【どうする家康】家臣の想いを1シーンで瞬時に伝えた仕掛け

数正が残した押し花が敷き詰められた箱
古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。9月3日の第34回『豊臣の花嫁』では、思わぬアイテムの出現で、家康&家臣団の天下取りの執着が消し去られ、彼らだけでなく視聴者も滂沱の涙を流す回となった(以下、ネタバレあり)。
■ どうする家康、築山殿の呪縛を解く
石川数正(松重豊)が豊臣秀吉(ムロツヨシ)の配下となったため、陣立てを改めねばならなくなった家康。折しも大地震が起こったために戦は回避されたが、秀吉は次々に人質を送って、家康を懐柔しようとする。
それでも上洛を拒む家康に、「ほかの人が戦なき世を作るなら、それでもよいのでは」と言って、数正が残した仏像を見せた側室・於愛(広瀬アリス)。仏像には、亡き正室・瀬名(有村架純)が築山で育てた花々の、押し花を敷き詰めた箱が添えられていた。

それは「瀬名のために天下を取る」と頑なになっていた家康や家臣団の心を溶かし、全員が秀吉への敗北を認めたうえで、ひとり悪役となった数正を責め立てながら涙にくれる。そして家康は「関白を操り、この世を浄土にする」と方向転換するのだった・・・。
■ 膠着状態を突き崩した、於愛の進言
数正が秀吉の手の内にある以上、勝ちが見込めないのは自覚しているはずなのに、それでもなお自分たちが天下を取ることに固執する。ここ最近は「どうする」というより「どうした家康」と聞きたくなるほど、周囲が見えてなかった家康と家臣団。それが前回の数正の出奔で水をぶっかけられたのに続き、この34回で完全に目を覚ますことになった。
そのきっかけとなったのは、まさかの於愛の方だ。「難しいことはわかりません」と前置きしつつ「これってお方様(瀬名)が本当に望んでいることですか?」という、誰もがうすうす気づきながらも言い出せなかったことを、直球で進言。普段評定に出ないからこそ、客観的な意見が言えるという立場に加え、「物知らずのふりをして真理をぶつける」という、素朴だけど超有効な技で、見事に膠着状態を突き崩すことに成功した。

これにはSNSも、「みんなが思っていたけど言えなかったことをサラッと言っちゃう広瀬アリスちゃん」「これは見事な諫言(かんげん)」「難しいことは分からないと言いながら、瀬名の望みの本質を突きつけてくれる。仏像も殿の命令に反してでも大事に取っておいてくれる於愛ちゃんがいてくれて本当に良かった」など、称える言葉が相次いだ。
■ 数正の想いを1シーンで瞬時に伝えた仕掛け
さらにファインプレーだったのは、数正が大事に持っていた押し花の発見。花を愛し、平和を愛した瀬名の思い出を、数正が家康同様に大事にしていたこと。また、自分の命と「悪女」の汚名を引き換えにして「徳川家」を守り抜いた瀬名のように、数正もまた「裏切り者」と言われても家康たちを守ろうとしたことを、この1シーンで瞬時に、そして劇的に伝えるとは、何という仕掛けの上手さであろうか。
SNSでも、「殿がやらなくても戦なき世ができる。数正はずっと築山とその思いを胸に、家康を守るために出奔したのか」「松潤家康と同じぐらい瀬名に対する感情が重すぎる」「数正が不器用にあの庭の花つんでるとこ想像すると泣けてくる」などの感動のコメントが。

そしておそらくは数正の思惑通り、家康たちが戦をあきらめて、それを「全部数正のせい」という体で罵倒するにいたっては、「こんなに悲しく愛にあふれた『アホたわけ』聞いたことない」「視聴者、数正に対する『あほたわけ』は『アイシテル』のサインと理解」「数正のあほたわけ! お前のせいで天下は取れないし戦は止まったし徳川は存続するしお前の大好きな殿はやさしい心を取り戻したぞ(号泣)」と、涙に暮れた言葉が並んだ。
今世紀に至るまで「悪女」と言われつづけた築山殿(瀬名)同様、「裏切り者」石川数正に対する世間の視点も、これで大きく変わってくるだろう。悪名を背負った人物の行動の裏の裏まで考えて、実は本人なりの愛や思いやりゆえの行為だったのでは? という驚きの展開にするのが、芸となりつつある古沢良太の脚本。この分だと、これから登場する石田三成や小早川秀秋なども、どのような「裏の真実」を提示してくるのか、楽しみになってきた。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。9月10日は放送休止で、17日放送の第35回『欲望の怪物』では、上洛した家康が秀吉から大歓迎を受けると同時に、のちに日本を真っ二つにする大戦を起こす相手・石田三成(中村七之助)との出会いも描かれる。
文/吉永美和子
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