戯けられない陰キャ・春町に、SNS共感の嵐【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22回より。恋川春町(写真左、岡山天音)の元を訪れ、仕事を依頼する重三郎(写真右、横浜流星)(C)NHK
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。6月8日の第22回「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」では、作家・恋川春町が新しいアイディアによって、作家としても人間としても飛躍する姿にSNSが称賛の嵐に。また思わぬ芸人の登場にも、視聴者が沸き返った。
■ 筆を折った恋川春町を説得…第22回あらすじ
断筆宣言をした恋川春町(岡山天音)を説得するために、重三郎や喜多川歌麿(染谷将太)、朋誠堂喜三二(尾美としのり)などが春町の元を訪問。春町は自分が辛気臭くて戯(たわ)けることに向いていないことや、北尾政演(古川雄大)の才能に引導を渡されたような気がしたことを打ち明ける。一方大田南畝(桐谷健太)が、春町は意外と皮肉が上手いと評したのを聞き、重三郎は「皮肉屋の春町」として売り出すことを思いついた。

一方春町も、いろんな漢字の「へん」と「つくり」を自由に組み合わせて、様々な状況を表現する「作り文字」を発明。重三郎の指図で、吉原の情景を描いた『廓*費字尽(*は竹冠に愚)』出版が実現した。年末の宴会で、みずから「酒上不埒」という狂名を名乗って、ほかの戯作者・狂歌師たちと戯けるようになった春町。そんななか重三郎は、吉原で再会した田沼意知(宮沢氷魚)から、蝦夷地の上知計画に関わることを持ちかけられる・・・。
■ 「面倒くさい」陰キャ・春町に、SNS共感
ロックの世界ならビートルズ、日本の漫画の世界なら手塚治虫と、歴史を動かすほどの文化が生まれるときには、必ずキーとなる「天才」が存在する。それで言うと江戸の娯楽・大衆文化が花開くきっかけを作った「黄表紙」は、恋川春町という天才がいたからこそ生まれた文化だったと言えるだろう。この第22回では『金々先生栄花夢』以降ヒットにめぐまれず、くすぶりかけていた春町が、重三郎やその周囲の人々の熱意&好意によって、ついに殻を破った瞬間が描かれた。

第21回で、自分の作品をオマージュにしたデビュー作で、大田南畝の青本ランキング一等賞を取った北尾政演(のちの山東京伝だからしょうがない)への怒りを爆発させ、さらにその怒りを次郎兵衛(中村蒼)の屁で周囲から受け流された絶望から、筆も心も折れた春町。自分の才能も、自分という人間も、もう誰にも相手にされてないのでは・・・という不安から頑なになった春町には、特に陰キャを自認する人から共感の声が殺到。
「春町先生、めっちゃ偏屈だあー! 変な人だ〜〜!! すき!!」「春町先生、多分べらぼうの面倒くさい地雷系ヒロイン枠」「めんどくせえ文豪だけど陰キャとしてシンパシー覚えてしまう」「春町先生がこじらせるほど俺の春町先生への好感度が上がっていくんじゃ」「陰キャでめんどくさくて不器用で生きるのが下手くそで誠実で真面目で世間からは理解されにくい。そんな春町先生に共感する人のなんと多いことか」などのコメントが上がっていた。

そんな陰キャ人間を浮上させるには、重三郎みたいに「そんなの誰も気にしないのに」と、否定を上乗せするような真似をするのは、実は悪手。SNSでも「正論パンチかますのやめて差し上げて」「陽キャ(蔦重)には陰キャ(春町先生)の気持ちは分かりにくい」と重三郎を責める声が。一番効果的なのは、喜三二先生や喜多川歌麿(染谷将太)がやったように、作品をベタ褒めして、自己肯定感を取り戻すことだったのだ。
2人の取った正しい対処法に、SNSも「筆を折る宣言してる人の目の前で、真の本好きが著作をウキウキ話すこと以上の薬は無い気がするなあ」「結局クリエイターを主戦場に引き戻すのって『私はあなたの作品が好きです!』の声なんだなぁ」「やはり創作側に真に寄り添えるのは創作側の人間」「蔦重は自らの深淵をのぞき込むような作家に心から寄り添うことは難しくて、でもその苦手なところを歌麿がちゃんとフォローしてくれる。いいバディになってきたあ」と、喜三二&歌麿のグッジョブぶりを称える人も多かった。
■ 一皮むけた春町「屁」で始まり「屁」で終わる
そうして閉じかけた創作意欲を、再び開くきざしを見せたら、あとは重三郎のターン。既成の漢字を絵のように自由に組み合わせることで、新しい意味と情景を生み出す「作り文字」というツールを春町が思いつき、重三郎はそれに「吉原をシニカルに描く」というソフトを提供。そうして、男と女の思惑が生々しくぶつかる吉原の世界を、漢字に例えることで「あー、そうきたか!」と新鮮に見せるという『廓*費字尽(*は竹冠に愚)』を生み出した。これは春町にとっては起死回生だが、重三郎には前回の宿題となっていた「指図」の大きな成功体験だろう。

こうして自己肯定感が爆アゲ・・・とはいかなくても、宴会芸を披露して「戯ける」ことができるぐらいには一皮むけた春町先生に「春町先生、キャラ変が激しすぎる」「真面目な人が開き直るとこうなるのかwww」などの歓迎の声が上がると同時に、前回につづけておならネタで物語が収束したことについて「屁でこじれたお話は、屁で終わりました! 素晴らしい屁二部作」「2週連続屁の宴会で終わるとは・・・すげぇ大河ドラマだw」と、前代未聞の事態を歓迎する声が聞かれた。
■ クールポコが餅つき、北尾政演「な~に~?!」
ちなみにこの回では、年末の餅を作る餅付き職人役で、あの「クールポコ」のお二人が登場! 最初のタイトル部分では、エキストラ的にひっそり名前が出てきたので見逃した人も多かっただろうが、おなじみの餅つきの姿を見た瞬間に、SNSは「クールポコ?」の名前が羅列状態に。さらに通りかかりの北尾政演が「な~に~?!」という決め台詞(?)を発するという、スタッフ狙いすぎだろう(笑)というやり取りまであった。
これにはSNSも「やっちまったなぁ!」「マジで二人餅ついてるよ!『な〜に〜!』は別に言わせたけど」「餅ついてるクールポコ、江戸時代に馴染みすぎてる」などのツッコミコメントに混じって「一見何のために登場したか意味不明だけど、地味にクールポコ=正月は必ずテレビに出る芸人というイメージから、作中では年末であることを描写するための舞台装置としては結構有意義なんだよなあ」という、なかなかうがった考察もあった。

恋川春町も重三郎も成長し、年越しの晴れやかなムードにふさわしいラストでめでたしめでたし・・・なムードだったけど、多幸感のあとにはしっかり大きな悲劇を用意してくれるのが、「鬼(褒め言葉)」と呼ばれる森下佳子という脚本家の性質。これまで「袖触れ合う」ぐらいの接点しかなかった田沼意知を、重三郎にしかと認知させるシーンが登場した。
これは意知の今後を考えたら、あの避けられない悲劇に重三郎をガッツリ巻き込むから、覚悟しとけよ・・・という予告に、どうしても見えてしまうのだ。まずは「蝦夷地の上知に協力しない?」という意知の言葉に、重三郎がどう答えるかに注目しておこう。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月15日の第23回「我こそは江戸一利者なり」では、重三郎が本屋として飛躍するために、日本橋への移転を考える姿と、花魁・誰袖(福原遥)が意知のために、松前廣年(ひょうろく)に接近するところが描かれる。
文/吉永美和子
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