偏愛通り過ぎて変態?「飯も食わずに…」世界の希少植物が大阪集結で行列400人

たくさんの植物愛好家が集まった『BORDER BREAK』。2日間、大にぎわいとなった「咲くやこの花館」
鶴見緑地の屋内植物園「咲くやこの花館」(大阪市鶴見区)が12月13日、静かな熱気に包まれた。『EXPO’90 国際花と緑の博覧会』のメインパビリオンだったこの地で、朝10時の開場を前に行列が400人越え。同館のスタッフも「普段は人が並ぶということ、ほとんどない。すごいです…」と驚くほどの、盛り上がりぶりだ。
開催されていたのは、世界各地の希少植物などの展示即売を中心とした、植物好きによる、植物好きのための祭典『BORDER BREAK』。「飯を食わずとも、買う」「いくら高くても欲しい」…そう思えるほど植物を「偏愛」する「植物男子」(一部「植物女子」も)たちが、全国から集まった。

◆蟻と共生する植物、爆発するかもしれない種子、植物の遺影アクセサリー…個性派ぞろいの出店者たち
多くの来場者が熱心にユニークなフォルムの植物を選んでいたのは、「伊藤蟻植物農園」(愛知県北名古屋市)のブース。蟻と共生する不思議な植物、通称「アリ植物」に魅せられた伊藤さんは、好きが高じて全国で唯一「アリ植物」専門で新規就農し、現在はその他の植物ふくめ1000種以上を取り扱う。

「メジャーなものはひとつもない。育てるのも難しい。ニッチ中のニッチでも、愛好家がいるんです」。確かに、「アリ植物」は見れば見るほど、気になってしまう不思議な魅力が…。奇妙な可愛さがある。扱う植物の値段は、数千円~数万円まで幅広いが、高額な植物たちが、次々と売れていた。

会場で販売するのは、こうした植物だけではない。インドネシアのスラウェシ島の「純胡椒」を出店したのは、「仙人スパイス」。代表の高橋仙人さんは、世界各地で植物の調査などを行う中で、雨が上がれば、「今からちょっとジャングル行ってくる!」と言える環境を求め、インドネシアに移住したそう。

「このイベントには、『飯も食わずに、買う』『今日のために貯金してきた』という真剣な人たちが多いんです。彼らは、いくら高くても気に入った植物を買う。ベランダに植物がいっぱいとか、趣味の時間を大切にしているし、食にもこだわる。出店する側としても、そんな人たちの植物愛が励みになりますね」と、高橋さん多くの来場者とのコミュニケーションを楽しんでいた。
そのほか、シダ、ドクダミ、キンモクセイなど本物の葉や花、実などの型をとり、真鍮や銀のアクセサリーを制作する「sin」(東京)。どんぐりやまつぼっくりから、爆発する可能性があるスナバコノキなど希少な実を扱い、『BORDER BREAK』の「お土産屋」を自称する「小林商会」(長野)など、個性的な出店者がズラリと並んだ。


◆ 主催は『クレージー・ジャーニー』出演でも知られる植物探検家・長谷圭祐さん
同イベントを主催するのは、枚方市出身の植物探検家・長谷圭祐さん。近畿大学在学中から東南アジアを中心に世界中のジャングルを巡ってきた彼は、「先日パプワニューギニアに1週間行ってまして、1日10万円の滞在費かかったけど、全然だめでしたね~」と笑う。

新種を発見するなど、熱帯雨林に生育する「ジメジメ系植物」の第一人者として知られ、同イベント以外に、関西最大級の植物イベント『天下一植物界』も手掛ける長谷さん。しかし、この『BORDER BREAK』をスタートした13年前は、「出店してほしい人に声かけても、よくわからないイベントという感じで反応が悪かった…本当に手探りで始めました」と話す。今では、多くの人が開催を待ちわびる大人気の総合植物イベントに成長し、この日は17の出店者が全国から集まり、にぎわった。
◆ 盛り上がる「植物シーン」が異色のドラマ化『変態植物倶楽部』放送中
このようなイベント含め、盛り上がりをみせる「植物シーン」が、「ドラマ化」され現在放送中。長谷さんが監修するドラマ『変態植物倶楽部』(「テレビ大阪」)…なんだかすごいタイトルだ。

愛好家たちが熱狂する珍奇で奇怪な植物を、敬意とユーモアを込めて「変態植物」と呼び、それに狂おしいほど魅せられた人間と植物の姿を描く本作。『サンクチュアリ -聖域-』で知られる一ノ瀬ワタル演じる主人公・副島が、毎話ひとつの植物と向き合い、街の偏愛的ショップを訪ねる約15分のドラマだ。副島が愛でる植物の声は、人気声優の悠木碧が担当している。
植物愛好家の中でも話題となっていて、会場でも「『変態植物倶楽部』観た?」という会話をしている人たちが。「変態植物倶楽部ちょーおもれぇ」「共感ポイントいっぱい」「値段が出る度に、家族に金額を隠している方達の悲鳴」とSNSにもさまざまな感想があがっている。
それもそのはず、このドラマのプロデューサーもそんな「変態植物」に魅せられた一人。長谷さんのイベントにも度々足を運んでいたそう。また、いとうせいこうの『ボタニカル・ライフ 植物生活』が原作、田口トモロヲ主演の人気ドラマ『植物男子ベランダー』(NHK BSプレミアム)シリーズを手掛けたスタッフも制作に携わり、異色の植物愛たっぷりでリアルなドラマが完成した。

長谷さんは今回、ドラマ監修初挑戦。作中で訪問するショップなども制作陣にアドバイスを行った。「過去、雑誌『BRUTUS』のページ監修なども経験しましたが、今回はドラマなので、あまりマニアックになりすぎないように、気を付けました。観た人たちからは、いろいろな反応があって面白い」と長谷さん。気になった人は、盛り上がる『変態植物』の世界をドラマで覗いてみては?
『変態植物倶楽部』(テレビ大阪)の次回放送は12月26日深夜1時30分〜。「TVer」にて見逃し配信、YouTubeではオリジナルコンテンツも配信している。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部
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