【鎌倉殿】「アフター壇ノ浦」に焦点、SNSは複雑な心境に

壇ノ浦の海上にて。禁じ手とも言える戦術で平家軍を追い込む源義経(菅田将暉)、弁慶(佳久創)ら(C)NHK
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。5月8日放送の第18回『壇ノ浦で舞った男』では、源義経(菅田将暉)や範頼(迫田孝也)が率いる源氏軍と平家軍が、ついに壇ノ浦で互いの命運をかけた大戦に。義経の光り輝くような戦場での活躍と、終戦後に抱える虚しさと運命の陰りが描かれた(以下、ネタバレあり)。
■ 義経が戦のタブーを犯し、平家は滅亡
嵐のなか果敢に船を出して、屋島に陣を構えた平家を撃退した義経。しかしその圧倒的な強さを、逆に不安に感じた頼朝(大泉洋)は、次の戦では梶原景時(中村獅童)を総大将にする下知を出す。しかし景時は一芝居を打ってまで、総大将は義経しかいないと周囲を納得させた。そして九州にいた範頼や義時も合流し、壇ノ浦での戦が幕を開ける。
最初は劣勢だった源氏軍だが、義経が「船の漕手を殺す」という戦のタブーをあえて犯すことで、たちまち平家は総崩れに。しかし平家は安徳天皇(相澤智咲)と三種の神器を道連れに入水することで、源氏の完全勝利をはばんだ。多数の戦死者が流れ着いた海岸で、義経は義時に「この先私は誰と戦えばよいのか。私は戦場でしか役に立たぬ」とさびしく打ち明ける。
平家滅亡をひそかに喜んだ鎌倉の頼朝だが、都での義経人気の高まりと、景時がその問題行動の数々を訴えたことで猜疑心をいだき、義経が鎌倉に戻ることを拒否。捕虜となった平宗盛(小泉孝太郎)が義経の代わりに、頼朝への思いを書状にしたためても、頼朝は代筆を見破ってさらに激高。しかたなく義経は、京都に戻って法王に仕えるという決意をする──。
■「壇ノ浦の戦い」が見どころと思いきや…
放送前は、CGもフルに使った「壇ノ浦の戦い」の再現こそが見どころと思われた第18回。しかし実際に焦点が当たったのは、不完全かつ手段を選ばなかった勝利が、戦に関わった人々の関係性をゆっくり壊していくという「アフター壇ノ浦」のツラさの方だ。
なかでも視聴者を惑わせたのが、梶原景時の義経に対する態度の変化。前半の、お互いが戦のセンスを認め合うという、従来の「景時奸臣(かんしん)説」をくつがえすようなナイスバディぶりから一転、後半では頼朝にとって危険な存在になると告発。歌舞伎で言うなら「ぶっ返り」の衝撃の大きさに、SNSではさまざまな意見が飛び交った。
「義経への心酔も本当だけど、それと誰を主と定めるかは別、みたいな複雑さが見ごたえある」「この先の地獄が見えすぎるからこそ義経を讒言(ざんげん)するしかない梶原景時、業が深すぎる」と、彼の政治的バランス感覚をおもんぱかる声もあれば、「鎌倉殿&九郎殿を同時に強火で推し過ぎて己のなかで解釈違いを起こしている厄介ファンみたい」「誰よりも九郎義経推しだから、九郎義経絶対殺すマンになる」などと、愛や崇拝をこじらせたがゆえの・・・という見解も多数見られた。

また、勝利のためには非戦闘員の漕手すら手にかける非情さを見せた義経だったが、宗盛と息子・清宗(島田裕仁)の異例の再会を実現したり、初めて鎌倉に来たときに世話になった村人・藤平太(大津尋葵)たちに大量の芋を送ったりと、最後には情にあふれたふるまいが。
この変貌ぶりにも、後の運命を知る視聴者から「判官贔屓(ほうがんびいき)という言葉が確実に生まれるラストシーン」「ここに至って義経に情を移させないで」「人の心を発揮し始めたので鎌倉殿式死亡フラグ(イイ奴は死ぬ)が立ってしまいました」と、SNSではこれまた複雑な心境を吐露する言葉が飛び交っていた。
ちなみに冒頭で、義経と景時が「船に2つの櫓をつけるか否か」で言い争う場面があったが、この現場の跡地と伝わる「逆櫓の松跡の碑」は、今も大阪市福島区の堂島川近くにある。どちらかというと小さな松なので、正直わざわざ見に行くほどではないが、近くを通りかかる機会があったら思い出してほしい。
◇
『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第19回『果たせぬ凱旋』は、頼朝と義経の仲を修復するために、義時たちが尽力する一方、後白河法皇や、2人の叔父・源行家(杉本哲太)が、逆にその関係を悪化させていく様を描く。
文/吉永美和子
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