「祇園祭」を支え続ける「宮本組」、未来につなぐ若手の存在

八坂神社の氏子組織、祇園町の「宮本組」(提供:宮本組、撮影:安田格)
7月1日から、八坂神社(京都市東山区)の祭礼、京都・祇園祭の1カ月が始まっています。祇園祭は、京都の疫病をしずめるために1000年以上前、祇園社から神輿を神泉苑に送ったことに始まったとされています。

装飾に贅を尽くしたきらびやかな山鉾巡行に目がいきますが、神事の中心は御神霊をうつした3基の神輿が氏子地域をまわり、四条の「御旅所(おたびしょ)」にまつられたあと、八坂神社に戻る「神輿渡御(みこしとぎょ)」です。
この神輿を、神宝を持って先導するのが、祇園町の氏子組織「宮本組」です。組員は、祇園に関係がある旦那衆、約70名(役員14名)で構成されています。
5月は、現在の宮本組頭「原了郭」代表取締役・原悟さん(61)と、副組頭の「鍵善良房」代表取締役・今西善也さん(52)に、宮本組の活動内容とトップとしての想いを取材しました(6月の記事はこちら)。
今回は、宮本組の将来を担う青年部「臥龍組(がりゅうぐみ)」の組頭「かづら清老舗」代表取締役・霜降太介さん(39)、副組頭「二軒茶屋 中村楼」専務取締役・辻喜彦さん(41)、副組頭「するがや祇園下里」取締役・井上路久さん(40)にお話を聞きました。

宮本組の将来を担う青年部「臥龍組」とは
――みなさん年齢も近くて、下の名前で呼び合う仲なんですね
霜降さん:臥龍組ができる前から交流はずっとあったし、むちゃくちゃ仲がいいと思います。
辻さん:そうですね。ほかの業界の集まりや組合でも一緒になることって祇園は多くて、消防団もやってますし、祭以外でも繋がることも多いですね。
――臥龍組が作られたのはなぜですか?
霜降さん:この世代の横のつながりがより強固なものになったらええし、親会(宮本組)からも、若い力で下からどんどん突き上げてくれという期待をいただいて結成しました。
――「臥龍組」という名前はどのようにして決まったのですか?
霜降さん:名前は親会につけてもらいました。「今は臥せているが、いずれ立派な龍になって空に飛び立つ。お前たちは、その時をうかがっている龍だ」という意味を込めてもらって。臥龍組ができたのは2021年3月。コロナ禍で集まったりできないときで、私服で神輿洗いの日の早朝に四条大橋を掃除したのが始まりやったね。

――交流はあったものの、組織されたのはわりと最近なのですね。任されているお仕事は?
井上さん:10日と28日に神輿洗いがあるんですけど、神輿が出る前に松明(たいまつ)が出るんです。これまではトラックで八坂神社に運び入れられていた松明を、せっかくやったら自分たちの手で八坂神社に運べないかっていうのを提案して3年前からおこなっています。
井上さん:一般の人が見学できるように松明を展示している「漢字ミュージアム」から松明を担いでお宮に入れて、私たちから神輿会の輿丁(よちょう:お神輿の担ぎ手)にお願いしますとお預けする。宮入りのときは輿丁もずらっと宮本組を囲んでくれててね。これは行事として「大松明宮入り」と名付けてもらいました。長く続けていければいいと思う。

霜降さん:神輿洗いは宮本組が主催し、四若さん(しわか:八坂神社の三つある神輿会のひとつ)にお願いして神輿を出してもらって成立しているお祭りなんやけど、関わっている人たちによる一体感の醸成がプラスに働いていると思う。この行事ができるようなったのは、頭の原さんが神輿をかついでいたことがあるのも大きいですね。原さんが四若さんに話を通してくれたからスムーズに決まった。最近は、各神輿会の若手の人らとご飯も食べるようになったんですよ。年々関係性は深くなってるね。
――新しい行事から、さらなる交流も生まれているのですね。今、組員は何名ですか?
井上さん:8人やね。年齢とか決まっていないんですけど、45歳前後っていう話はあったんですよ。原さんらが上にいて、中間がいて、その下っていう感じで、うまいこと世代を回していけるように、若い子が入って来た時の受け皿になりたいですね。
霜降さん:祇園町に住む人が減っていっていますし。僕らの世代は、今の組頭の世代よりも祇園に生まれて育った人は減っていると思うんですよ。だから、たとえば組頭や副組頭の息子さんをいつか仲間に入れて、世代を超えてみんなで盛り上げていくことがすごく重要になってくるのかなと。臥龍組が上の世代と下の世代をつなぐ役目でありたいと思っています。
霜降さん:それぞれの世代が役割を果たして、次の世代にタスキをちゃんと渡して来てくれたから宮本組は続いていますし、タスキを磨いて次に渡すというのは常に意識していますね。
「宮本組」での活動は?
――宮本組で印象に残っている活動はありますか?
辻さん:僕とみっちゃん(井上さん)は、神輿をかついできたんですけど、やっぱり宮のもとの人たちは、宮本組を担っていかなあかんって聞いていた。コロナ禍になって神輿も出せないときでも、神事は神馬による御神霊渡御という形に変えて続けられていて、僕ら3人も参加させていただいた。それに参加してひとつ成長したというか、宮本組の一員である喜びをすごく感じましたね。御神霊に傘を差し掛けているときに、すごく神さんの近くにいれたっていう今までにない経験が…。
井上さん:あれはなんとも言えなかったですね。
霜降さん:神さんを一番必要とする時やったから、あれは本当に良かったね。還幸祭は大雨やったけど、最後の八坂神社の前ではみんな泣いてたよ。輿丁も泣いてた。
――原さんも、涙が出るくらい感じるものがあったとおっしゃっていました。祇園祭について勉強したりもするのですか?
霜降さん:澤木政輝さん(宮本組員)の書籍『祇園の祇園祭』がバイブル的な立ち位置になっているし、勉強会もしてくれはる。
井上さん:臥龍組のメンバーで一緒に飲んでいて最初はしょうもない話をしてますけど、「あれはほんまはこうやったんちゃうのか」とか、「祭の本来の意味はこうちゃうのか」とか、そういう話で盛り上がるみたいなこともある。みんな祭が好きやから。

――今後どうしていきたいですか?
辻さん:僕らは、八坂神社のお膝元の祇園で商売させてもらって今があるわけですから、できるだけやっぱり地元の人を中心に、宮本組を担っていきたいというのはありますよね。でも、これだけ大きいお祭ですので、やり続けるには、周りを巻き込んで協力してもらっていくしかないなっていうのはあります。
霜降さん:やっぱり支える人が減っていくと、それだけ受け継ぐのが難しくなる。本質は見失わないようにしつつ、これからもこの組織を維持・発展させていかないとあかんと思っています。
取材・文/太田浩子
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