さんを直撃!

(写真9枚)

「ひっぱりだこ飯」で知られ、その容器に合う蓋だけも販売するなど、「癖の強い」商品を次々と生み出す駅弁店「淡路屋」(神戸市東灘区)。北新地の料亭からスタートした100年以上続く老舗らしかぬテンションの公式SNSでは、もはや商品売り込みより、おもしろ投稿が多く、ファンとの軽妙なやりとりを日々続けている。その「中の人」こと、同社の代表締役副社長・柳本雄基さんを直撃。ヒット商品の裏側や仕事術に迫った。

老舗ならでは!スクラップでアーカイブされている過去の掛け紙。JR福知山線「生瀬駅」で駅弁をはじめ、その当時は鮎寿司が名物だったのだろうか

■ クイズは超マニアック?会話が自然と生まれる「積極SNS運用」

「駅弁界の島耕作」
駅弁界の島耕作?代表締役副社長・柳本雄基さん。アイディアが最も湧くのは「シャワーしている時」。酒好きで昼だけでなく、夜の街でのマーケティング活動も欠かさない

数々のヒット商品を手がけてきた入社22年目の柳本さんは、営業や商品開発などを経て2021年から現職。「創業124年目の歴史ある会社ですが、何でもできる会社なんです」と笑顔を見せる。

10年以上前からTwitter(現在のX)の個人アカウントで投稿を始めたところ、その親しみやすさなどに惹かれたフォロワーが増え、今では同社の「公式扱い」となり、ファンとの架け橋になる重要なツールに。現在はもう1名の「中の人」とともに、「神戸駅弁 淡路屋」Xアカウントを切り盛りする。

もちろん新商品を紹介もするが、同社のファン以外でも注目したくなる楽しい仕掛けも。例えば、歴代の「ひっぱりだこ飯」壺容器がずらりと並んだ写真から、実物とは違う箇所をみつける「間違い探し」。各商品に関係した数字が使われているバーコードの「淡路屋クイズ」…といったマニアックな投稿も好評だ。

柳本さんは「ただ売ろうとするのではなく、こちらが楽しまないと、お客様に思いが届かない」と語り、積極的なコメント返しも楽しむ日々。例えば累計販売数が約8万個(1月末時点)の大ヒットとなり、再販が続く「EXPO2025 ミャクミャク ひっぱりだこ飯」の予約開始の際は、アンケート機能も活用した。「都合のよい時間帯を質問することで、お客様たちの生活スタイルが見えてくるんですよね」

『旅弁当 駅弁大会』で販売される「ミャクミャク ひっぱりだこ飯」(1980円)
「ミャクミャク ひっぱりだこ飯」(1980円)

また、本商品は「全然買えない!いうお叱りの声も多く寄せられ、正直ちょっと凹みました」と言うが、それをバネに1月27日の受注販売ではそれを挽回する圧倒的な販売数を確保し「本気」をみせ、SNSに「やっと買えました!」の喜びの声が多数UPされた。

「誕生日受け取りで予約注文した」という投稿には、「素敵なお誕生日になること祈ってます」と返信、「次は黒バージョン出して欲しいな」という投稿には「出したい 出したい 出したい」と今後の展開に期待を感じさせるのも上手い。こうして集まった声は社内の各スタッフにも随時共有し、しっかり活用している。

■ 「企画会議はやりません!」アイディアは随時、「キーワード」から商品化も

さらに同社では、「思いついた時にどんどん新作を」と、年間計画以外でも良いアイディアがあれば即商品化されることが多いそう。「幅広い年齢層の社員が同じ部屋にいるので、『ねえ、〇〇って知ってる?』とトレンドについて聞いたり、『もしこんな駅弁なら、いくらまでなら買う?』と話したり、すぐ気軽に会話ができる環境です」と、そのスピード感は、かしこまった企画会議がないゆえのメリット。

常にアイディア探しのアンテナを張り、例えば「言葉」から弁当を考えてみることも。「ある時は『へそくり』という言葉を使いたいと思って」とイメージを膨らませ、完成した駅弁「きつねのへそくり」は2色の揚げをめくると肉や木の実が出てくる、まるで秋の風景を描いたような仕上がりに。

駅弁「きつねのへそくり」

おなじみ「ひっぱりだこ飯」も「『つっぱり』…つっぱったらおもしろくない?」と、リーゼント姿のたこの掛け紙や辛口ポテトフライを入れた通常版より「反骨感」のありそうな「つっぱりだこ飯」を商品化し、キーワードから遊び心あふれる世界観を広げたそう。

■ 「駅弁界の島耕作」の今後の野望は…?

同社と言えば、蛸壺風や新幹線の形をした陶器、JR貨物コンテナをモチーフにした弁当箱、若年層を中心に人気の「サンリオ」キャラクターとコラボした「クロミ ランチ」など、食べた後も楽しめてコレクションしたくなる駅弁が多数。

JR貨物コンテナをモチーフにした弁当箱も大ヒット

柳本さんは「本当に美味しいのは出来たて。でも、駅弁はそれが出来ない。だからこそ、付加価値として収集癖をくすぐるものや、生活や旅に彩りを添える、心に訴えかけるものを考えなくては」と語り、新商品について日々模索中という。

「パンダコパンダ」「兵庫県警」など、さまざまなコラボ壺が楽しい「ひっぱりだこ飯」のサンプル
「パンダコパンダ」「兵庫県警」など、さまざまなコラボ壺が楽しい「ひっぱりだこ飯」のサンプル

今後は「実は神戸大学との共同開発が現在進行中。そのほか『ひっぱりだこ飯』のコラボ以外での展開など、いくつも新企画が同時に動いているところ。駅弁以外にアパレル商品もおもしろそう!」と飽くなき探究心をのぞかせる柳本さん。「お客様からの声は現場の販売店にも反映させていきたいので、弊社の商品を手に取って、みんなが笑顔になれるように」と期待を寄せる。

取材・文・撮影/塩屋薫

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