大阪で「ゴッホ展」開幕、日本初公開の手紙&家族にもフォーカス

3時間前

『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』は「大阪市立美術館」を皮切りに東京、名古屋を巡回

(写真13枚)

19世紀を代表する画家「フィンセント・ファン・ゴッホ」と、その家族が受け継いできたコレクションに焦点を当てた特別展『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』が、「大阪市立美術館」(大阪市天王寺区)で開催中。日本初公開となるフィンセントの手紙をはじめ自画像など約30点の名作、さらに彼らのコレクションも鑑賞できる。

■「ファン・ゴッホ家」の尽力で実現した展覧会

開会式にて、テオのひ孫で「フィンセント・ファン・ゴッホ財団」代表のウィレム・ファン・ゴッホ氏は「祖父が1973年にアムステルダムに設立した美術館には世界から5600万人を超える人々が訪れています」とコメント(7月4日、大阪市内)
開会式にて、テオのひ孫で「フィンセント・ファン・ゴッホ財団」代表のウィレム・ファン・ゴッホ氏は「祖父が1973年にアムステルダムに設立した美術館には世界から5600万人を超える人々が訪れています」とコメント(7月4日、大阪市内)

本展の第1章で出迎えてくれる巨大な人物写真は、作品鑑賞前に覚えておきたいファン・ゴッホ家の人々。フィンセントの画業を経済的・精神的に支え続けた弟・テオの存在は広く知られているが、さらにテオの妻・ヨーは夫亡き後に膨大な作品を管理し、テオに宛てたフィンセントの書簡集を出版。テオとヨーの息子・フィンセント・ウィレムはコレクションを散逸させないよう「フィンセント・ファン・ゴッホ財団」を設け、美術館の設立に尽力した。

第1章では、フィンセントを経済的・精神的に支え続けた弟・テオのほか、テオの妻・ヨーやテオとヨーの息子・フィンセント・ウィレムの写真とともに功績を紹介
第1章では、フィンセントを経済的・精神的に支え続けた弟・テオのほか、テオの妻・ヨーやテオとヨーの息子・フィンセント・ウィレムの写真とともに功績を紹介

フィンセントの生前に売れた絵は1枚というが、ヨーは義兄の作品価値の向上をめざし美術館などへ貸し出し・売却し、1926年以降は約200点の作品をファミリー内で守り続けたそう。記者発表会では「大阪市立美術館」内藤栄館長が「ゴッホの37年の壮絶な人生は孤高のイメージが強いですが、兄弟愛・家族愛に恵まれていた。彼らの尽力がなかったら、我々はここまで作品を知ることができなかったかもしれません」とコメント。

フィンセント・ファン・ゴッホ『画家としての自画像』1887年12月-1888年2月、パリ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム
フィンセント・ファン・ゴッホ『画家としての自画像』1887年12月-1888年2月、パリ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム

また、テオのひ孫で「フィンセント・ファン・ゴッホ財団」代表のウィレム・ファン・ゴッホ氏は「フィンセント・ファン・ゴッホはオランダと日本の強い絆の象徴。革新的な芸術家としての成長に、日本の芸術が深い影響を与えたからです。彼が日本を訪れることは叶いませんでしたが、夢の中ではこの美しい国の文化・芸術と関わり、その繋がりのおかげで、私たちはこの展覧会を楽しむことができるのです」と呼びかけた。

■ 自画像や『種まく人』などの名作が集結

本展での約30点のフィンセント作品は、一部を除きほぼオランダ・アムステルダムにある「ファン・ゴッホ美術館」所蔵。画業初期のオランダから、パリ、アルル、サン=レミ=ド=プロヴァンス、オーヴェール=シュル=オワーズまで、時代ごとに核となる作品が並び、色彩や筆づかいの変化に注目したい。

フィンセント・ファン・ゴッホ『木底の革靴』1889年秋、サン=レミ=ド=プロヴァンス、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム
フィンセント・ファン・ゴッホ『木底の革靴』1889年秋、サン=レミ=ド=プロヴァンス、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム

例えば、パリ時代の『グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶』は、青・赤・緑系の明るい色彩で、オランダで労働者らを描いていたダークな世界観との違いが一目瞭然。『画家としての自画像』でも、彼自身が持つカラフルなパレットが目を引く。

フィンセント・ファン・ゴッホ『グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶』1886年8-9月、パリ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム
フィンセント・ファン・ゴッホ『グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶』1886年8-9月、パリ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム

アルルでは、さらに明るい光の風景が多く、『種まく人』は力強い厚塗りと大胆な筆触でエネルギッシュな表現が印象的。遠近法やモチーフの切断は、浮世絵の影響ともいわれている。

フィンセント・ファン・ゴッホ『種まく人』1888年11月、アルル、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム
フィンセント・ファン・ゴッホ『種まく人』1888年11月、アルル、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム

■ 日本初公開の手紙、映像による没入空間も

日本初公開の手紙の展示
日本初公開の手紙の展示

日本初公開となる手紙4通は、親交を深めたオランダの画家アントン・ファン・ラッパルト宛て。老人の後ろ姿やベンチに座る人々など、日常でのスケッチが描かれ、当時の光景がリアルに伝わってくる印象だ。庭の様子や習作の進み具合の報告から暮らしぶりが垣間見れ、絵画だけでは分からない彼の思考を想像する重要な手がかりとなっている。

日本初公開、フィンセント・ファン・ゴッホ『傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙』1882年9月23日頃、ハーグ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム
日本初公開、フィンセント・ファン・ゴッホ『傘を持つ老人の後ろ姿が描かれたアントン・ファン・ラッパルト宛ての手紙』1882年9月23日頃、ハーグ、「ファン・ゴッホ美術館」アムステルダム

また本展の魅力は、ファン・ゴッホ兄弟のコレクションから、彼らがどんな作品に興味があったのかを知れる点。ジョン・ピーター・ラッセルによる『フィンセント・ファン・ゴッホの肖像』は、フィンセントのお気に入りで「大切に扱ってほしい。僕にとってとても重要なものだ」と手紙で弟・テオに頼むほど。本人による自画像より似ているという説もあり、会場のフィンセント作の自画像と見くらべるのも楽しそうだ。

幅14m超えスクリーンでの「イマーーシブ(没入)体験」空間。代表作『カラスの飛ぶ麦畑』や『花咲くアーモンドの木の枝』などが流れる
幅14m超えスクリーンでの「イマーーシブ(没入)体験」空間。代表作『カラスの飛ぶ麦畑』や『花咲くアーモンドの木の枝』などが流れる

会場最後には、幅14m超えスクリーンに名作が投影される「イマーシブ(没入)体験」空間も。近年は絵画に入ったような気分になれる企画として若年層からも支持され、今回は本展には出品されなかった代表作『カラスの飛ぶ麦畑』や『花咲くアーモンドの木の枝』、3DスキャンでCGにした迫力ある『ひまわり』などを鑑賞できる。

展覧会入館者のみが購入できるグッズ売場では、「すみっコぐらし」などの「サンエックス」キャラクターやミッフィーとコラボしたぬいぐるみなど、限定グッズが多数販売される(個数制限あり)。

展覧会『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』には、名作やモチーフとコラボした限定グッズが続々
展覧会『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』には、名作やモチーフとコラボした限定グッズが続々

開催期間は8月31日まで(休館日あり)。土日祝は日時指定の予約優先制。時間は9時30分~17時、土曜は~19時(入館は閉館30分まで)。料金は一般2200円ほか。

取材・文・写真/塩屋薫

『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』

期間:2025年7月5日(土)~8月31日(日)
   ※月曜・7/22(火)休館 ※7/21(月祝)、8/11(月祝)は開館
時間:9:30~17:00、土曜日は~19:00(入館は閉館30分前まで)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
料金:一般2200円、高大生1300円、小中学生500円、未就学児は無料

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