ガガガSP、BRAHMAN…中川敬『満月の夕』カバーへの思い

2025.3.13 21:31

ライブハウス「磔磔」で行われた『つづら折りの宴〜あれから30年』。二階堂和美とは「闇鍋音楽祭」や中川との弾き語り等でも度々共演 している(2025年1月19日/磔磔)

(写真4枚)

阪神淡路大震災の発生直後から、避難所での慰問ライブを続ける中で結成されたソウル・フラワー・モノノケ・サミット。彼らが神戸の被災地に通う中で、生まれた楽曲『満月の夕(ゆうべ)』は、ガガガSP、BRAHMAN、あいみょん…他数多くのアーティストにカバーされ、誕生から30年経った今も、東北や能登などの被災地で復興を願い歌い継がれている。中心人物のひとりであるソウル・フラワー・ユニオンの中川敬に『満月の夕』への思いを語ってもらった(取材・文/吉本秀純)。

中川敬インタビュー前編 神戸の避難所で生まれ、歌い継がれる『満月の夕』あれから30年

■ 多くのアーティストがカバーし、復興を願い歌い継がれる『満月の夕』

──阪神淡路大震災を知らない若い世代も「語り部」の活動をはじめるなどの動きもあり、そして「語り」ではないですけど、今も歌い継がれる『満月の夕』があって。多くのアーティストがカバーして、若い世代ではあいみょんも歌っていますね。

一番最初にカバーでヒットしたのはガガガSPやったかな。はじめて聴いたとき、素直に嬉しかったよ。しかも自己流のアレンジで、自分たちのものにしようとする意欲を強く感じた。俺は、自分の曲をカバーされるのって、メロディを変えなければ、どんなアレンジでも嬉しい。

みんな、『満月の夕』を歌っているときって、まるで「自分の歌」みたいな顔して歌ってて、それがいいんよ。この曲を歌おうと思った瞬間に、なにかしらその人なりの覚悟があったと思うんよね。それを乗り越えて曲の練習をはじめたりするわけやん。そして、中川敬の顔も浮かんで、それでも歌うのかっていう(笑)。

例えば、BRAHMAN(ブラフマン)のTOSHI-LOW、あいつは俺と同じ種類のふざけた男やけど(笑)、東北でも熊本でも能登でも、物資を持ってボランティアにいきまくっている。本当に素晴らしいよ。TOSHI-LOWが東日本大震災後に物資持って被災地に行ったとき「ミュージシャンやったら歌ってよ」って言われたけど、それまでパンクばっかりやってたから、歌えない自分を発見したって。パッと民謡とか歌えるわけでもなく。その時「中川敬の顔が思い浮かんだ」って言ってた。それでアコギもって『満月の夕』を歌おうと思ったらしい。あいつのまっすぐな感じが好きなんよね。

──被災地だけでなく、ライブでも演奏されて、音源にもなりましたね。

2014年、広島・安佐で土砂災害があった後、アコギをもって、リクオと2人で歌いに行ったら、現地の人たちが「昨日もミュージシャンが来て、泥搔きを一緒にしてくれた」って言うんよ。「それ、ブラフマンとかいう名前じゃなかった?」って聞いたら、「ああ、そんな名前やった!」って。BRAHMANが、ツアー途中に広島・安佐に寄って、しかも泥搔きのボランティアをやってる。感動したよ、腰痛持ちの俺ができないことをやってるって(笑)。

各地から集まった人たちで磔磔は超満員(2025年1月19日/磔磔)

──1月19日、京都のライブハウス「磔磔」で共演された二階堂和美さんの『満月の夕』も素晴らしかったですね。お客さんたちも涙して・・・伊丹英子さん(ソウル・フラワー・モノノケ・サミット)もMCで「『満月の夕』ではじめて泣いた」と。

(笑)。それは嘘やわ、俺の満月で何度も泣いてるはずやでー、心が。知らんけど(笑)。実は、トリビュートアルバム(『ソウル・フラワー・ユニオン&ニューエスト・モデル 2016 トリビュート』)を作ることになったとき、「二階堂和美の『満月の夕』を聞きたい。あの曲はニカちゃんに」って指名したんよね。

彼女は歌の塊みたいな人でね。俺が弾き語りを始めようと思ったきっかけは、もちろんいっぱいあるんやけど、二階堂和美に背中を押されたというのもひとつ。2009年、上関原発建設反対運動が続いてる祝島に家族と行ったんやけど、その一週間後に、祝島の公民館で、地元のおばあちゃんたち相手に美空ひばりとかを満面の笑みで歌ってるニカちゃんの動画を観てびっくりして。

すぐに彼女のホームページにいって「はじめまして、ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬といいます。祝島ライヴ、良かったよ!」ってメールした(笑)。純粋に俺がニカちゃんのファンでね。2011年リリースの『にじみ』というアルバムがまた良くて。

この30年の間に、俺らもやけど、今回ライブに来てくれたお客さんたちも、いろんなことを体験したと思う。で、今回「長田」と「磔磔」で、こうしてまた集まれた。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットがライブをやるべき場所っていうのは、やっぱりココやったね。

満員の磔磔を沸かせたモノノケ・サミットと二階堂和美のセッション(2025年1月19日/磔磔)

■ソウル・フラワー・ユニオン『闇鍋音楽祭 2025』
2025年3月22日 <東京> Spotify O-WEST
ゲスト:ピーズ
■ソウル・フラワー・ユニオン『年末ソウルフラワー祭 2024』大阪延期公演
2025年3月30日<大阪> 梅田 シャングリラ
ゲスト:伊丹英子(ソウル・フラワー・モノノケ・サミット)

■『中川敬・59回目の降臨祭』~ソウルフラワー中川敬の弾き語りワンマン・ライヴ!
2025年4月6日 <京都> 京都 磔磔
2025年4月12日 <愛知> 稲沢市 カフェサルーテ
2025年4月20日 <東京> 下北沢 440 (four forty)
2025年4月26日 <滋賀> 近江八幡 サケデリック・スペース 酒游舘
■『中川敬・雑種天国2025』~ソウルフラワー中川敬の弾き語りワンマン・ライヴ!
2025年5月10日 <大阪> 梅田ムジカジャポニカ
2025年5月17日 <宮城> 南三陸町志津川・月と昴
2025年5月18日 <福島> 郡山ピークアクション
2025年5月24日 <神奈川> 横浜サムズアップ
2025年5月31日 <兵庫> 加古川セシル

※『満月の夕』をカバーされたガガガSPのベーシスト、桑原康伸さんが2月5日逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。

中川敬インタビュー前編 神戸の避難所で生まれ、歌い継がれる『満月の夕』あれから30年

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