昆虫から自然を見直す…「虫」がテーマのユニーク美術展
解剖学者で無類の昆虫好き、昆虫学者としても知られる養老孟司(ようろうたけし)氏(1937~)。彼が「細見美術館」(京都市左京区)とタッグを組んだ、特別展『虫めづる日本の美 養老孟司×細見コレクション』が開催されている。
展覧会名の通り、「虫」をテーマにしたさまざまな美術作品が見られる同展。冒頭には、養老氏自身が制作した昆虫写真や昆虫標本と、彼が親交を結ぶ現代の作家や企業によるデジタルマイクロコラージュ(2Dと3D)や立体作品などがずらり。続いて、細見コレクションの日本美術が登場し、絵画を中心に漆芸、金工などを加えた約40点の古美術作品が楽しめる。
江戸時代の画家・伊藤若冲の精緻な筆致が見所の作品『糸瓜群虫図』や琳派の濃厚な美意識が充満した『四季草花草虫図屛風』、同時代の画家・住吉如慶が虫を擬人化して描いた『きりぎりす絵巻』などを見ていると、日本美術と虫の古くから続く密接な間柄がわかるだろう。
養老氏が古美術の展覧会に関わったのは初めてのこと。彼自身も「非常に興味深い、貴重な機会をもらえた」と述べており、昆虫×日本美術の組み合わせに手応えを感じているようだ。養老氏にとって昆虫は「自然を象徴する存在」であり、近年、トンボをはじめ小さな虫が次々に姿を消している状況を深く危惧している。だからこそ、「昆虫を入口にもう一度自然を見直してみませんか」と、本展に関わることになったのだ。
学芸員の吉川右香氏も「古美術にこんなに虫が描かれているのかと改めて感心しました。日本人が昔から虫に親しんできたことを実感できます」と意義を強調。「虫」を起点に日本美術の優品と自然の大切さを知ることができる、とてもユニークな展覧会だ。2022年1月23日まで開催。一般1300円ほか。
取材・文/小吹隆文(美術ライター)
『虫めづる日本の美 養老孟司×細見美術館』
日程:10月29日(金)~2022年1月23日(日) 月曜休(祝日の場合は開館、翌火曜日休館)、年末年始(12月27日~1月4日)※会期中に一部展示替えあり
時間:10:00~17:00 ※入館は16:30まで
会場:細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
料金:一般1300円、学生1000円
TEL:075-752-5555
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