舞台俳優ユニット3LDK、結成11年目で語る「互いの信頼感」
演劇の舞台を中心に活躍する一方、3LDKというユニットを組んでいる俳優の植原卓也、平間壮一、水田航生。CDリリースから生配信ライブまで、自分たちでアイディアを出し合いながら多方面で活躍する彼らが、韓国で熱狂的なマニアを生み出した3人芝居ミュージカル『ミア・ファミリア』で、待望のミュージカル舞台初共演を果たす。
2012年の結成から、互いを認め合いながら切磋琢磨してきた3人のインタビューが実現。植原と水田が大阪出身ということもあり、本音とツッコミがわちゃわちゃと飛び交う一時となった。
取材・文/吉永美和子
写真/木村正史
■ 「古くから知ってるけど、不思議な関係」(平間)
──『ミア・ファミリア』は、閉店目前のバーで、2人の俳優(平間・水田)とマフィアの子分(植原)が、マフィアのボスの自伝を一晩で舞台化しようとするという、なんともユーモアにあふれた物語です。皆さんがミュージカルで初共演というのは、実に意外でしたね。
植原「そうなんです。こういう風な形での共演は初ですね」
水田「もしやるのなら、僕ら用に書いたオリジナルの新作が来ると思ってたんです。でも韓国ミュージカルの、初の日本版上演というのは予想外でした」
──そもそも3LDK自体、舞台ではなくイベントが結成のきっかけだったそうですが。
平間「もともとアミューズ(3人が所属する事務所)のハンサムライブという年末イベントで、たまたま3人で曲を歌ったら『何度でも見たい』とか『この曲も聴きたい』という声をたくさんいただいて。それで、この3人で『配信番組をやろうか』という話になったんです」
水田「その番組の名前が『3LDK』。3LDKで一緒に暮らす3人が、ゆっくり家でお話をする、みたいな番組でした。だから『この3人で組みます!』っていうのではなく、ファンの皆さんが『なんかこの3人、面白いね』と発見して、声を上げてくれてできたグループでした」
──周囲から求められたというのは、非常に幸せな結成の仕方ですよね。ただこの名前、エゴサーチがしにくくないですか?
植原「そうなんですよ、だいたい不動産が出てきます(笑)」
平間「(神奈川県の)平間駅とか」
水田「俺なんか絶対「水田(すいでん)の近くにある3LDK」が出てくる(一同笑)」
──そこは思わぬ弊害でしたね。今実際に、稽古に入ってみていかがでしょう(※取材は東京公演の開幕前)。
平間「いや、楽しいですよ。でもウワーッと楽しい! っていうよりは『本当に向き合ってんなー』という楽しさがあります」
水田「関係性が『もう(お互いを)知っている』というところからできるのは、すごくアドバンテージとして大きかったです」
植原「でもお芝居をずっと一緒にやっていたわけではないので、そういった意味では『稽古場に居る姿』というのは、とても新鮮ですね」
──「こいつ、こんな人間だったんだ」って驚いたりするところはありますか?
水田「技術的にはありますよ。みんなどんどん上手くなってるなあと思うし、こっちも頑張らなきゃという気にもなりますし。でも人となりは、ねえ?」
平間「全然意外性がない(一同笑)」
植原「お互い飾ってないからね」
水田「『なに、あいつ?』みたいなのが全然ない。そこはすごく安心できます」
──そもそも10年以上、ユニットが続くような間柄ですしね。やはりなにか、似たような価値観があったということでしょうか?
水田「逆にまったく似てなさすぎるから、バランスが取れているのかも」
植原「そうですね。でもそれをお互いがわかってて、そこを変に突いたりしない」
水田「わかんないけど、音楽や役者のグループというより、芸人さんに近いのかもしれないです。まったくバラバラのトリオだけど、カチッとハマるときは完全にハマる。かといって、距離感も近すぎないというのは、すごくあります」
平間「本当に無理しない3人ですね。休みの日に『ご飯行こうよ!』ってことは1回もないけど、ずっと繋がっている。古くから知ってる仲間だけど、無理して仲良くしなきゃいけないとは思わない。不思議な関係だなって、今言葉にして思います」
水田「ねえ。別にご飯に一緒に行かないからって、仲が悪いことでもないしね」
植原「俺だけは、ずっと1人で思ってるんですけど(笑)。『行きたいなあ』って」
■ 「この3人じゃなきゃ、音楽活動はできなかった」(水田)
──良い機会なので、お互いの「ここがすごい」と思う点を言い合ってもらえませんか?
平間「2人とも基本的に、自分に持ってないものを持ってますよね。うすうすそう感じてはいたけれど、この稽古期間を通して、自分ができないようなことを、絶対できる2人だなあ、すごいなあと思いますね。具体的に言うと、航生はツッコミが早い(笑)」
水田「それ、今大阪に来てるからじゃない?」
植原「早かったよね、今も(笑)」
平間「たっくん(植原)はキャラを作り上げるのが、本当に天才。今回もマフィアという、嫌われ役になりそうなキャラが、なんだかみんなに愛されるような感じになっていて。『ズルいなあ』と思うぐらい、いい役作りをしています」
水田「特に今回はコメディだから、コメディの面白さとか、説得力は本当にすごいです。壮一君は台本の読み方、役のとらえ方の深度がすごい。普通だったら『これ以上は進めないね』と思ったところから、さらにガガガガッ! と掘って行って『そこまで行けるんだ!』みたいになります。本当に発想力も演技の技量も、自分にないものを持っている2人です」
植原「いやあ・・・2人とも、すごく素敵な役者さんですよ」
水田「褒め合いモードだね(笑)」
植原「2人に言えることだけど、本当に真摯なんです。すごく役に向き合って決してあきらめないし、折れない。僕だけが挫折しているみたいな気持ちになることが、多々ありますけど(笑)、そんなときも引っ張っていってもらえる。向かっていく姿勢みたいなものが本当に力強いので、すごく頼れるなあと思います」
──あとは3LDKがあったからこそ身についた技術とか、個人活動でも助けになったことなどはありますか?
水田「音楽活動をするなんて、僕の人生の想像のなかにはなかったんです。この3人でアルバムを出すとか、MVを撮るとかって、ちょっと不思議な感じがしています。この3人じゃなきゃ、音楽活動はできてなかったでしょうね」
植原「僕は3LDKができる以前から、作詞・作曲の活動もしていたんですけど、ほかのユニットだったら『この人はここが不得意だから、こうしよう』という風になることがあります。それは決して、悪いことじゃないんですけど。でも3LDKはみんながイケイケで、なんでもすごくできちゃうので、そう考えることがまずない」
──ということは、やりたいことをボーンとぶつけられる。
植原「そう。だから『これ、ちょっとキツいんじゃないか?』と思っても、カッコいいと感じる方を『やっちゃいましょう!』って言える。そういうところに走っていけるのは、このユニットがあるからこそです」
平間「役者って、結構個人プレーじゃないですか? 基本的に自分との戦いというか、自分ひとりでがんばらなきゃいけない。でもそれプラス、3人で1つみたいな場所があるのは、すごく支えになりました。こっちがダメでも、あっちがあるという場所。ちょっと会話をして癒やされて、明日からがんばろうと思えるような場所ができたのは、心の安心材料だったと思います」
──休憩所みたいな場所が。
平間「そうですね。あとは振付とか(映像)監督とか作詞とか、役者だけではあまり発揮できない技術を発揮できる場所があるというのも、やっててよかったところです」
■ 「この作品を経て、どう思うかじゃないですか? 」(植原)
──3LDKは2020年8月に、無観客ライブ配信をされています。コロナ禍の頃は、多くのアーティストがライブ配信を試みていましたが、そのなかでもトップクラスで早い取り組みでしたよね。
水田「これこそ確実に、1人じゃできなかったことです。3人だからすぐに形になるものが作れる・・・振付も曲も、自分たちだけで作ることができるというのは、すごく大きかった。ライブ自体、3人でいろいろ案を出し合いながら作ったんですよ」
平間「『こういうコンセプトでやろう』とか、構成とかも、ZOOMでずっと話しあって。もちろんスタッフさんもいたんですけど、基本的に俺たちのアイディアをまとめてくれる、みたいな感じでした」
水田「卓也くんとコントもやったんですけど、台本があったわけじゃなくて、普通に2人で打ち合わせして作ったんじゃないかな?」
植原「そうだね。やりながら『こっちの方が面白い』とか言いながら。それで俺がソロで、真面目にカッコいい曲を歌ったあとで・・・」
水田「壮一くんがインしてくれたんだよ、タモリさんとして(笑)」
平間「『それではCMでーす』」って」
水田「そこでグッズのCMが。俺、家で自分で撮ってましたよ(笑)」
──芸達者な3人の、これまでの蓄積があったからこそ、実現できた企画でしたね。オリジナルのミュージカルも、そう遠くないうちに作れるのではないでしょうか?
植原「今回のこの作品を経て、どう思うかじゃないですか? これをやり切ってから、なにを感じて、何が待っているのかというところかもしれないですね。まずはこれを成功させないと考えられない(笑)」
水田「そうだね。今はそこよりもこれよ!っていう」
──今回の見どころを、あえて上げるとしたらどこになりますか?
平間「とりあえず、僕らがいろんな役をやりまくるところかな」
水田「登場人物は3人だけだけど、劇中劇があったりするので、演じるのは1人だけじゃない。本当にいろんな役を・・・それはもしかしたら性別を超えるかもしれないし、なんなら人じゃなくなるかもしれない(笑)」
植原「なにが起きるかわからないから、そこは楽しみですね」
水田「でも本筋はちゃんとありますので、ふざけてばっかりの舞台ではない。音楽もすごくミュージカルっぽい楽曲だし、そういうところも楽しんでほしいです」
──公演期間はちょうどクリスマスと丸かぶりですけど、クリスマスに観るにはちょうど良さそうな舞台という気がします。
植原「それはありますね。確かにちょうどいい」
水田「本当はね、ポップコーンとか食べながら見てほしい(笑)」
植原「そういうポップさはめちゃくちゃありますよ。しかも大阪は大千秋楽なんです」
平間「打ち上げの時間があるなら、航生のママに料理を作ってもらって(一同笑)」
水田「そうだね、うちの実家で(笑)」
植原「チキン用意してもらって」
◇
ミュージカル『ミア・ファミリア』大阪公演は12月23・24日に『梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ』(大阪市北区)にて上演。チケットは9500円、現在販売中。当日券の発売もあり。
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