神戸市が持つ危機感か? 明石駅に貼られたポスターの真意

2021.9.26 06:45

JR明石駅に掲示された、神戸市の移住促進広告「家どこ? って言われて神戸の方とか いうぐらいやったら 神戸に住んだほうがええな。」(神戸市提供)

(写真5枚)

9月22日の市長定例会見で、双子・三つ子などの「多胎児」を育てる家庭への新しい支援を発表した神戸市。

会見での言及はなかったものの、神戸市がこうした子育て支援事業に力を入れるのは、隣接する明石市の影響もあるのではないかと筆者は感じている。

「評価の高い明石市の子育て支援」

明石市は、中学生以下の医療費無料、給食費の無償化など目立った子育て施策で若い世帯を呼び込み、ここ5年で人口が1万人増加。しかも、2021年7月からは医療費の無料対象を高校生まで拡大しており、これらの施策に、神戸市はおそらく危機感を抱いているだろう。

神戸市ではここ数年、ファミリアがデザインした母子手帳の配布や、政令指定都市で最高水準(上限12万円)の妊婦検診助成、市内に就職する幼稚園教諭・保育士に一時金を出して待機児童の減少を図るなど、子育て支援に熱心に取り組んでいる。今回の多胎児支援も、その一環ではないだろうか。

「駅構内に現れた意味深なポスター」

そんななか、JR明石駅構内に気になるポスターが登場。真っ白な背景に、黒字で大きく「家どこ? って言われて神戸の方とかいうぐらいやったら 神戸に住んだほうがええな。」と書かれ、ツイッターでも「明石駅に貼るの喧嘩売りすぎ」などと投稿され話題となったのだ。

実はこのポスターは、神戸市による移住促進広告。明石駅は市の東端で、神戸市との市境に近いため明石駅ユーザーの約半分は、神戸市民や、神戸市内の職場・学校に通う人なのだ。

そのため以前から、よく神戸市の広告が駅構内に貼られており、明石駅をときおり利用する筆者は、「両市のせめぎ合いがおもしろいな」と感じていた。

だから広告を見たときも「今度はこう来たか」くらいに思っていたが、ネット上ではおもしろがる意見もある一方で、神戸市への批判も少なくなかった(現在、同広告の掲載は終了)。

ほかの周辺自治体の主要駅にも、地域に合わせたフレーズの広告が。阪神尼崎駅には「補助金が出るから神戸に引っ越すん?とか言われて腹立つけど、当たってるもんな。」(神戸市提供)」
ほかの周辺自治体の主要駅にも、地域に合わせたフレーズの広告が。阪神尼崎駅には「補助金が出るから神戸に引っ越すん?とか言われて腹立つけど、当たってるもんな。」(神戸市提供)

「ギリギリをねらうのが理想的」(久元市長)

この広告について会見で質問を受けた久元喜造神戸市長は、「受け止め方は、人によってさまざまだと思う」と明言を避けたが、一般論として「普通の広報をしても話題にならないが、話題性をねらうあまり常識を超えたものになると批判を受ける。兼ね合いが難しいが、そのギリギリのところをねらうのが理想的な広報ではないか」と述べた。

広告について聞かれ、苦笑しながら考えを述べる久元喜造神戸市長(9月22日・神戸市役所)
広告について聞かれ、苦笑しながら考えを述べる久元喜造神戸市長(9月22日・神戸市役所)

しかし、久元市長はもちろん、市役所の広報戦略部も広告内容を把握していなかったといい、「各局がばらばらに広報をするのはいかがなものか。全体のポリシーを広報戦略部と相談したうえで、各局の職員が創意工夫をこらしてほしい」と問題の改善を求めた。

今回の広告、たしかに文言は少々行き過ぎていたかもしれない。しかしこれも神戸市が、人口5分の1の明石市を強力な「ライバル」として見ているからこそ、生まれたフレーズだと感じる(神戸市は152万人、明石市は30万人)。

果たしてこのたび発表した双子・三つ子支援策は、市民や周辺の自治体に住む人に「神戸で子育てをしたい」と響くのだろうか。

取材・文・写真/合楽仁美

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