滋賀・三井寺の「世界最古のパスポート」、ユネスコに登録決定

2023.5.27 06:45

滋賀県・大津市の「三井寺(長等山園城寺)」の表門

(写真7枚)

滋賀県大津市の「三井寺(長等山園城寺)」が所有する国宝『智証大師円珍関係文書典籍(ちしょうだいしえんちんかんけいもんじょてんせき)』と『五部心観』が5月25日、ユネスコ「世界の記憶」に登録された。

「世界の記憶」とは、「世界遺産」「無形文化遺産」に並ぶ遺産事業のひとつとして国際協定・ユネスコが実施しているもの。1992年、後世へ語り伝えるべき文書や写真を残すために創設され、「世界記録遺産」とも呼ばれる。これまでにオランダの『アンネ・フランクの日記』やイギリス&アメリカの『ウィリアム・シェイクスピアの生涯の文書的痕跡』など、数々の貴重な資料が登録されてきた。

今回登録されたのは、9世紀における日本と中国の文化交流の様子が伺える史料群。中国の王朝・唐の制度を説明する文書が、原本でほぼ完全な状態で残されているという。

なかでも注目なのは、唐の役所から発行された当時の通行許可証「過所(かしょ)」。同寺院が所有する智証大師・円珍の持ち帰った2通が世界で唯一の実例とされ、「世界最古のパスポート」とも言われている。

今回「世界の記憶」に国際登録された国宝「尚書省司門過所」と「越州都督府過所」。中国・唐が外国人向けに発行した査証で、現存するのは今のところこの2通のみ

「世界の記憶」国際登録に向けては、2015年に「過所」2通のみで選考に挑むも惜しくも落選。2度目のチャレンジ(2022年11月)では、「東京国立博物館」と協力し、「日本と中国の文化交流の歴史」をアーカイブで見せる資料群として申請。今回、8年越しの念願が叶って見事登録が決まった。

園城寺長吏の福家俊彦(ふけ・しゅんげん)氏は、「文化を伝えるという重大な使命を痛感している。これを機に智証大師円珍をより広く知ってもらい、日本の歴史のなかで大きな意味をもつ仏教文化に今一度理解を深める機会が提供できれば。また、滋賀県大津市が育んできた貴重な歴史や文化を世界にアピールし、地域に貢献したい」と意気込む。

今回の登録を記念し、同寺院の「三井寺文化財収蔵庫」では特別公開を実施。「過所」を含む国宝5点が展示される。入山料おとな600円に加え、プラス300円で見学が可能。期間は7月2日まで。その後は、内容を一部変更して9点を「大津市歴史博物館」(滋賀県大津市)にて7月30日まで展示される。

取材・文・写真/宮口佑香

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本