京都みなみ会館、閉館1カ月前も攻め続ける「ミニシアター魂」

2023.8.31 21:30

京都みなみ会館のスクリーン(2019年8月撮影)

(写真5枚)

約60年にわたり京都で愛されてきたミニシアター「京都みなみ会館」(京都市南区)が9月末で閉館する。閉館まで残り1カ月となった現在も、関西初公開作品といった話題作の上映に力を入れている。

1964年にオープンした同館。ミニシアター系の作品上映や特集企画など独自路線を突き進み、「サブカルチャーに強い映画館」として親しまれてきた。しかしコロナ禍の影響で厳しい経営状況が続き、収益の見込みが立たないことから閉館を決断したという。

閉館が発表された7月上旬以降、SNSなどには惜しむ声が続出し、「閉館までに絶対行く」「京都に滞在してるのに出来るだけ行かなくてどうすると、京都みなみ会館さんへ」といった投稿が相次いだ。また、京都出身の女優・吉岡里帆も8月27日に自身のSNSを更新し、「ありがとう京都みなみ会館。」と同館への思いを綴っている。

■ 9月10日限定、話題の青春クィア映画『あの夏のアダム』関西初上映

閉館まで残り1カ月となった現在も、そのインディペンデント魂は失われることなく、9月10日には話題の青春クィア映画『あの夏のアダム』(アメリカ、2019年製作)を関西で初めて上映する(1日限定公開)。

『あの夏のアダム』の一場面

物語の舞台は2006年代のアメリカで、思春期の高校生・アダムが親から逃れるためにレズビアンの姉が住むニューヨークで夏休みを過ごすというストーリーで、クィアコミュニティをまっすぐに描き、2023年4月に東京で1週間限定公開された際には満席が相次いだ注目作品だ。

監督は、本作が長編デビューとなるリース・アーンスト。70歳の父親がトランスジェンダーであることをカミングアウトした家族の物語を描いたアメリカ発のコメディドラマ『トランスペアレント』(2014年製作)のプロデューサーをつとめた経験を持つ。リース自身もトランスジェンダーで、当事者に寄り添った内側からの視点で作品を描いている。

映画ファンからは「クィア、なかでもトランスにしっかりフォーカスをあてている映画を今日本で上映することは本当に意味があると思う」「見たかった『あの夏のアダム』が、みなみ会館で9月10日1日だけ上映。このまま行かずに閉館しちゃうのかな? と薄っすら思ってたので良かった」と評判も高い。

劇場の担当者は、「配給会社のノーマルスクリーンさんの映画は間違いない。まだチケットもあるのでぜひ劇場に来て欲しい」とコメント。上映時間は昼2時30分〜夕方4時5分。一般1800円、学生1000円ほか。当日はリース監督のオンラインQ&Aも実施予定されている(チケットは公式オンラインなどで発売中)。

そのほか、吉岡里帆・モトーラ世理奈・詩羽(水曜日のカンパネラ)が出演する映画『アイスクリームフィーバー』、鬼才・石井岳龍監督の5年ぶりとなる新作『自分革命映画闘争』、美しき天才と称されたグザヴィエ・ドラン監督の特集上映、世界三大映画祭のすべてで最高賞を受賞したロバート・アルトマンの傑作選などが予定されている。

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