「さすが」京都の芸大、古代文字のレポートに教授の反応は?

2023.2.14 07:15

パピルスに古代エジプト文字で書かれたレポート (画像提供:@tajimaxG)

(写真3枚)

「『去年は木簡に万葉仮名で書いてきたのがいた』と授業で言ったら、今年はパピルスに古代エジプト文字で書いたのがきた。読めねえ」というキャプションとともに、古代エジプトの象形文字で書かれた書物の写真を載せたツイートが話題となっている。

これは「京都市立芸術大学」(京都市西京区)の田島達也教授によるツイートで、実は学生の課題を紹介したもの。コメント欄には「さすが芸大、レポートと芸術の境界がどんどんとけている」「自由だ」「執念が凄い」など、芸大ならではのユニークな提出物に関心する声が続々。このクセの塊のようなレポートを受け取った田島教授に話を聞いてみた。

■ 「自分の思うことを自由に表現してほしい」クセ強レポートができた背景

──このレポートは、どのような授業の課題として出されたのでしょうか?

これは、大学院修士課程向けの「日本絵画史特論」という授業です。私は日本絵画史が専門なので、歴史上の有名画家が日頃どんなことを考えていたのかを、手紙や日記を通して学ぶという内容になっています。

絵だけ見ていたら立派な人のようだけど、実際にはお金に困って作品を高く売りつけようとしていたり、逆に作品がなかなかできなくて謝っていたり、結構人間臭いんですよね。そういう芸術家の心の叫びを受け止めて、芸術家の卵である君たちも自分の思うことを自由に表現してほしい、という課題です。

──おもしろそうな授業ですね。学生たちの自由でクリエイティブな表現が光るレポートは、芸大ならではだと感じました。パピルスと言えば、古代エジプトで使われていた紙ですよね。紙好きの方からは、「パピルスってそもそも現代で売ってたのか」「実物見たことないから触ってみたい」というコメントも寄せられています。

これを言ってしまうとありがたみがなくなるのですが、ネットで検索すると普通に売っています。本人もこれは作ったのではなく買ったものだと言っていました。

──意外と簡単に手に入るものなのですね。レポートは古代エジプトの象形文字で書かれていたそうですが、学生は一体この言語をどこで習得したのでしょうか?

これも本来の言語として使っているというより、個々の文字とアルファベットとの対応表をもとにローマ字として書いているようです。

──ローマ字を古代エジプト文字に変換する対応表があるんですね、知りませんでした。ツイートでは「読めねぇ」と、困惑されていましたが、最終的このレポートを読むことはできましたか?

種明かししてしまうと、パピルスで困惑したのですが、下に日本語訳の紙も付いていました。やさしい。

■ 「『効率の良いやり方』の真逆をいくのが芸大生の真骨頂」

──ほかにも、綺麗に絵を描いた卵の殻のなかにレポートを入れて提出する方や、キャンバスの切れ端で提出された方がいたそうですが、みなさん普段から皆さんこんなに個性的なのですか?

公立の大学であり、共通テストの配点も高めなので、芸術大学のなかでは勉強が得意な人が多いですね。だから普段はおとなしいですが、ひとたびスイッチが入ると、人と違った方向に真面目に突き進んでいくので、やり過ぎな成果に至るようです。

──授業で、「去年は木簡に万葉仮名で書いた生徒がいた」とおっしゃったそうですが、これが学生たちの闘争心に火を付けた気がします。

「おもしろい作品を作れ」と指示するより、「別に普通の手紙でいいんだけどね。ああ、でも去年の手紙は意外性があって驚いたよ」って言われる方がやりやすいみたいですね。本職の作品作りに魂をすり減らしている時期なので、やらなくて良いことの方がアイディアが出るのかも。

──教授の困惑する顔を楽しみに、学生たちがこの課題に取り組んでいる姿が想像できます。古代エジプト文字で書かれたレポートを受け取ったときはどう思いました?

アイディア自体は、そう来たか、というくらいですが、結構な分量だったのでこれにかけた労力の重みを感じました。「効率の良いやり方」の真逆を行く芸大生の真骨頂だなと思います。

──コメントには「さすが芸大」との声が上がっていますが、世間のリアクションについて田島教授の感想をお聞かせください。

「大学でふざけて遊んでんじゃねえ」という批判もあるかと思ったのですが、ほとんどなかったですね。こういうことが自由にできて、しかもほめられるって最高だなって思います。

ほかにも、田島教授のツイッターでは学生たちによるユニークな提出物が数々紹介されている。今後も、真っ直ぐにおかしなことを追求する「京都市立芸術大学」の学生に注目したい。

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