世界的アニメーション監督・新海誠が描く、新海誠の世界 [PR]

2022.11.11 20:00

新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

(写真4枚)

 新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』のファーストカットの空を観て、ああこれだ、新海作品の空だと思った。そして、この空の下で、あるいは上で、新たな冒険が始まるのだとワクワクした。

 新海監督にとって初の劇場公開作となった2002年の『ほしのこえ』は、25分の短編だけれど、監督・脚本・作画・美術・編集・撮影などの作業を1人で手掛け、そのクオリティの高さで観た者に衝撃を与えた。以来、新海監督はこれまでに7本の中・長編劇場アニメーションを発表している。

◆インドでは公開を求める署名運動まで。

 そのどれもがアニメファンの間では名作、あるいは作家性の高い野心作として語り継がれているが、なかでも2016年公開の『君の名は。』は、普段あまり映画館に足を運ばないライト層からも多大な支持を得て、世界興行収入400億円超を記録。『文化庁メディア芸術祭アニメーション部門』大賞をはじめ、多くの映画賞にも輝いた。

世界的ヒットとなった映画『君の名は。』©2016「君の名は。」製作委員会

 さらに2019年の『天気の子』も国内観客動員数1000万人を超え、米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表に選ばれたほか、前作『君の名は。』の規模を上回る世界140の国と地域でも公開(インドでは公開を求める署名運動が起こり、日本のアニメーション映画が初めて公開された)。それはまさに、作品のクオリティに裏打ちされた揺るぎない結果として、大きな話題と注目を集めた。

◆ガール・ミーツ・ボーイで始まる新海作品。

 新海作品では、同じモチーフが繰り返し描かれる。物語は少年と少女の出会いから始まり、『言の葉の庭』(2013年)では少年と歳上の女性だったけれど、多くの場合は10代半ばの思春期の2人で、印象としては少女が能動的に少年と出会う、ガール・ミーツ・ボーイの方がより強い物語になっているように思う。

 出会った相手は、「この人さえここに居てくれたらいい」「この人じゃなきゃダメ」、そんな絶対的な存在だ。なのに、どちらかが忽然と居なくなってしまう。残された者は喪失の痛みを抱えながら必死で相手を探し、再び出会うため、取り戻すための旅に出る。

◆時間・場所・次元を超える「距離」の先に。

 その旅はときとして、時間や空間、次元すら超える壮大なものとなる。それは主人公の2人を隔てる遥かなる「距離の物語」であり、新海作品における最大のテーゼ(命題)でもある。その底には届きそうで届かないものへの「憧れ」と「切なさ」がずっと横たわり、主人公には相手を探すこととともに、果たさなければならない役目が与えられている。

映画『秒速5センチメートル』予告

 たとえば、2004年の『雲の向こう、約束の場所』では、南北に分断された国境と、眠り続ける少女の夢と現実。2007年の『秒速5センチメートル』では、惹かれ合う男女のすれ違う心の距離。そして、『君の名は。』では、主人公・瀧が3年前の三葉を救うため奔走する。新海監督は、その距離を乗り越えた先にある、新しいなにかを描き続けている。

◆新海誠が描くのは、絶望ではなく希望。

 最新作『すずめの戸締まり』でも、この構造は踏襲されている。主人公の女子高生・鈴芽(声:原菜乃華)は、「扉」を探していると言う青年・草太(声:松村北斗)に出会い、2人は「扉」の向こうから訪れる災いを封じるために、「扉」に鍵をかける旅に出る。

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 ダイジンと呼ばれる謎の猫が旅を牽引したり、鍵が重要なアイテムになるなど、物語は2011年の『星を追う子ども』に近いが、新しいテーマも織り込まれている。それは土地、場所を悼むこと。日本各地の廃墟を舞台にした災い封じの旅は、そんな場所を慰め、鎮めていく旅でもある。

映画『すずめの戸締まり』予告

 2011年以降に製作された『君の名は。』『天気の子』で、自然災害と人を描き続けてきた新海監督だが、そこに託しているのは、絶望ではなく希望だ。慰め、鎮められた場所は、再び人との調和を図り、穏やかで豊かな場所となる一歩を踏み出す。

◆新海監督の新作は、常にこれまでの集大成。

 また、新海作品は同じモチーフで描かれているものの、決して同じ作品ではない。それは新たな作品は伝えるべきことをより強く、より面白く伝えるために厳しくブラッシュアップされているから。それゆえ、新海監督の新作は常にこれまでの集大成であり、どれもその時点で最良の作品である。それは、『すずめの戸締まり』も例外ではないのは言うまでもない。

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

 新海作品の特徴のひとつである、写真のようにリアルで、それでいて巧みな構図と採光で登場人物の心情とフィットする背景や、『君の名は。』以来、パートナーとしてなくてはならない存在になっているRADWIMPSの音楽も健在。となれば、この文章の最後はこう結びたい。新海映画を信じていれば「僕たちはきっと、大丈夫だ」。

文/映画評論家・春岡勇二

映画『すずめの戸締まり』

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける「閉じ師」として旅を続けているという。そんな2人の前に、謎の猫・ダイジンが現れ、草太は椅子に姿を変えられてしまう。「閉じ師」が居なくなり、やがて日本各地で次々に扉が開き始めるのだった・・・。災いの元となる「扉」を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描いた現代の冒険物語。

2022年11月11日公開

【原作・脚本・監督】
新海誠
【出演(声)】
原菜乃華、松村北斗、
深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、
松本白鸚
【配給】
東宝
公式サイト
(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

提供/TOHOマーケティング

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

写真ランキング

エルマガジン社の本