ゴミ多すぎ・・・奈良の鹿を守るための運動が活発に

鹿に人間の食べ物(パン、お菓子、野菜等)や紙類を食べさせると、中毒やお腹を壊すなどの原因となり、場合によっては死に至ることもある
奈良を代表する「奈良公園」(奈良市)の鹿は、国の天然記念物であり野生動物。野生だが、市街地の近くでその生態を保っているため、人との密接な関わりから生じるトラブルが起きやすく、近年は報道で殺害事件や間違った餌やりが取りざたされるなど、注目を集めている。
SNSで、「鹿せんべい以外のエサを与えないで」「公園内にゴミをポイ捨てしないで」など注意喚起する⿅ファンも増加。さまざまな団体や個⼈によって⿅を守ろうとする動きが⾼まっており、「奈良の鹿を守ろう」と呼びかける人々の活動や想いから、改めて「人と自然との共生」を考えてみたい。
◆ゴミ箱がない奈良公園だからこそ・・・
奈良公園内には、鹿がゴミを漁ってしまうのを防ぐためゴミ箱の設置がない。ゴミは原則自分たちで持ち帰ることになっているのだが、ポイ捨てをする人が後を絶たないのが現状だ。
コロナ禍でインバウンドや観光客が減ったにも関わらず、「奈良公園内のゴミが大きく減ることはありませんでした。インバウンドの頃は1回の清掃活動で10キロ以上のゴミがありましたが、コロナ禍でも5キロ以上はあります」と話すのは、「奈良公園ゴミゼロプロジェクト実⾏委員会」事務局を務める印刷会社「新踏社」(奈良市)の安達研さん、⾹奈⼦さん夫婦だ。
同会は、2019年の「奈良公園で死亡した⿅の胃から、3.2キロものプラスチックごみが⾒つかった」という報道をきっかけに結成。「ゴミは、あかん」のキャッチフレーズで、多言語表記のポスターや顔出しパネルを制作したり、SNSで募った参加者とのゴミ拾いを月1回おこなったり、ゴミ入れ用エコバッグを販売するなど、公園のゴミ問題について啓発活動をおこなっている。
安達さんらは、「3年活動していますが、ゴミが減った実感はないです。家庭ゴミが捨てられていることもあり、まずは地元の方々に知っていただけたら。注意するのではなく、一番大事なのは『伝えること』」と話す。11月には、メンバーで児童書作家の中村文人さんによる書籍『奈良公園の鹿を「殺す」のは、誰か』(CATパブリッシング刊)も出版され、ますます啓発に力を入れている。

◆かわいいグッズで、ポイ捨てNGアピールも
かわいいグッズで、ゴミ問題について訴えかけるのは、⿅のカチューシャを制作販売する「けものん」の⽔本彩奈さんだ。⿅に魅せられて2018年に奈良に移住した⽔本さんは、ほぼ毎⽇、⿅の撮影に出かけており、様⼦がおかしい⿅などが⽬に付くようになったと話す。
「誤⾷が原因なのかも。⿅カチューシャを付けて⿅⽬線になると、⾃分がされて嫌なことは⿅も嫌なんだと分かります」。そこで、今年の6⽉から奈良クリエイターのヨシノマホさんにデザインを依頼し、エコバッグ(300円)を制作販売。⿅と⼤仏の4コマ漫画でユーモラスに描かれ、持って歩くだけで啓発につながる内容になっている。
◆それでもなくならないゴミ
ただ誤解してはいけないのは、これまでもゴミ拾いはおこなわれてきた。⿅の保護育成や調査研究、⽣息環境保全活動などに携わっている「奈良の⿅愛護会」が長年にわたり、ゴミ拾い活動を続けている。さらに、今年の3⽉からは「美⿅パトロール隊」を結成し、毎⽇朝9時から昼3時まで公園内各所で、365⽇清掃活動をおこなっているのだ。
同会の蘆村好⾼事務局⻑は、「我々も、奈良公園内のそれぞれの管理者(奈良国⽴博物館、東⼤寺、春⽇⼤社、興福寺、お⼟産屋など)も、毎⽇の清掃活動を散々してきているのです。それでも無くならない」と嘆く。

同会の板倉さんは、「2020年7⽉のレジ袋有料化で改善されるかと思ったのですが、死亡した⿅を解剖した結果、常に6割以上の⿅の胃からビニールが検出されているのが実状。食べ物のニオイが付着しているから、⿅は間違って⾷べてしまいます。何⼗年と誤⾷し続けることで胃に蓄積されたプラスチックごみが塊になり、栄養失調となって衰弱して死ぬのです」と、ゴミがもたらす⿅への影響を語る。
さらに板倉さんは、「SNSでこの問題が可視化されてきたのはよいこと。ゴミを拾ってくれること、弱っている⿅を⾒つけて連絡をくれること。⿅は奈良の⽂化なので、特定の⼈だけでなく、市⺠全体で⿅をやさしく⾒守ろうという気持ちになってもらえれば」と訴える。
奈良で神の使い「神⿅」として⼤切にされている⿅の命にまで影響を及ぼしてしまうゴミのポイ捨て。ただ、「奈良公園」だからではなく、どこであってもいけないことだということを忘れてはならない。
取材・文・写真/いずみゆか
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