トミと坂口の名コンビ誕生、「怖かったぁ〜!」は黒田の実感

2023.12.26 08:15

スズ子の活動の力になるべく、トミ(小雪)にあるお願いをする坂口(黒田有)(C)NHK

(写真2枚)

朝の連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合)の12月26日放送回(第62話)では、結核が再発した愛助(水上恒司)をスズ子(趣里)が献身的に看病する姿が描かれた。

だが、もとよりスズ子の熱烈なファンであった愛助は、自分の看病のためにスズ子を舞台から遠ざけてしまったことに罪悪感を感じはじめる。そして、一度はスズ子のマネージメントを依頼しようとしたが、母・トミ(小雪)に引き離されしまった「じい」こと山下(近藤芳正)を再びマネージャーとして呼び戻したいと願う。自分が大阪に出向いてトミを説得すると意気込む愛助だったが、村山興業東京支社長の坂口(黒田有)が「ワシが社長を説得します」と制止した。

かくして大阪の本社に出向き、トミに説得を試みる坂口。机を叩き、ドスの効いた声で「何やてぇ?!」と制圧してくるトミと震え上がる坂口が、まるでライオンに睨まれた室内犬のようで、なんとも味のあるシーンとなっていた。この「トミと坂口」の名コンビについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

■「黒田さんの素のリアクションが乗っていた」

「とても難しいシーンだった」と振りかえりつつ、「すごく緊張感がありましたが、小雪さんが本当に生き生きと演じてくださったのが印象的でした」と福岡さん。

「『ワテは言い訳聞かされんのがいちばん嫌いなんや』と言ったあと『ワテは嘘つかれんのがいちばん嫌いなんや』『ワテは屁理屈聞かされんのがいちばん嫌いなんや』と畳みかけ、坂口を追い詰めるトミ。櫻井(※編註:今週の脚本を担当した櫻井剛)節が炸裂していました。演じる小雪さんは、存在感たっぷりのお芝居で説得力を持たせながら、『私、こんな怖い台詞をどんどん言うのね』なんておっしゃっていました(笑)」と、撮影の際の小雪の様子を語った。

トミに詰められる坂口を演じる黒田についても、「『いや〜、ビビってまいますわ〜』とおっしゃっていた黒田さんの素のリアクションが乗って、「ビビりながら必死で搾り出す坂口の説得」というお芝居に、とてもリアリティが出ていました」と絶賛。

また、一見「ラスボスと部下」のコミカルなシーンに見えるこの場面の背景について、「トミの『社長と母親』という側面と、坂口の『職務に忠実な部下でありながら、ボン(愛助)の望みを叶えてあげたい』という思いが入り混じった、とても奥行きのある場面になっていて、僕は何回見てもこのシーンが好きです」と語った。

坂口(写真右、黒田有)に、歌手としてのスズ子の力になりたいと話す愛助(水上恒司)(C)NHK

■「緊迫した場面にユーモア」がブギウギの真骨頂

ならば同じく62話で、なんとかトミを説得し、山下をスズ子のマネージャーにつける許しを得て東京に戻った坂口が、愛助とスズ子に報告する際に思わず漏らした「怖かったぁ〜!」という台詞は、さぞかし実感がこもっていたのではないだろうか。福岡さんに聞いてみると、

「本当に黒田さんの実感がともなっていました(笑)。黒田さんに『トミを説得するシーン、すごくよかったですよ』とお伝えしたら、『いや、緊張しすぎて何しゃべったか忘れてますわ』とおっしゃって。頭が真っ白になるほどに必死の説得だったのでしょうね」と、黒田のリアルな演技の裏話を打ち明けた。

加えて、今週13週、次週14週、次々週15週を担当した櫻井剛の脚本にもふれ、「坂口が三鷹の家に滑り込んできて両手で『○』を作るところ、良かったですよね。あれは台本にあらかじめ書かれていました。櫻井さんはとてもユーモアがある方で、足立紳さんが構築したキャラクターを実にうまく掴んでいただいて、ああいう茶目っ気を仕込むのがお上手です。緊迫した場面にユーモアを、悲しいシーンにおかしみをしのばせるのが『ブギウギ』の真骨頂かなと思っています。そこを非常によく捉えていただいて、本当にいい脚本だったと思います」と語った。

戦禍はますます激しくなっていくが、坂口、山下という強力な味方を得て、スズ子は再び歌う決意をする。そして、愛する愛助とともに前へと進んでいく。

取材・文/佐野華英

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