未来の国宝を探す!? 大阪でユニーク展、8月末まで「初めて観た」

牧島如鳩「魚籃観音像」昭和27(1952)年 足利市民文化財団
近年、なにかと話題を集める「国宝」。関西の大型ミュージアム3館での国宝関連の特別展(すべて閉幕)や、大ヒット映画『国宝』などで、多くの人が改めて国宝に興味を持ったのではないだろうか?そんななか、「大阪中之島美術館」(大阪市)で開催中の特別展が「ユニークだ」とSNSを中心に注目を集めている。
■ 見逃せない…伊藤若冲×円山応挙「竹鶏図屏風」が初公開

同展を監修した美術史家で明治学院大教授・山下裕二氏が「知名度の高い作品を集める従来の展覧会とは逆で、できるだけ『知名度が低い作品』を選りすぐりました」と説明するように、多くの来館者が「なんじゃこりゃ!?」「初めて観た!」とビックリするような縄文から近代までの作品が並ぶ。図録にも「展覧会に対する裏番組、アンチテーゼとも言うべき企画」と記載があるように、国宝展とは真逆なのだ。
一般的な知名度は低い作品ばかりとはいえ、技術や独創性などが突き抜けたような作品が多く、見応えたっぷり。例えば、注目作品のひとつ、牧島如鳩(まきしまにょきゅう)の「魚籃観音像」は、山下氏が「初めて観た時は本当に驚きました。これこそ多くの人に観ていただきたい」と力を込めるほど、インパクトのある作品。
中央に描かれた魚籃観音(ぎょらんかんのん)が玻璃(はり)に入ったイワシの稚魚を放流し、観音の裳は地引網になっている。そして左には、キリスト教の聖母マリアと天使、右には仏教の菩薩と天女(飛天)が描かれている。まさに、仏教とキリスト教のコラボレーションだ。
同作は、元々、福島県いわき市の漁協に置かれていたが、東日本大震災の2年前に如鳩の生まれ故郷である栃木県の足利市立美術館へ寄託され難を逃れた。明治から昭和にかけて活躍した画家・牧島如鳩は、日本ハリストス正教会の伝道者でもあり、この作品からは、あらゆる宗教を超えた共通の祈りを感じさせる。

そのほか、度肝を抜くのが、江戸時代末から明治にかけて活躍した人形師・(初代)安本亀八の生人形だ。「スーパーリアルな彫刻」という言葉が相応しく、相撲の始祖・野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)が取り組みをする「相撲生人形」は、髪やすね毛の1本1本から筋肉、眼球など、あまりにも現実の人間のように見え、その迫力に鳥肌が立つ。

一方で、15~16世紀の「素朴画」と呼ばれるヘタウマの境地とも言える作品も。室町時代作の『築島物語絵巻』は、キャプションに「字はウマいのに絵はヘタ」とツッコミが入っている作品だ。山下氏が「本当に下手ですが、なんでこんなに清々しく気持ちのよい絵なのだろう」と語るほど、描かれた人物のとぼけた表情など、じっくり観ると味わい深い。

そして、同展には絶対に見逃せない作品がある。伊藤若冲ら江戸時代に活躍した奇想の画家の作品も数多く展示されているのだが、その中でも、これまでまったく類例がない、新発見された伊藤若冲と円山応挙の合作屏風「竹鶏図屏風」が初公開中なのだ。若冲と応挙の2人が1隻ずつ手掛けた二曲一双屏風で、2人の仲が良かったから制作された訳ではなく、発注者がそれぞれに画題を指定して依頼し、金屏風に仕立てたと考えられている。


私達が従来イメージする日本美術とは一線を画すユニークな作品の数々。同展の副題には、「未来の国宝を探せ!」とあるように、これは近い将来、国宝になってもおかしくないと思う作品も多い。同展の公式サイト内では「“MY国宝”を探せ!」として、作品人気投票もおこなわれている。
『日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!』の会期は、8月31日まで。一般1800円ほか、詳細は公式サイトにて。
取材・文・写真/いずみゆか
日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
会期:2025年6月21日(土)~8月31日(日)
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
※会期延長日あり 19:00(入場は18:30まで)
8月30日までの金曜日、土曜日、祝前日
入場料金:一般1,800円/高大生1,500円/小中生500円
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