なぜ人々はドミノピザに夢中に? 業界を震撼させる企画作り

2023.4.1 20:15

「ドミノ・ピザ 浪速元町店」(大阪市浪速区)

(写真6枚)

「100円企画」や「1枚600円ピザ」など、抜きん出た企画力で日本のピザチェーン界を奔走する「ドミノ・ピザ ジャパン」(代表:ジョシュア・キリムニック)。なかでも「ピザを1枚買うと2枚無料」(2022年6月)は、当時「1枚無料」が一般的だった業界に衝撃を与え、さらなる価格競争の火種となった。今回はそんな熱狂の企画の裏側を取材した。

現在CEOのマーティン・スティーンクス氏をはじめ、ベン・オーボーンCOO、また深澤勝CPOに、「人々の心を掴む企画、そもそもどうやって生まれるのか?」という質問を投げかけた。するとおもてなしの心に「おひとりさま需要」の高まりといった、ただのキャンペーンでは終わらない背景が浮き上がってきた。

■ 幹部も「現場」でピザ作り、初心は忘れまい

1985年、日本初の「宅配ピザ店」として1号店を東京・恵比寿にオープンさせた「ドミノ・ピザ ジャパン」。2023年4月現在の店舗数は、あと少しで1000店舗に到達する。

「ドミノ・ピザ ジャパン」のマーティン・スティーンクスCEO、慣れた手つきで生地作りに励む

「今はまだテレビやLINEでドミノ・ピザの情報を見ても、注文できない地域に住んでいる方々もいる。そういった小さな村・街でもお届けできるような店を作るのが夢です!」と、ピザの生地作りを終え、そう話すのはマーティン・スティーンクスCEO。というのもインタビューしたこの日は、同店の幹部が店舗スタッフに替わって「ピザを焼く日※」なのだ。

ベン・オーボーンCOOは、「今頃スタッフは、有給休暇で楽しい時間を過ごしていることだと思います。この店舗のスタッフは、クリスマスの期間、年末年始と頑張ってくれて、お客さまからの感想もすごく良かった。デリバリータイムでも優秀な結果を残してくれたので、この休暇はねぎらいの気持ちです」と笑顔を見せる。

(左から)ベン・オーボーンCOO、マーティン・スティーンクスCEO、深澤勝CPO

幹部たちがこうして定期的に店舗に入り、実際のオペレーションをおこなうことでビジネス面でも効果を生むというが、その働きっぷりは非常に和気あいあいとしており、マーティン氏は「1年で1番楽しい瞬間だよ!」と話す。

■ 大反響の「2枚無料」、次なる挑戦は期待値もアップ?

そんな社内体制から生まれた企画『デリバリーLサイズピザを買うとMサイズピザ2枚無料!』は、予想を超える反響から、一部では急遽中止を余儀なくされ、公式ツイッターがお詫びする騒ぎに。この画期的な発想のきっかけはなんだったのか?

2022年6月に初めておこなわれた『デリバリーLサイズピザを買うとMサイズピザ2枚無料!』

「今もそうなのですが、日本はインフレの真っ只中。価格がどんどんと上がっていってるなかで、お客さまは価値の高いものを選ぶ傾向になってきました。6月におこなった企画は画期的で、業界の水準をひとつ引き上げることができたのではないかな、と思います」と、マーティン氏は分析する。

前述でも触れたがピザチェーンでこれまで親しまれていたのは、「お持ち帰りで1枚無料」。このメジャーな概念を覆す形でスタートしたため、今後引き戻れないのでは?というSNSでの声も少なくはなかった。「1枚無料じゃ満足できない」「2枚無料の常連になってしまった」など。

3月初旬、「ドミノ・ピザ 浪速元町店」で店舗オペレーションをおこなった幹部たち

これに対して深澤勝CPOは、「確かに2枚付けるのが1番お買い得なので、それしか買わないようになってしまう気はしますが、これはお客さまが我々のピザを初めて食べていただく機会になる。ピザは牛丼チェーンなどに比べると、案外1年間に食べる回数が少ないんですね。なのでこの企画はそんなお客さまとのコミュニケーションのきっかけになれば」と、サービス精神を忘れない。

マーティン氏も、「(戻れないのでは? という声に対し)必ずしもそうとはいえない。この企画はどちらかというと大勢で食べるためのものだけど、最近では人とシェアしない『マイドミノ』ができました。いわゆるおひとりさま向けの商品です。実はこの市場が日本では特に伸びており、企画によっては『2枚無料に戻すことが難しい』とはならないと思います」と断言。大人数での「シェア」が当たり前だったピザが、コロナ禍を経たことで、「自らが自由に楽しむもの」へと進化を遂げたのだ。

■ ピザは「シェアしなくていい」、コロナ禍で変わった価値

そういった背景から同社では、他人とピザはシェアはしないが、時間は共有できるというテーマのもと、カスタム可能な「マイドミノ」企画を2月からスタートさせた。

人気急上昇中の「マイドミノ」

「マイドミノ」とは、メインのピザ1品にサイド2品選ぶことができるボックスセット(930円〜)で、ベン氏は「ピザを食べるときは、必ずしも『誰かと食べたい』とは限らない。ときにはお客さまからアイデアをもらうこともある」と一言。これまで届きそうで届かなかった「別にシェアしなくていい」という未踏の地に到達したのだ。

今後のキャンペーンに関しては、「企画はサプライズなので詳細は言えないが、今後もいろいろありますよ!」とマーティン氏は匂わせる。「こんな企画がほしい」「こんな味がほしい」と生の声を大事にする同店。なにか新たなアイデアが思い浮かんだ場合、我こそは!と近くの店舗に相談して欲しいとも。時代とともに変貌を遂げる「宅配ピザ」の変幻自在な在り方、今後もきっと驚かされることだろう。

※大阪の「浪速元町店」ではアルバイトを含む全クルー約30人にCEO特別賞として「特別有給休暇」が与えられた。

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