【罠の戦争】3つの顔を自然に演じ分ける草彅剛の怪物っぷり

2023.1.17 22:00

ドラマ『罠の戦争』(カンテレ)のワンシーン

(写真3枚)

草彅剛主演のドラマ『罠の戦争』。2015年1月~3月に放送された『銭の戦争』、2017年1月~3月に放送された『嘘の戦争』に続く「復讐シリーズ」最新作に当たるもので、政界を舞台に議員秘書・鷲津亨の壮絶な復讐劇が描かれる。

1月16日に放送された第1話では、鷲津(草彅剛)が命をかけて尽くしてきた内閣府特命担当大臣の犬飼(本田博太郎)に裏切られ、犬飼と彼の背後にいる人物たちに復讐を誓う姿が描かれた。

実際に放送を見るまでは、政界が舞台では若い視聴者には取っ付きにくいのでは? とも思っていたが、それは杞憂にすぎなかった。スピーチ作成から失言問題のクレーム対応まで、時間を問わず上からの指示に翻弄され、奔走させられる鷲津の姿は、業界の違いを超えて、視聴者が親近感を抱かずにいられないもので、議員秘書ってこんなんなんだ!と目からウロコが落ちると同時に、鷲津を襲う理不尽に憤らずにいられなくなる。

ドラマ『罠の戦争』(カンテレ)

実在の事件や人物を彷彿させる設定。人のための政治が人を欺き、勇気をふりしぼって上げた声も見えない権力によってあっけなく握り潰されるという構図は、2022年にカンテレの同枠で放送された長澤まさみ主演の『エルピス』にも連なるもので、製作陣の覚悟と心意気に武者震いが走る。

もちろん、エンタテインメントとしての質も想像以上。6年ぶりの民放ドラマ主演作となる草彅は、もともと演技力には定評がある人だったが、本作では「有能な秘書」と「家族思いの父親」、そして「復讐者」という3つの顔をなんとも自然に演じ分けており、俳優としての成熟&怪物っぷりにワクワクさせられる。なかでも、犬飼の決定的な仕打ちに鷲津が復讐を誓うシーン。抑制の効いたエモーショナルな演技には、思わず息を呑んだ。

貫禄たっぷり、片平なぎさが演じる厚生労働大臣・鴨井ゆう子(中央)

妻役の井川遥、内閣総理大臣役の高橋克典、民政党幹事長役の岸部一徳、厚生労働大臣役の片平なぎさ、秘書見習い役の杉野遥亮、私設秘書・蛍原梨恵役の小野花梨など、適材適所なキャスティングも秀逸で、「あいつらに教えてやる、踏みつけられたらどんなに痛いか」「弱い奴には弱いなりの闘い方がある」といったキャッチーな決め台詞も、復讐ドラマのカタルシスを盛り上げる。

また、ドラマ主題歌が香取慎吾×SEVENTEENの『BETTING』というのも心憎い。第1話では、犬飼の懐刀である政策秘書・虻川(田口浩正)の悪事を暴いた鷲津だが、今後はどんな罠を仕掛けていくのか? 鷲津にとっての真の「敵」とは誰なのか? 2話以降も目が離せない。

文/井口啓子

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