居酒屋で出てくる「お通し」、関西ではなんで「突き出し」?

お通し、突き出し、どっちで呼ぶ?(写真はイメージ)
食事をする際、メインの料理が出る前に提供される「突き出し」。最近は居酒屋などでも出てくるが、お店によって「突き出し」「お通し」と呼び方が違うことに気づいた。調べてみると「突き出し」は関西弁で、「お通し」は主に関東で使用される言葉らしい。
関西出身の筆者はどちらの言葉も使っていたため、「突き出し」が関西弁ということを知りとても驚いた。もしや、知らないだけで意味が違っていたりするのだろうか? 「奈良大学」(奈良市山陵町)の総合研究所で方言の研究をしている岸江信介特別研究員に、くわしく教えてもらった。
──「突き出し」と「お通し」って、同じ意味なのでしょうか?
まず『明鏡 国語辞典』では「突き出し」の説明として「料理屋などで、酒のさかなとして最初に出す軽い料理。お通し」と説明しています。ほかにも「突き出し」を「お通し」と説明している文献はありますので、同じ意味だと解釈していいと思います。
ちなみに、「突き出し」と「お通し」はともに日本料理の用語なので西洋料理では通用しません。西洋料理で前菜を意味する「オードブル」が近い可能性はあります。
──じゃあ、どちらの言葉を使っても問題ないんですね。この「突き出し」はどういった意味なんでしょうか。
「突き出し」の本来の意味は「突き出すこと」、あるいは「突き出ていること(状態)」です。例えば相撲で相手を土俵の外に突いて出す手(技)で「突き出し」というのがありますが、「突き出し」の意味そのものですね。
また、店の外の掲示板で、掲示されているものも、「突き出し」と呼ぶようです。この「突き出し」には「突き出す」(「突く」+「出す」で複合動詞とよばれる)の「突き」の 意味がちゃんと残っています。
──その「突き出し」がなぜ食事のときに使用されるようになったのでしょう?
実はこの「突き出し」の語源は定かではありません。考えてみると、「突き出し」からは先に挙げた言葉のような「突く(突き)」という意味は感じられません。というか、「客に料理を突き出す」ということはあってはならないというか、失礼きわまりない行為ですよね。
本来の「突いて出す」という意味で使われることは昔からなかったと考えれば、「本料理を出す前にふるまう、小鉢ものなどのちょっとした料理」という意味で「突き出し」といったのではないかと推測できます。もしかすると「先に出す」ということを「前に出す」と捉え、「突き」に変わったのかもしれません。
──なるほど、はっきりとした語源はまだわかっていないんですね。いつ頃から使用されるようになったかは分かっているんでしょうか。
「突き出し」は、江戸時代の天保年間(1831年~1845年)には既に使われていた言葉ということが分かっています。その時代における上方(関西地方)の言葉を集めた『近世上方語辞典』という本に、『酒肴むりもんだふ(酒肴無理問答)』というものが記載されてます。内容は「桶屋にあらずして底入れたとはいかに、箱屋の細工にあらねど突出しの肴といふがごとし」といったもので、「桶屋ではないが、『底入れた』(※桶屋は必ず底に板を入れる)とはこれいかに?箱屋の細工ではないが『突き出し』の肴(※おかずのこと)って言いますよね」といった意味になります。
これは当時「突き出し」という指物(木工品)があり、箱屋が箱を作る時の必需品であったこと、桶屋の「底板」も桶を作る時になくてはならない必需品だったという背景が関係しています。おそらくですが、この「必需品」が共通しているということを土台に、「突き出しの肴」に話を展開しているところが、天保の人々に面白がられたのではないでしょうか。この問答から「突き出しの肴」ということばが当時、一般的に用いられていたことがわかります。
──そんな時代から「突き出し」で通じていたんですね!
作家・里見弴が1920年に発表した小説『桐畑』のなかにも、「上方風のうまいつき出しで一杯始めながら」というくだりがあります。里見自身は横浜の生まれで関東育ち。なので「突き出し」いう言葉は上方で用いるもの」という認識があって、このような表現をしたのではないかと推測できます。そうなると、関東と関西の「お通し」と「突き出し」の対立(?)は100年以上前からすでに存在した可能性もありますね。
◇
意外にも歴史があることがわかった「突き出し」。当時ははっきりと使い分けられていたようだが、最近では関西拠点のお店が関東に進出したり、全国区のチェーン店も増えているため「突き出し」と「お通し」の境目もなくなりつつあるのかもしれない。
取材・文/つちだ四郎
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