鈴木京香「丹後局」の迫力、大姫&範頼ロスの声も【鎌倉殿】

2022.6.20 20:30

京・六波羅御亭にて。入内を決意し、丹後局(鈴木京香)と対面するため身なりを整えた大姫(左、南沙良)、政子(小池栄子)(C)NHK

(写真10枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。6月19日放送の第24回『変わらぬ人』では、源頼朝(大泉洋)の弟・範頼(迫田孝也)と長女・大姫(南沙良)が、それぞれ頼朝の影響によって、悲劇的な最期を遂げる様が描かれた(以下、ネタバレあり)。

■「まっすぐに生きた」範頼と大姫に訪れた悲劇

「富士の巻狩り」での暗殺をまぬがれた頼朝だが、その間に範頼が鎌倉殿になろうと画策していた事実を知る。野心など微塵もなく、ただ周囲が勧めるまま動いただけだった範頼は、潔白を示そうといろいろと奔走するが、頼朝の不信感はぬぐえない。しかし頼朝の乳母・比企尼(草笛光子)が説得に乗り出したことで、範頼は命までは奪われず、伊豆に幽閉されることになる。

一方、頼朝の命で討たれた許嫁・木曽義高(市川染五郎)を、いまだに忘れられない大姫。かつて義高の父・義仲(青木崇高)に仕え、今は和田義盛(横田栄司)の元にいる巴(秋元才加)に「人は変わるのです」と諭されたことで、父が望んだ入内(じゅだい)を承諾する。しかし京で面会した丹後局(鈴木京香)に「ただの東夷(あずまえびす)」などと罵倒されたショックと、屋敷を抜け出して雨に打たれたことが原因で、重い病に伏せる。

三浦義村(山本耕史)に「人は己の幸せのために生きる」と言われたことから、「私の好きに生きていいのですか? 好きに生きるということは、好きに死ぬということ?」と考えた大姫は、そのまま20歳の若さで逝去。完全に冷静さを失い、大姫の死は範頼の呪詛のせいだと思い込んだ頼朝は、梶原景時(中村獅童)に暗殺を命じる。そして範頼は、懇意にしていた農民夫婦ともども、景時の下人・善児(梶原善)の手にかかる──。

鎌倉御所・御堂にて。源頼朝に「鎌倉殿の座を狙った」と疑われるのではないかと不安になる源範頼(左、迫田孝也)と三善康信(小林隆)(C)NHK

■ 三谷組の1人、迫田孝也が築いた「スーパー調整役」範頼像

どんなに理不尽な目にあっても、鎌倉殿に敵意など持たず、むしろ愛情や忠誠心を抱いていたはずの範頼と大姫。直接と間接の違いはあれど、結果的に頼朝の猜疑心や野望によって寿命を縮めてしまったことに、SNSでは「地獄が大姫→蒲殿の二段重ねとか、深すぎて対応しきれないよーーー!」「毎回言っておるがこんな気持ちを抱えたまま月曜日を迎えろと? 人の心が無いのか?」「視聴者全員が『もうやだ』となっている」と、悲鳴を通り越してお通夜のような状態となった。

リアルな源範頼は、源義経(菅田将暉)と並ぶ平家滅亡の功労者ながらも、義経ほどキャラが立っていないこともあり、非常に影の薄い存在だった。しかし「三谷組」の1人と言えるほど、三谷幸喜からの信頼が厚い俳優・迫田孝也は、範頼を演じる上で「個性の強い兄弟たちのなかでのバランサー的役割というか、なるべく真ん中あたりにいる人というのを意識した」と、公式インタビューで証言。

それによって、誰とでもわけへだてなく柔和に接することで、なにかとギスギスしている鎌倉殿周りの人間関係を円滑にするという、いわば「スーパー調整役」とも言える範頼像を築き上げることに成功した。

実際にSNSでは「いい人すぎて魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)する鎌倉で生きていける人ではなかった」「人が良すぎるから『自分一人が死ねば収まるならそれでもいい』と思ってしまってるんだろうな」「範頼の敗因:いい人すぎた」と、その誠実かつ癒し系の人柄をしのぶとともに、「範頼ロス、思ったより辛かった・・・」「○○ロスという言い方をこれまで実感したとなかったけどよくわかりました。これか。この状況を言うのか」などの「範頼ロス」を打ち明ける声が目立った。

和田館にて。義高のことを聞こうと、和田義盛の館にいる巴御前(右、秋元才加)を訪ねた大姫(南沙良)(C)NHK

さらに、義高への愛において「変わらぬ人」であり続け、視聴者の涙を誘ってきた大姫の死も、「変わろうとした大姫が現実に打ちのめされてそのまま死んでしまった話のタイトルが『変わらぬ人』なの、こんな最悪なタイトルあるかよ」「蝉の抜け殻を集めるのが好きだった冠者(義高)殿。大姫の死とともに、後ろで命を終えたような蝉の声が・・・。大姫が冠者殿の元へ飛び立ったのがよく感じられた」などの声が。しかし、この追悼に負けないほど大きな評判となったのは、大姫と対峙した丹後局の「圧迫面接」ぶりだ。

■ 全視聴者を震え上がらせた丹後局、そこに込められた思い

後白河法皇(西田敏行)の愛妾という立場から、入内の手引をしてもらおうとした大姫と政子に対して、「田舎の人はよいものですね。どんな言葉も素直に受け止める」「帝からすればあまたいる女子の一人にすぎぬ」など、嫌味と叱責の千本ノック状態で、SNSでは「ここ数年の大河で1番怖いシーンだった。本当に怖かった」「魑魅魍魎と百鬼夜行とThe都を全部盛りしたくらい怖かった(誉めてます)」と、全視聴者を残らず震え上がらせたのでは? というほどの反響だった。

とはいえ演じた鈴木京香は、決して100%悪意ではなく「『生半可な気持ちでは無理ですよ』という気持ちで、同じ女性として『しっかりやりなさい』という気持ちを込めた」(公式サイトのインタビューより)とのこと。

実際にSNSでも、その言葉の裏を読んで「言い方がめちゃめちゃ嫌みだけど、京の状況と論理を丁寧に教えてくれてる」「本当にひどかったら取るものとって陰で嘲笑って肝心なことは何も教えてくれないだろう」など、しっかりとその熱い気持ちを受け取った人が多かったようだ。もし大姫がそれにちゃんと気づけていたならば、こんなふうに命を縮めることもなかったのだろうか・・・。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第25回『天が望んだ男』では、不幸続きで不安にさいなまれる頼朝の姿と、嫡子・頼家(金子大地)に男子が生まれたことで、北条と比企の2つの家が対立を深める様子が描かれていく。

文/吉永美和子

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