迫力のハンマー職人技…モノづくりの街・東大阪の「町工場」へ                                           

2022.7.11 20:15

「オーエッチ工業」(東大阪市水走)の製造部工場長・三好隆廣さんと開発部部長・林敬二さん

(写真12枚)

工場や作業現場などで使われる「工業用ハンマー」。実は、現在全国で3つの会社でしか作られておらず、そのうちのひとつ「オーエッチ工業」(東大阪市水走)がモノづくりの街・東大阪にあるということで、さっそく潜入してきた。大迫力の製造現場はいかに・・・!

■年々減少するハンマー製造会社

ハンマーといっても家庭でよく使われる樹脂タイプのものから、鉄工・点検・建築土木といった工業用まで、サイズや種類は多岐に及ぶ。「オーエッチ工業」はその工業用ハンマーの製造を主力としており、業界シェア率は実に70%にも及ぶんだとか。

工業用ハンマーを主に扱う「オーエッチ工業」(東大阪市水走)

創業当時(昭和29年)はさまざまな会社がハンマーを作っていたが、月日が経つとともに製造会社が激減。「僕が知っているなかでも、(ハンマーを扱う会社)は半分以下に減りましたね」と、同社で製品や生産設備の設計を25年間にわたり担当する林さんは話す。

「当時は各社がゴムのハンマーだったり、プラスチックのものだったり、専門性が強かったんですが、次第にそういったところが潰れていき、広い分野を扱う会社が残ってきたんだと思います。工業用ハンマーの専業メーカーとしては、現在兵庫・三木、あと新潟と、ここ(オーエッチ工業)だけになったね」と振りかえる。

■大迫力の製造工程・・・瞬き厳禁!

現在、約600種以上のハンマーを社員60名で製造している同社。2023年で75周年の老舗企業を支える社員は、それぞれの技術に応じて持ち場が振り分けられており、もっとも熟練の技が必要となってくるのは「鍛造」と言われる工程だそう。

ハンマーのヘッド部分は「エアハンマー」を使い、上下から打ち付けるように形成していく

「鍛造」とは、「エアハンマー」という空気の力を使って上下から材料を叩く機械で、1200度に熱された未来のハンマー・ヘッド(この時はまだ鉄の塊)を叩きつける作業。「エアハンマー」の前に立った職人が、足元にあるペダルで力加減を調節しながら、上下から「金型」で(ハンマーのヘッドの型を埋め込んだ立方体)何度も打ち付け、形成していく。

そして猛スピードで、大きな音を立てる「エアハンマー」に立ち向かうように、ペダルをふみ、鉄の形を整える職人。少しでも気をぬくと大事故になりかねない作業を全うする職人の背中からは、並大抵ではない緊張感が感じられた。

その後も「バリ抜きプレス」といった不要な突起を取り除く作業など、複数の工程を経て、取っ手部分の取り付け作業「柄付け」や「塗装」に進んでいく。そのなかでも特に「柄付け」の作業は人の手がなくては成り立たない工程だという。

「穴の空いた鉄に柄(木)を通すという作業になりますが、鉄の穴にもばらつきがあり、また柄も自然の素材のため、湿気によって伸び縮みするんです。そんな変化にも対応しながら『柄付け』をおこなっています」と林さん。

同工場を訪れるまでは、ハンマーは全自動のベルトで流れ作業のように完成していくと想像していた記者。「時代が変化して2人でやっていたところを機械化で1人にする、といったことはありますが、やはり良し悪しを判断するために手作業というのは必ず必要ですね」と語る。

ヘッド部分に穴を開ける「縦推し 横推しプレス」作業

■マーベル映画の「レプリカではない」武器を

そんなハンマー製作のプロフェッショナル「オーエッチ工業」が、マーベル映画の最新作『ソー:ラブ&サンダー』でキーとなる武器「ムジョルニア」を制作した。

映画『ソー:ラブ&サンダー』なにわのムジョルニア

「ムジョルニア」といえば、主人公・雷神ソーが振るうハンマーのことで、雷や稲妻をも自由自在に扱う天下無双の武器。林さんは「レプリカでも無く、うちのオリジナリティをどうすれば表現できるのか、という部分で悩みましたが・・・普段の真面目なハンマー造りとはまた雰囲気が違ったので、楽しんでやらせてもらいました」と話す。

材料を揃えて、金型を作って鍛造、焼き入れ・・・と、実際の商品さながらの工程を踏み、完成した「なにわのムジョルニア」。通常のハンマーは3カ月程かかるところ、1カ月の急ピッチで進められたそうで、全10名ほどの職人の手によって造られた同品は、実世界でも映画の世界にも負けないくらいのパワーを発揮してくれそうだ。

『ソー:ラブ&サンダー』7月8日(金) 全国劇場にて公開 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン /©Marvel Studios 2022

ハンマー本体の製造は同社が、そしてデザインの彫り込みや装飾・塗装は、これまた東大阪に本社を構える「大成モナック」(東大阪市角田)が担当した。3Dスキャナーやプリンタなどを使い、工業用製品へのデザインを得意とする会社だ。

同作でもキーとなる「稲妻」を走らせたヘッド部分は、暗闇で青く光るといった細やかな仕掛けも組み込まれている。だがそんなファンシーなデザインでありながらも、林さんが話す「レプリカではない」という言葉は事実。実際のハンマーとしても使えるようになっており、その重量は13kg。女性だと1人で持ち上げるのが困難なほどだが、持ち手を長くすることにより「叩きやすさ」までこだわった代物だ。

こちらは現在、商業施設「HEP FIVE」(大阪市北区)の1階で開催されている「MARVEL POP UP STORE」にて、7月31日まで展示されている。映画『ソー:ラブ&サンダー』は、7月8日より全国公開中。

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