家康のタヌキ親父が実は入れ知恵という解釈、なんという奇策【どうする家康】

2023.3.7 07:30

妻の瀬名(有村架純)と手を取り合う家康(松本潤)(C)NHK

(写真2枚)

松本潤が徳川家康を演じ、その厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。第9回『守るべきもの』では、一揆方についた家臣・本多正信の「これは一向宗側に付くしかない」と思われる哀しい過去がわかり、一気に視聴者からの同情が集まった(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、過ちを全て引き受ける

家康を裏切り、一向宗側の軍師となった本多正信(松山ケンイチ)。その戦いの日々のなかで、物取りに遭って生き別れた幼なじみ・玉のことを思い出していた。8年前に大久保忠世(小手伸也)と盗賊の根城を攻撃した際、遊び女となっていた玉(井頭愛海)と遭遇。襲撃で瀕死の重傷を負った彼女は「早う仏様のもとに行きたい」と、念仏を一心に唱えて絶命したのだった。

そんななか、次第に劣勢となった一揆方はついに家康と和睦し、一揆は終結。家康は一揆方に付いた家臣たちをおとがめなしとする。しかし正信は、切腹でも打ち首でも受け入れる覚悟で「過ちを犯したのは殿だ。お前が民を楽にしてやれるのなら誰も仏にすがらずに済む。それをなさずして、民から救いの場を奪うとは何事じゃ!」と強く意見する。

それを聞いた家康は「わしはずっと悔いておる。過ちを全て引き受け、前へ進む!」と宣言し、正信は三河から永久追放に。だが、家康が一向宗側に出した和睦の条件「寺を必ず元通りにする」を反故にすると察した正信は、「寺があった場所は、元の元は野っ原なり。元の野っ原に戻す」という悪知恵を、家康に置き土産として去るのだった・・・。

■本多正信の行動の理由が一挙に明かされた

松平元康に秘策を打ち明ける本多正信(松山ケンイチ) (C)NHK
『どうする家康』第5回より、松平元康に秘策を打ち明ける本多正信(松山ケンイチ) (C)NHK

史実通り一揆側に付いたとはいえ、ほかの家臣たちのように、信心深いから一向宗の味方をしているようには見えないんだよな~? と思わせた、松山ケンイチ版の本多正信。しかし薄幸の幼なじみの女性をはじめとする、虐げられた庶民たちの拠り所だった場所を奪おうとした家康への、純粋な憤りであったことが、今回で一挙に明かされた。

まずお玉との悲劇について、SNSでは「幼なじみが最期にすがったものを護りたかったからと言う得心がいく落ち」「いい加減そうに見えるキャラに重い過去を背負わせると皆惚れてしまうとわかって正信過去を出してきていますねNHKさん」「これまで口から出まかせ並べて軽薄キャラ作りしてたのも、このためか」と、称賛の声が続々と。

さらに家康に対して「間違っているのはお前だ!」と、激しい心境を吐露するシーンでは「正信の正論砲がド正論すぎてヤバい」「この大河における正信は、動乱に巻き込まれ命を散らしていく無名の民の代弁者なのですね。一向一揆に与するのも信仰心ではなく、民の怒りを代わりに主君へと叩きつけている」と、こちらも共感の言葉が並んだ。

■家康の「タヌキ親父」ぶり、実は入れ知恵

とはいえ、最後に寺を更地にするための屁理屈を、ちゃっかり授けてから退場するというのが、さすが松ケン版の正信。この「元の状態に戻すって、更地にするってことよ?」という主張は、家康の「タヌキ親父」ぶりを示す最初のエピソードとして知られているが、まさかそれを一向宗側にいたはずの正信の入れ知恵にするとは、この提案に負けない奇策だろう。

SNSでも「本多正信の発案だったってことにして、家康自体は相変わらず純朴な青年キャラを維持した」「正信ならそれくらいやりそうだなと思えるから上手い解釈だなぁ」「最大の置き土産『屁理屈』を残していった本多正信、本当憎いことするじゃん。忘れられなくなっちゃうよこんなん・・・」などの声が上がっていた。

ちなみに正信は、多くの視聴者からの再登場要望に応えて・・・というわけではなく、史実では数年後に許されて、その後長く家康の参謀を務めることになる。ただその時期やきっかけが明確ではないので、古沢良太がどのようなサプライズを仕掛けるのか、大いに期待したい。個人的には、伊賀越えの時に「あれー殿? なにやってんですかー?」ってノリで、ひょっこり現れてほしいなと願っている。

『どうする家康』は、NHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第10回『側室をどうする!』では、母・於大(松嶋菜々子)からの要望で、家康が側室を迎えようとするところが描かれていく。

文/吉永美和子

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