色変化で話題のアート畳が京都に、畳職人がこめた思いとは?

「山田一畳店」(岐阜県羽島市)畳職人の山田憲司さん。構想段階から「人がどこに立つ可能性が高いのか」動線などを意識するそう
すべて同じ色の畳なのに、光の反射で2色の鶴に見える・・・そのすごすぎる職人技に、SNSでは11万以上の「いいね」がついたアートな畳。東福寺塔頭「光明院」(京都市東山区)の展覧会に在廊していたその作者、畳職人・山田憲司さんに、作品に込めた思いやこだわりを訊いた。
■ 同色なのに、なぜ異なる色に見えるのか?
取材日、拝観者の多くが「踏むのは忍びない」と縁から鑑賞していた鶴の畳は、2羽がダイナミックに羽を広げ、8畳間×2空間の広さに301枚を組み合わせて作られたもの。同色のイグサにも関わらず異なる色に見えるため、一歩ずつ進みながら、あるいは真反対の位置へ立ってみたりと、さまざまな角度から動画撮影を楽しむ人の姿が見られた。
実際に足を踏み入れると、緑があふれる奥の庭園と相まって、「映え」と表現するのも陳腐に感じられるほど濃淡のバリエーションが豊かな印象だ。デザインは庭園の枯山水を湧水に見立てて、そこに水を飲みに来た鶴(「光明院」の寺紋)。
そんな「借景の美」こそ制作者の意図で、畳職人・山田憲司さんは「外部空間と内部空間に共通のストーリーを作ることで、普段は分断されている境界を繋げられるのではないか」と思いついたそう。

さらに、黒と白をイメージした鶴は「悪と正義」の象徴でもあり、「例えば戦争のような対立もお互いの正義を争っていて、見る視点によって正義が変わる。でも中間から見ると同じ色に見えるかもしれない」というメッセージもこめられている。たしかに、この畳は時間帯や天候、そして立つ位置や30cm姿勢を低くするだけでも、さまざまな表情が見られるのが最大の魅力だ。

同色ながら変化が生まれるポイントは、畳の「織り目」にある。通常は縦・横の2種だが、鶴の畳では角度を0度・45度・90度・135度に設定することで、光の反射を利用しおおよそ4色に。今回の個展では、5種を組み合わせた円形のミニ畳『耀変地目』も登場し、光による変化が分かりやすいよう手でグルグル回せる仕掛けもある。
■ アート畳=「光の美しさを見る装置」かも
山田さんは岐阜県・羽島市で150年以上続く畳店の跡取りとして生まれた。しかし、畳へポジティブな印象はなく、2017年まで建築業界で働いていたという。その後、無職の時期に友人から車後部に子どもが寝転べる畳を敷きたいと依頼を受け、曲線のオリジナルを作るなかで、畳の新たな可能性を実感したという。
「前職で多くの資材を見ましたが、畳は世界的にも珍しい特殊なもの。もっとうまくデザインしていけばビジネスにつながるのでは」と、織り目の角度を変え、菱形・三角形などアレンジを広げていったそう。「次はどうなる?」という好奇心とともに2019年には4カ月かけて、目や歯の色変化が目を引く龍の顔を制作。これを機に、新潟のお寺や個人宅からも注文が入り、アート畳が注目されるようになった。
畳の魅力について「アートは壁にかけたり、空間に置くものが多いですが、平面だからこそお客さんが踏んだり、なかに入り込めるおもしろさがありますよね。そして、これ自体が『光の美しさを見る装置』なのかなと。普段は光は当たり前にあるものですが、光への感性も刺激できたら」と自身も新たな概念をみつけたそう。

神奈川からこの個展を訪れたという男女2人組は、「東京の個展で龍を見たときは室内照明だったので、自然光だとさらにいいですね。鶴の実物はこんなに大きく、お寺の静かな雰囲気と合って迫力があります」と鑑賞を楽しんでいた。
現在は六角形の和紙素材の畳を敷き詰め、人の顔などドット画をデザインできる『無限畳』も展開中の山田さん。今後について、「今は太陽光だけで色を変化さる唯一無二の畳ですが、円形を使って角度を無限に微調整したり、染色との組み合わせも」と話すだけに、あっと驚くような畳の誕生に期待が高まる。
「光明院」での個展『鶴の展覧会』は7月30日まで(寺院拝観料・300円)。拝観時間は朝7時~日没前まで。
取材・文・写真/塩屋薫
『鶴の展覧会』
『鶴の展覧会』
期間:2023年7月1日(土)~30日(日)
会場:東福寺塔頭「光明院」(京都市東山区本町15-809)
時間:7:00~日没前
拝観料:300円
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