今川家の滅亡が家康を変えたのか? 腹の座ったラストに称賛【どうする家康】

2023.3.29 07:30

ある人物を見つめる徳川家康(松本潤)(C)NHK

(写真2枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。第12回『氏真』では、家康と兄弟のように育った今川氏真との直接対決が描かれ、2人の関係がひとつの決着に至る様に、多くの視聴者が涙した。(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、氏真との対峙

駿府を武田軍に攻め落とされたあと、懸川城に籠もった今川家当主・氏真(溝端淳平)。複雑な気分で攻撃を仕掛ける家康だったが、氏真の抵抗は予想以上で、4カ月経っても落とせなかった。武田信玄(阿部寛)は甲斐と遠江の境に兵を送り、家康に氏真の首を取るように急かす。

総掛かりの戦いを覚悟した夜、懸川城の潜入に成功した家康と対峙した氏真。槍の勝負を挑むも家康にあっさり破れると、誰からも認められなかった絶望を訴えながら、自害を試みる。しかし家康の必死の阻止と、正室・糸(志田未来)の説得の甲斐があり、糸の実家・北条家に身を寄せる決意を固めるのだった。

しかし氏真の首を取らずに逃したことで、今川家攻略の密約を結んでいた信玄は「約定破り」だと激怒。武田との緊張関係が一気に高まるが、家臣たちが「どうする?」と戸惑うなか、思案する家康の表情は明らかに以前とは違うものになっていた・・・。

■氏真と糸、史実通りのおしどり夫婦に?

「家康を人質にしただけの家」という感じで、過去の戦国大河を見渡しても、家康との関係がそれほど深く描かれることがなかった今川義元・氏真親子。しかしこの第13回は、完全に今川氏真の主役回となり、義元の知られざる過去の発言まで明らかに。数少ない今川家贔屓の視聴者が、感涙にむせんだり快哉を叫ぶような回となった。

SNSでも「今川家の滅亡をこんな描き方した大河は無かったんじゃないか」「氏真回が神過ぎる」「やっと大河ドラマで今川氏真が真っ当に描かれたことへの感謝しかない」「今川家スピンオフ待ってます」など、すっかり今川推しになったという人々の声があふれた。

妻・糸(右・志田未来)から北条に身を寄せるよう勧められるも、耳を貸さない氏真(溝端淳平)(C)NHK
妻・糸(右・志田未来)から北条に身を寄せるよう勧められるも、耳を貸さない氏真(溝端淳平)(C)NHK

氏真については別途濃厚に取り上げるとして、ここでは今回初登場の氏真の正室・糸(通称 早川殿)に触れておこう。武田・北条・今川が手を結んだ「三国同盟」の証として、お互いの家の娘たちを輿入れさせる・・・という理由で結婚した2人。

非常に夫婦仲がよかったことが伝わっているが、今回は氏真がやや疎ましく思っているという状況に。しかし糸が亡き義父・義元の言葉を伝えるとともに「武将じゃないあなたの方が好き」的な言葉で、一気に形勢逆転して、史実通りのおしどり夫婦に一歩近づいた。

SNSでも、「いい奥方に恵まれてるよ、氏真さん」「あの状態から振り落とされずついてきた糸様ガッツがすごい。これは戦国時代を生き延びる女」「糸様つよくて賢くてすてきだったし、演技はさすがの志田未来ちゃん」など、演じた志田の健気な演技も込みで、糸を称賛&今後を応援する声が相次いだ。

■家康の変化、まっすぐに前を見据える目

そしてこれまでは、大きな決断のたびに「どうする?」とオロオロしたり、少なくとも目が泳いでいた家康。しかし戦国大名としての今川家が滅びる瞬間に立ち会い、自分は当面戦国の泥をすすって生き延びる覚悟を固めたためか、最後に「武田と戦になるかもしれない」と聞いても、その目はまっすぐに前を見据えていた。これは非常に大きな変化だ。

SNSでも「氏真との別れから、家康は腹が座ったというか、彼の開眼が始まるのかな。ラストの松本潤さん、いい顔してた」「『どうしてやろうかな?』くらい思ってそうな最後の眼差し」などの感嘆の声が。全体の約4分の1が終わって、いよいよ「神の君」に一歩近づいたか? 次回の頭で「いや、やっぱりどうしよう・・・!」なんて、逆戻りしていないように祈ろう。

ちなみに、戦国大名としての今川家はここで途絶えるが、氏真自身はそれまで会得していた教養や公家社会とのコネを活かして、家康のブレーン的な存在にトランスフォーム。さらには晩年は家康と茶飲み友だちになるというから、氏真と糸の再登場&長期出演の可能性は非常に高い。どんな形で再び家康の前に現れるのか? そのときはキャラ変してるのか? 期待を大いに膨らませて待っておこう。

『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夕方・6時からスタート。第13回『家康、都へゆく』では、織田信長(岡田准一)が擁立した将軍・足利義昭(古田新太)の命で上京した家康が、明智光秀(酒向芳)や茶屋四郎次郎(中村勘九郎)など、そのあとの命運を握る人々に出会うさまが描かれていく。

文/吉永美和子

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