笑いと不穏のタイトル回収、金子大地の頼家像に反響【鎌倉殿】

2022.7.18 20:15

御所・政子の居室にて。かつて挙兵のとき頼朝(大泉洋)が命を賭けると誓った髑髏を受け継ぐ源頼家(金子大地)(C)NHK

(写真10枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。7月17日放送の第27回『鎌倉殿と十三人』は、二代目鎌倉殿・源頼家の元に、彼を支える13人の御家人・文官がそろう、胸熱のタイトル回収・・・かと思いきや「こんなにワクワクしないタイトル回収はない」というほど、今後の地獄の予感がヒシヒシ伝わる回となった(以下、ネタバレあり)。

■ 比企と北条の対立から、13人まで膨れあがる宿老

源頼朝(大泉洋)の跡継ぎとして、鎌倉殿に就任した頼家(金子大地)だが、御家人同士のいざこざから朝廷からの謀反人の処罰の要請まで、若き後継者には荷が重い問題がつぎつぎに振りかかる。義時は頼家の負担を軽くするために、訴訟関係は大江広元(栗原英雄)をはじめとする文官4人が評議を行い、頼家からの信頼が厚い梶原景時(中村獅童)がそれを取り次ぎ、最終判断をあおぐというシステムを提案する。

しかし比企能員(佐藤二朗)が自分もそこに加わることを主張し、北条時政(坂東彌十郎)もそれに続く。さらに2人は自分たちが優位に立とうと、仲間を勝手に増やすはめに。その結果、時政が和田義盛(横田栄司)や三浦義澄(佐藤B作)らを、能員が安達盛長(野添義弘)や八田知家(市原隼人)らを推挙し、結果的に12人体制となった。

頼家の自主性を尊重するため、そこに加わるつもりはなかった義時だが、先行きを不安視する姉・政子(小池栄子)の願いで、13人目の御家人になる決意をする。

しかしそれを義時の裏切りと受け取った頼家は、景時の「頼朝様は最後まで御家人を信じてはおられませんでした」という言葉も踏まえ、義時の息子・頼時(坂口健太郎)をはじめとする若者たちとともに、自分たち独自の政治をおこなうと宣言。肝心の鎌倉殿と、いきなり対立状態となった「鎌倉殿の13人」の心境を代表するかのような、義澄の「どうなるんだ、鎌倉は」という声が響く──。

御所・寝殿にて。源頼家(金子大地)の前に揃った十三人の宿老たち(C)NHK

■ 殺伐としたタイトル回収回も…山本耕史演じる義村に和む

物語が進むに連れて「十三人の合議制」に加わるメンバーが「5」「6」とカウントされ、最後には鎌倉殿の前で全員がそろい踏みする。普通なら、RPGでパーティーが全員そろったときのような爽快感があるはずのシーンなのに、そこはさすが、この武闘派の時代ならではの地獄を嫌というほど見せつけてきた本作。

御家人たちの欲望と頼家の青さが、最悪の形でぶつかってしまう幕切れに、SNSでは「こんなギスギスしたタイトル回収ある??」「タイトル回収回という人類が大好きな定番の回なのに、こんなにもワクワクせず感動もせず、不安で恐ろしい気持ちになるのも凄い」などの声が続出した。

御所・頼家の居室にて。若手御家人を集め、三善康信(小林隆)を講師に政について学ぶ源頼家(金子大地)(C)NHK

とはいえ、その13人の面子が固まるまでの道のりは、さすがコメディの達人・三谷幸喜と、その魅力を知りつくした演技達者ぞろいの俳優陣。和田義盛が「俺は難しいことはダメだ」と一度は断るのに対して、三浦義村(山本耕史)が「皆わかっておる」と即答したり、文官たちがこぞって能員の露骨な接待を受けるなかで、広元だけがめちゃくちゃ真顔だとか、思わずクスッと笑う演技が連発して、殺伐とした空気をなごませていた。

とりわけSNSで反響が大きかったのは、時政が推薦する佐々木秀義(康すおん)と千葉常胤(岡本信人)を、それぞれ「もう死にました」「もうすぐ死にます」と一刀両断した義村。視聴者からは「義村くん、容赦ない」「ナレ死でも紀行死でもなく、なげやり予告死は斬新すぎて笑わざるを得ない」「こんなこと大河で真顔でポンポン言えるのは山本耕史だけ」などの声が。

さらに「人数が増えていくのはコメディで笑っちゃうけど、案外こういうグダグダ・ゴタゴタで進んだ歴史はいろんな時代にあったんじゃ?」という考察もあった。ちなみにドラマでは語られなかったが、常胤は結局、13人に加わった義澄(義村の父)より長生きしている。

■ 俳優としての自分と「頼家」をリンクさせ、演じた金子大地

一方、頼家が最後に独断的な行動に出ることに対しては、決してただの二代目のわがままではなく、自分の実力が認められない焦りや、理想と現実の空回りゆえということも丁寧に描写された。SNSでも「頼家は賢いけど若すぎるんだよ・・・」「偉大なる父を突如失って、気負い過ぎてる危うさが見え隠れしてひやひやする」「頭は切れるが苦労知らずの若者であるがゆえに、『鎌倉殿と13人』になってしまうか」など、同情の声が多数寄せられた。

源頼家は、これまで「自己中心的なお坊ちゃま」「訴訟もろくに処理できないボンクラ」などのイメージが強かったが、さすが木曽義仲や源範頼などの武将たちの、従来のイメージをことごとく破っては、魅力的な人物像を上書きしてきた本作。

演じる金子は、公式サイトのインタビューで、台本を読んだときの頼家の印象を「とてもピュアでまっすぐ」と感じたうえで、「三谷さんからは『頼家を嫌われ者にしたくない』と言っていただいたので、彼のそういう必死さが刹那的に見えたら」と明かしている。

御所・廊下にて。自分を補佐する宿老が十三人もいると知って、落胆する源頼家(金子大地)となだめる北条義時(小栗旬)(C)NHK

また公式の動画インタビューでは、自分よりキャリアの長い大勢の先輩たちと、たった1人で立ち向かわねばならないという重圧を、実際の頼家が老獪な御家人たちに対して感じたであろうプレッシャーとリンクさせた、とも証言。「将軍」「俳優」と立場は全然違えども、「若いからとあなどられてはならない」「この現場を自分がなんとかせねばならない」と、そのプレッシャーの性質が実は似かよってることを逆利用するとは、なかなかしたたかだ。

SNSでも「金子大地くんは大変素晴らしい。いろんな意味で『若さ』をうまく表現している」「偉大な父を持つ、プライドだけ高い、面倒なことが嫌いな子どもなのが、体全体から伝わる」「旧来の暗君でもなく、かと言ってこの難局を乗り越えられそうな感じもなく、名君の片鱗を見せつつ孵化できないまま散っていきそうな感が凄い」と、三谷の生んだ新しい頼家像と、それを体現する金子の今後の演技にグッと期待が高まる回ともなった。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第28回『名刀の主』では、実直に頼朝・頼家に仕えてきた梶原景時が、13人からの脱落者となる「梶原景時の変」が描かれていく。

文/吉永美和子

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