羽化の瞬間に立ち合える!? 伊丹市昆虫館の「さなぎツリー」

2022.12.3 07:15

一見さなぎとはわからない…「伊丹市昆虫館」のさなぎツリー(写真提供:伊丹市昆虫館)

(写真3枚)

約1000匹の蝶、外国生まれのカブトムシやクワガタムシなどをはじめとし、虫の展示・飼育をおこなう「伊丹市昆虫館」(兵庫県伊丹市)。そんな昆虫館でクリスマスシーズンにおこなわれる展示「さなぎツリー」をご存知だろうか。

クリスマスツリーに、オーナメントのような形で蝶の「さなぎ」を飾り、羽化するまでの過程を見守れるというユニークかつ生命の息吹を感じられる同展。コロナ禍になってからは「羽化するにつれツリーの前に人だかりができるので密になりやすい」という理由から休止していたが、2021年より再開し、今年は11月23日より開催中だ。

虫好きな人にもそうでない人にも楽しめる!? 「さなぎツリー」の魅力を、同館の担当者に訊いた。

■ 30匹のさなぎを展示、実は20年以上続く名物企画

──オーナメントと思いきや「さなぎ」でびっくりしました。ツリーに展示されているさなぎの種類を教えてください。

当館で飼育している蝶のなかから、「オオゴマダラ」「リュウキュウアサギマダラ」「アサギマダラ」「スジグロカバマダラ」「ツマムラサキマダラ」の5種類、約25~30匹のさなぎを展示しています。

──そんなにたくさんのさなぎが! ちなみに、蝶に影響はないんでしょうか?

蝶のさなぎには2種類あるのですが、「垂蛹(すいよう)」という垂れ下がる形のさなぎなら、ツリーに吊り下げても蝶に負担がかからないようになっているんです。

間近で観察できるため、じっくりと眺めたり写真を撮られている方も多いとか(写真提供:伊丹市昆虫館)

──なるほど。そもそも「さなぎをツリーに飾る」というアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

展示は「さなぎの色や形の不思議さなどをじっくり見てもらいたい」という考えから、2000年ごろからはじまりました。通常、さなぎはケースに入れ展示していますが、そのころ季節に応じた展示に力を入れていたこともあり、企画が持ち上がった時期にあわせて、クリスマスツリーにさなぎを展示するようになりました。

──もう20年以上続いているんですね。「生きもの」を展示するうえでの難しさや工夫などあれば教えてください。

展示会場である「学習室」は昼間は暖房が入っていますが、夜間は温度が下がります。温度管理されている飼育室のさなぎはだいたい早朝に羽化しますが、学習室は夜間に気温が下がるため、羽化する時間が開館時間にあたるんです。

──そうなんですね。

数年前までは温室で展示していましたが、学習室で展示するようになって羽化の瞬間を見てもらいやすくなりました。最初に展示した日から毎日羽化が観察できるように、さなぎになった日をランダムな状態で吊るしてあるので、成長の段階も観察できるようにしています。

さなぎになりたての姿と、羽化直前の姿は全然違って見えるので、そこにも注目してもらえるようにしています。最近では、さなぎの成長過程やさなぎの中がどうなっているかをCTスキャン画像で解説したパネルを設置するようになりました。

11月23日、来館者が見守るなか、「アサギマダラ」のさなぎが羽化!(写真提供:伊丹市昆虫館)

■ キレイなあまり「さなぎ」と気づかれないことも…

──「羽化」を見せるためには展示時期の調整も大事になるんですね。お客さんのリアクションが気になります。

さなぎがとてもキレイなので、一度見ても気づかれないことがあります。「生きた本物のさなぎです」と記載していても、気づかないお客さんもいるほど。なので、学習室に常駐している交流員に解説をお願いしています。たいていのお客さんは「本物のさなぎ」と知ると大変驚かれますね。

──せっかくなら羽化の瞬間を見たいところ・・・。さなぎから羽化まで、どのくらいの期間があるんでしょうか?

蝶の種類により若干の違いはありますが、平均10日ほどかかります。羽化の瞬間とタイミングが合わず、1度の来館では見ることができない場合もあり、リピーターの方もいらっしゃるようです。とにかくお客さんには喜んでいただいており、だからこそ長年続いているのではないかと思います。

『さなぎツリー』は12月26日まで開催中。美しい蝶の羽化を目撃したり、さなぎの観察をしてみたい方は、ぜひ立ち寄ってみては。

取材・文/つちだ四郎

『プチ展示 さなぎツリー』

期間:2022年11月23日(祝・水)〜12月26日(月)
住所:伊丹市昆虫館(兵庫県伊丹市昆陽池3-1 昆陽池公園内)
時間:9:30〜16:30 ※火曜休館
料金:大人400円、中高生200円、3歳~小学生100円、0~2歳無料

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