大阪の銭湯による挑戦「未来がある場所に」、子ども無料は千人超え

2021.12.12 07:45

駄菓子店のようなカウンターで『こども銭湯』投げ銭箱を手にする3代目店主の田丸正高さん

(写真17枚)

「風呂でやったら怒られそうなことをやっていきたい」。そんな言葉通り、桶を使ったゲームで競う『オフロンピック』など銭湯のイメージを覆すイベントを展開する「朝日温泉」(大阪市住吉区)。10月には居酒屋をオープンしたほどアクティブな3代目・田丸正高さん(40)に銭湯への思いや、活動について話を訊いた。

◆銭湯が減り続けているなか・・・「銭湯は未来がある場所」

大阪での銭湯全盛期は『大阪万博』(1970年)の頃までといい、同銭湯がある住吉・住之江地区で120店ほどあった銭湯は現在13店にまで減少。そのひとつである「朝日温泉」は戦前に大阪・淀川区で創業し、現在の地で開業61年目を迎える銭湯だ。

2代目・田丸治三郎さん(76)は、「私の代は妻と店をまわすだけで精一杯の忙しい日々でした。ですが、今は家風呂が普及してお客さん同士の繋がりも減ってしまいました」と語る。そんななか「銭湯=古い」のイメージを「清潔感のある明るさ」へ変えるべく、息子の正高さんが引き継いだ2007年に全面改装。露天風呂や新たなサウナ室を導入し、番台をなくすなど時代に合わせて変化させた。

「銭湯は先細りだし『継いだらあかん!』と、父の代で終わりそうな状況だったので、僕も手に職をと建築系の仕事をしていたんです。でも、母の実家も六甲の銭湯で、親戚がみんなお風呂に関わっている環境で育ったので、やはり家業を無くしたくないと。家計の心配とか後先考えずに若さゆえのやる気や勢いで継ぎました」と当時を振りかえる。

そして、2008年からは銭湯という枠も超えて、浴室でキューバ音楽のライブやお化け屋敷、紙芝居などを次々と開催。先述の『オフロンピック』(2018年)では、桶を重ねてタワーを作ったり、カーリングのようにすべらしたり、老若男女が楽しむイベントとなった。「銭湯は未来がある場所。このハコ(建物)さえあれば、ゲームでも読み聞かせでも、使い方次第で何でもできる」と田丸さんは語る。

過去に開催した『キューバ音楽ライブ』の様子

◆いろんな世代に銭湯を「みんなで楽しんだもんがち」

常連客は年配層が中心となるなか、田丸さんが約3年前から始めたのは、小学生以下が無料になる企画『こども銭湯』(毎月2回・お菓子付き)だ。『こども食堂』のように貧困問題への手助けとして発案。常連客らを中心に大人からの投げ銭(寄付)で成り立っている企画だ。

「子ども時代に銭湯での良い思い出ができれば。その子が将来、家族とどこかの銭湯に行ってくれたらうれしい。実際にこの企画を機に初めてうちに来た子もいて、みんなで騒ぎながら楽しく入ってくれています。そんななか、連れてくる親の方が子ども無料の企画をありがたがって、結果、逆に本来の入浴料より高い投げ銭をしてくれる方も。こちらが温かな気持ちになる企画でもあります」。

入湯後に、カウンターに約30種も並ぶ駄菓子から100円分好きな分を選べるとあり、今や子どもたちにとっては、恒例の楽しみの企画に。66回も開催され、1027人の子どもに無料風呂が提供されている(12月9日時点)。企画の継続目標は20年とのことだ。

◆「銭湯前後にもなにかできる!?」と食堂をオープン

「みんなで楽しんだもん勝ち。何かが得意な人を呼ぶのが好きで、人を巻き込みまくっている」という田丸さんが、銭湯のお向かいに、「風呂上がりの1杯」をテーマとした「朝日食堂」を10月に開業。毎週水曜は地元・住吉の創作和食「旬彩酒場 なごみ」の料理人が参加し、「銭湯」がテーマの堺市発の人気バーガー店「BABAN BABAN BURGER」にも声をかけて朝昼営業してもらうことになった。

「本当は駐車場にしようと思っていたんですが、それではつまらないなって。銭湯以外にもハコ(建物)を増やせば、野菜や食材を売るマルシェを計画できたり、人が集まれる場所になる。銭湯のロビー以外でも、お客さんたちとゆったりできる場所がほしいなと前から思っていたので。食堂にしてしまおうと。お風呂上がりの一杯だけでなく、いろんな使い方をしてもらえたらうれしい」。

開業前には約360人が訪れたという縁日を開くなど、地域のイベント企画者にもなりつつある田丸さんだが、常にベースとなるのは「人と人がつながる」銭湯だ。

東住吉区から訪れていた70代女性客は、「銭湯が減ってしまい、最近ネットで調べてここを知りました。大浴槽の方があったまる気がして、お湯もきれいで良いね。イベント写真がたくさんで楽しそう」と、夫婦で週2回ほど通うようになったそう。

正高さんは、「自分が小さい頃はお客さんが一緒に風呂に入れてくれて。あのおっちゃんに戦争の話を聞こうとか、だれがどの時間に来るか分かっていました。今後も大切な交流の場として、だれかのサードプレイスになれたらと思う。イベントなどは、そのきっかけ。銭湯の売上は後からついてくるかな」と笑いながら語った。

営業は昼1時~深夜12時、土曜は朝5時から。入浴料は大人490円ほか。「朝日食堂」営業は夕方5時~夜11時(LO夜10時)、月曜休み(不定休)。南海電車「沢ノ町駅」、JR「我孫子町駅」から徒歩約10分。

取材・文・写真/塩屋薫

「朝日温泉」

場所:大阪市住吉区南住吉3-11-8
営業:13:00~24:00、土曜は5:00~
料金:大人490円、中学生300円、小学生200円、幼児100円※サウナ100円
電話:06-6692-9808
※「朝日食堂」17:00~23:00(LO22:00)、月曜休み(不定休あり)

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