唐丸→捨吉→歌麿へ壮絶な変化、染谷将太の繊細な演技【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18回より。戸籍を与えられ、重三郎の義弟として再び働き始めた捨吉(染谷将太)(C)NHK
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。5月11日の第18回「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢(いっすいのゆめ)」では、謎の青年・捨吉の登場によって、重三郎の運命が大きく動くことに。その正体を簡単に明かさせない、染谷将太の繊細な演技にも注目が集まった。
■ 消えた少年・唐丸の過酷な生い立ち…第18回あらすじ
北川豊章(加藤虎ノ介)という絵師が、吉原から消えた少年・唐丸(渡邉斗翔)ではないかと考えた重三郎は豊章の元を訪ねるが、そこで豊章に代わって絵を描きながら、体を売って暮らす青年・捨吉(染谷将太)と出会う。かつて唐丸が描いた絵に、見覚えがあるような反応をしたことから、重三郎は彼が唐丸だと確信。問い詰められた捨吉は、今の生活に身を落とすことになった理由を話しはじめる。

7つのときから母に売春を迫られる一方、鳥山石燕(片岡鶴太郎)の元で絵を覚えた捨吉は、重三郎と出会った「明和の大火」のときに母を見殺しにし、その後自分を追いかけて来た母のヒモの命も奪っていた。「助けちゃいけねえんだよ、俺みたいなゴミは」と言う捨吉に向かって、重三郎は自分に無理やり絵を描かされているということを、生きる言い訳にすればいいと諭し、唐丸が生きていたことを喜ぶのだった・・・。
■ 捨吉=唐丸? 染谷将太が繊細な表情で魅せる
第1話の大火事のときに、重三郎が救い出した少年・唐丸。出自が謎ということに加え、非凡な絵の才能を発揮し、登場時から「彼がもしかして、謎の絵師・東洲斎写楽になるのか?」という予想で持ち切りとなった。しかし前回の第17回で「北川豊章」という絵師が、当初重三郎が唐丸の売り出し方として計画していた「いろんな人気作家の作風をコピーした絵を発表する」を実践していたため、彼が唐丸の筆頭候補として急浮上。

この北川豊章というのは、浮世絵界を代表する絵師の一人・喜多川歌麿が使っていた画号。てなわけで、今回が初登場となる捨吉こと喜多川歌麿が、もしかしたら唐丸なのか? というのが、この第18回の大きなポイントとなったが、その正体の明かされ方は、ちょっとしたミステリー小説のようだった。まず最初に重三郎が紹介された豊章という絵かきは、博打好きの中年の武士で、明らかに唐丸ではなかった。

しかしその直後、『べらぼう』癒やし枠の次郎兵衛(中村蒼)の二人羽織姿を見た重三郎は、豊章には影武者的な絵師がいるのではと推察。ただのなごみシーンかと思ってたら実は推理の糸口だったなんて、本当に笑いどころ一つとっても油断がならないドラマだ。その予想はドンピシャで、唐丸と年が近そうな捨吉という青年が出てくるが、彼は重三郎とは初対面だとかたくなに主張。しかし、かつて唐丸が描いた美人画を、自分の作品と認めるような言葉を発したことで、完全に身バレ。この、重三郎に覚えがあるようなないような、どちらとも取れる曖昧な表情の出し方が、さすがの染谷将太だった。
■ 江戸時代の男娼の闇…語られた「唐丸の過去」
そうして語られた唐丸の過去と現在は、まさに想像を絶するものだった。自分が生まれてくることを望まず、幼い頃から売春を強要した母親を、火事のときに見捨てたこと。自分を脅迫してきた母のヒモ男を巻き添えにして川に飛び込み、自分だけが生き残ったこと。これらの罪の意識から、命を縮めるような男娼行為におよぶ。松葉屋の女将・いね(水野美紀)が指摘した、自傷・自罰として自分から身体を売る人間の典型とも言える存在だった。

実際の歌麿の過去は、妖怪絵の大家・鳥山石燕の元で絵を学んだこと以外、はっきりしたことはわかっていない。この『べらぼう』ではどんなバックグラウンドを持つことになるのか期待がかかっていたが、まさか吉原よりもある意味苛烈な、江戸時代の男娼の闇を一心に背負ったダークキャラになるとは・・・「ここまでやる?」と思わなくもないけれど、重三郎と歌麿の深いつながりにリアリティを持たせる、一種の仕掛けでもあったように思える。

唐丸にとって重三郎は、火事のときはもちろん、今回も地獄の生活から脱出させてくれたことで、間違いなく救いの神となった。しかし、瀬川(小芝風花)や平賀源内(安田顕)、さらには自分の本好きの原点となった朝顔(愛希れいか)など、救いが必要だった人を今まで誰一人救えなかった重三郎にとって、「救い出すことができた」という成功体験を植え付けてくれた唐丸の存在は、おそらく本人が考える以上に大きなものとなったはず。
■ 第1話から仕掛けられた「唐丸」の伏線回収
重三郎と喜多川歌麿の遺した仕事を見てみると、単なる板元と絵師という以上の深い絆を感じさせるものがある。プロデューサーとクリエイターとして、飛び抜けた天才同士だからこそ通じ合うものは確かにあったと思うが、それ以上にお互い「相手に人生を救われた」という崇拝に近い感情を抱き合っていたから・・・というのは、学術研究と違って、「かもしれない」を積み重ねてさも事実のように語ることが許される、ドラマの世界だからこそ作れた理由付けだろう。

歌麿と重三郎のブロマンス的なつながりを生み出すために、第1話から周到に仕掛けられていた「唐丸」という存在。その正体が明らかとなり、ドラマの大きな謎の一つが完全に解けたわけだけど、そうなるといよいよ「じゃあ、東洲斎写楽は誰なの?」というのが気になってくるところ。唐丸本人ではないのは確定したけど、もしかしたらその誕生には喜多川歌麿が一枚噛むことになるかもしれないし・・・この最大のミステリーの結末は、まだまだ見えそうにない。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。5月18日の第19回「鱗の置き土産」では、地本問屋・鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が店を閉めることになり、鱗形屋の人気作家だった恋川春町(岡山天音)をめぐり、重三郎をはじめとする板元たちが駆け引きをしていくところが描かれる。
文/吉永美和子
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