森山未來「『大人』というものの必要性がよくわからない」

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』で主演をつとめた森山未來
1990年代に大流行した渋谷カルチャーを背景に、3人の女性との恋愛や、移り変わる佐藤を取り巻く環境などを描いた小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(著:燃え殻)を、俳優・森山未來を主演に映画化。21歳から46歳までの主人公・佐藤を1人で演じきった森山に、同作について話を訊いた。
取材・文/ミルクマン斉藤 写真/木村正史
スタイリスト/杉山まゆみ ヘアメイク/須賀元子
「渋谷系を知らない僕らが、この作品をどういう距離感でやるのか」
──同作でメインとなるのはいわゆる渋谷系文化全盛の時代の話なんですけれど、それを経験しているのって森山さんや監督の森義仁さんより10歳くらい上の世代ですよね。
僕が11歳くらいのときには「渋谷系」という言葉は認識できてなかったけど、その頃のファッションとか、メジャーな音楽には無意識に触れていて。何かそういうことが東京でおこっているらしいというのを子ども心にうっすら覚えているくらいですね
そんな感じで僕も森さんも90年代の「ザ・渋谷」を知らないから、そんな僕らでこの物語をどう形にできるのかというところから話をして。10年前に『モテキ』というドラマと映画をやったんですけど、あの辺のサブカルと言われるものと密接だということもあり。
──『モテキ』の大根仁監督は渋谷系ずぶずぶですしね。今は亡き、僕の恩人でもあるエディターの川勝正幸さんのコレクションも借りたりしてるし。
そう、大根さんはどっぷりの人だから、そちらの要素から攻めようとしてもあの人が描くものより強いものには絶対にならない。僕自身、カルチャー系で恋愛の要素もありな映像作品はやり尽くした感がありますし。
そこで、渋谷系をちゃんと知らない僕らがこの作品をどういう距離感でやるのかっていうのを森さんとすり合わせしたんです。カルチャー系に寄せようとすると『モテキ』とのただの比較にしかならない。「下手に音楽映画とかにしたら危ないよ」って僕が結構提案したところもあるんです。結果、音楽的なカルチャーはほぼオザケンさん(小沢健二)に委ねることになりました。

──それも『犬は吠えるがキャラバンは進む』(1993年の小沢健二ファースト・ソロアルバム)にほとんどポイントが詰められて。
それは潔かったかなと。作中に出てくる実在のお店「仲屋むげん堂」(東京・杉並区にあるアジア直輸入衣料雑貨店)もエスニックな民族系が織り交ぜられてる感じが、その頃のファッションのポイントじゃないですか。
音楽もファッションもそれくらい限定したとしても、あの頃を知ってる人なら象徴的に懐かしいと思える。でも、そういうカルチャーで押してくるものって、知らない世代からしたら置いていかれることが往々にしてある。そうした作りにし過ぎなかったのはバランス的に良かったなと思っています。
──いや、まさに。
世代的に考えても、この辺りのカルチャーにおいては僕は基本後追いで。『犬は吠えるがキャラバンは進む』もちゃんと知らなかったんです。オザケンさんに関してはそれ以降の楽曲『ラブリー』とかの印象しかなかったんですよ。
でも、燃え殻さんの原作も高田亮さんの脚本も『犬キャラ』推しなのでちゃんと聴こうと。そしたらフリッパーズ・ギターから1人になった直後の彼の痛みというか・・・、すごく粗野じゃないですか、音の作り方とか。だけどその小沢健二の原型みたいな強さにとても惹かれましたね。
※編集部注/フリッパーズ・ギター:小山田圭吾や小沢健二らによるロックバンド 小山田、小沢の2人になってから1991年に解散
──なるほど。実は僕って、渋谷系どっぷりだったんですよ。グルーヴィジョンズっていうデザイン・チームの一員で、ピチカート・ファイヴのツアーのバック映像をずっと作って、2001年の解散まで一緒に全国回ってオペレーションもしていたんです。
ええ! どっぷりっていうよりそっち側の人じゃないですか。
※編集部注/ピチカート・ファイヴ:1984〜2001年まで活動した渋谷系を代表する音楽グループ
──だから、あの時代の渋谷にはよく行っていたんですよ。ですから、懐かしいとともによく再現されているなと思いました。ラブホテル街だった円山町も含め、空気感がある。
なるほどねぇ。この映画は25年に渡る物語だからファッションの物量も多いんですが、佐藤(森山)とかおり(伊藤沙莉)の衣装はスタイリストの伊賀大介さんにご協力をお願いできたんです。伊賀さんも(渋谷系を)体現してきた人だからすごく理解が早いし、そこはビジュアル面でもすごく強かったなとは思いますね。
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』
2021年11月5日(金)劇場&Netflix同時公開
監督:森義仁
出演:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、ほか
配給:ビターズ・エンド
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