【どうする家康】秀頼覚醒でラスボス爆誕、回避できない悲劇

2023.12.15 17:00

『どうする家康』第47回より、牢人らを前に「共に乱世の夢を見ようぞ!」と声を上げる秀頼(作間龍斗)(C)NHK

(写真4枚)

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。12月10日放送の第47回『乱世の亡霊』では、茶々の言葉に突き動かされて、豊臣秀頼が予想外の方向に覚醒。ラスト2回というところで登場した「本当のラスボス」に、SNSは悲鳴と興奮がないまぜになった声が多数上がった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、茶々の意に反して秀頼覚醒

一度は徳川方と和議を結んだものの、大坂方は数万人の牢人たちを召し抱え続け、ついに京で狼藉を起こす。再び一触即発の事態となるなか、茶々(北川景子)は「秀頼さまを生き延びさせることこそが、母の役目であるはず」という家康の手紙に心を動かされ、秀頼(作間龍斗)に戦を強いるのを止めて「そなたの本当の心で決めるがよい」と決断をゆだねる。

しかし秀頼は意に反して、茶々が教え込んできた「我が身を顧みずに、人を助け世に尽くす」姿こそが誠の自分だと語る。さらに、自分が天下人になることがこの国のためであり、正々堂々戦って徳川を倒すと宣言。「共に乱世の夢を見ようぞ!」と牢人たちを扇動する秀頼を、茶々はほほえみながら見つめ、家康は秀頼を「乱世の亡霊」と呼ぶのだった・・・。

■ 茶々すらも一瞬戸惑う、強烈なモンスター

2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の脚本家・三谷幸喜と、今回の『どうする家康』の古沢良太がよく似ているなあと思う点は、どちらも辛い結末の史実を取り上げるときに、直前まで悲劇が回避できそうな雰囲気を出しておきながら、最後の最後に「はい残念でしたー!」と手のひらを返して、史実ルートを爆走する展開を得意とするところだと思う。この47回も、家康の手紙で闇落ちから抜け出した茶々が、大坂夏の陣を止めてくれるのでは? と期待させておいて、逆に強烈なモンスターを誕生させるという、予想を上回る結末を見せてくれた。

これまで秀頼の本心は、ドラマのなかではっきりと明かされることはなかった。本当に家康が考えるような「様子のいい秀吉」なのか? それとも茶々の言うことに流されているだけの素直な青年なのか? 茶々がようやく一歩引いて、息子の自主性に任せた結果、秀頼が選んだのは「家康を倒して天下を取る!」という、茶々すらも一瞬戸惑うようなものだった。

『どうする家康』第47回より、自ら家康を倒して天下を取ることに覚悟を決めた秀頼(作間龍斗)(C)NHK
『どうする家康』第47回より、自ら家康を倒して天下を取ることに覚悟を決めた秀頼(作間龍斗)(C)NHK

この答にSNSでは、「秀頼さま、え、嘘だろ」「茶々さまの乱世の呪いが解けかけたところで、茶々さまの呪いを受けた秀頼さまが覚醒しちゃうの、最悪の地獄の連鎖」「信長公と太閤殿下の血を引き、徳川家康という理想像を浴びて育ったものが豊臣秀頼。確かに戦国乱世を代表する合成獣だ」「魔王が敗れて真の魔王誕生みたいなことになったな」などの、驚きと嘆きの混じった言葉が一斉に上がった。

■ 自分が望む「天下人」を育て上げた茶々

少女時代に、母から「理想の天下人」と教えられてきた家康の偶像が(勝手に作り上げたものとはいえ)崩れたトラウマを持つ茶々。しかし豊臣秀吉に嫁ぎ、自分が望む「天下人」を、文字通り赤ん坊から育て上げることができた。その結果見事に、理想を貫くためには武力行使も辞さないリーダーが完成。子どもの教育としては大成功だけど、歴史の流れとしてはアカンものを作ってしまった感がとてつもない。

『どうする家康』第47回より、秀頼や牢人らを背に家康からの手紙を燃やす茶々(北川景子)(C)NHK
『どうする家康』第47回より、秀頼や牢人らを背に家康からの手紙を燃やす茶々(北川景子)(C)NHK

しかしこの思わぬ「成功」で、茶々の心にはまた「武力で天下を取る」という気持ちに火が付き、その心のままに家康の手紙も燃やしてしまった。この展開にSNSは、「秀頼とともに家康に降り生き延びる道より、負けるとわかっても秀頼とともに滅びる道を選んでしまった」「作り上げてしまった乱世の怪物は、お互いが倒れるまでは終わらない。でも、これで良いのかもしれない。戦いたくないのに戦うより、戦いたくて死ねるなら」と、ともに覚悟を決めたような言葉が。

とはいえ家康の孫・千姫(原菜乃華)までも、夫の秀頼に従って「ともに徳川を倒しましょう!」と武闘派に転じてしまうのは、さすがにショックな人が多かったよう。「そりゃあんな目に遭ったら千は心変わりするわな」「幼き頃家康に裏切られたと失望し、深い憎悪を抱いてしまった茶々と同じ思いを、寵愛する孫のお千が抱いてしまった」「大坂の陣終わったあとのお千ちゃんがおじじ様になんて言うか、今からめちゃ怖いんですけど?」などの「全部家康のせい」的なコメントが並んだ。

やはり今回も悲劇は回避できなかったわけだが、ここまで家臣団も含めて全員が「打倒徳川」でギラギラと一致団結するようなムードになった豊臣家は、今までなかったのではないだろうか。その最後の戦いは、真田信繁(日向亘)もふくめて、相当な健闘を見せてくれるのが期待できそうだ。ちなみに大坂の陣の跡地は、天王寺の茶臼山とか「大坂明星学園」付近など市内数カ所に残っているので、機会があれば彼らを忍びつつ歩いてみよう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BS・BSP4Kは夕方6時から。BSP4Kは昼12時15分に先行放送あり。12月17日放送の最終回『神の君へ』では大坂の陣と、家康の激動の人生の最後が、通常より15分拡大して描かれる。

文/吉永美和子

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