パラ開会式で注目のウォーリー木下「驚くほど1つのチームに」

演出家・ウォーリー木下(8月下旬・神戸市内)
片翼の飛行機が仲間の助けを借りて飛び立つという、ストーリー性の高さや驚きの演出で、賞賛の声が多くあがった『東京2020パラリンピック』開会式。その演出を務めたのが、関西小劇場界で20年以上に渡って活動し、現在は『ハイキュー!!』を始めとする2.5次元の舞台を数多く手掛ける演出家・ウォーリー木下だ。そんな時の人・木下の独占インタビューが実現した。
取材・文/吉永美和子
──開会式のオファーを受けたときの気持ちはいかがでしたか?
20代の頃から「演出家と名乗る以上、1つの目標は国際的な式典のオープニングだ」と思い込んでいて(笑)、ことあるごとに人にそう語ってました。そして「ビッグ・アイ(国際障害者交流センター)」で、障がい者の人たちと一緒に作品を作ったことと、僕の兄が生まれつき重度の障がい者で、小さい頃からそういう方たちとの関わりが深かったことがあって、次第に「パラリンピックの開会式ができたらなあ」と思うようになったんです。だからオファーをいただいたときは、本当にうれしかったです。
──空港をコンセプトにした美術や衣装、地面に投影された各国の国旗が、風のように消えていくプロジェクションマッピングなど、見どころが大変多い開会式でした。これらのアイディアは、どのように生まれたのでしょうか?
パラリンピックの全体テーマが「WE HAVE WINGS(私たちには翼がある)」なので、開会式は「風」をテーマにしようというのは、僕からの提案です。でもそこからいろんな人が・・・それこそ1コーナーにつき1アーティストが関わっているぐらい、いろんな人がアイディアを出してくれました。「片翼の小さな飛行機」も、デザイナーさんが「こんなビジュアルがいいのでは?」と描いてきてくれて、そこから内容が決まっていきましたね。
──ウォーリーさんが全部決めたというわけではない。
むしろ僕は、何もやってないんじゃないかと(笑)。現場の動きは(振付家の)森山開次さんにほぼお任せしていましたし、僕の役割は、AとBの案どっちを取るか? というときに、最終的なジャッジをするという感じ。でもトップの人が口うるさいと、あまり良くないと思うので、それがむしろ良かったんじゃないかと思います。
──確かにキャストがみんなのびのびとしていて、気持ちのいい現場だったんだろうなというのが察せられました。
本当に良い雰囲気でしたよ。集まった人たちの才能を存分に、あるいは隠れた才能を引き出すには、楽しく自由にやれる環境を作るのが、すごく重要。僕も含めて全員が、そういう現場にしたいと思っていて、おかげでビックリするほど全員が、1つのチームになれました。もし僕がひとりで全部やっていたら、絶対混乱していたと思う。みなさんの・・・特に森山さんと、「SLOW LABEL」(注:障がい者と社会をつなぐNPO法人)の栗栖(良依)さんが一緒にいたから、できたことだったと思います。
──とりわけデコトラ(デコレーショントラックの略)からミュージシャン・布袋寅泰さんが現れたときは、最高に盛り上がりましたよね。
光るトラックがやってきて、その周りを障がい者の方たちが演じる、さまざまな乗り物が取り囲んでいる。彼らは全員ヘッドライトを付けていて、自分の光を片翼の飛行機に与えることで、和合(わごう)由依さん演じた少女は飛び立つ。最後ひそかに翼が光ってたのは、その光を背負っていたからという設定です。
──周囲の理解や助けを支えに、不可能と思われることを可能にするという、まさにパラリンピック精神のメタファーとなるような内容でした。
今ずっとパラリンピック(の競技)を観ているんですけど、やっぱり選手のみなさんは、まず自分を支えてくれた人たちへの感謝を語るんです。でもそういった助ける・助けられるの関係が重要だというのは、健常者も一緒ですよね? 人はひとりではやっぱり生きていけない。いろんな人のいろんな思いや手助けがあって、今ここにいるということを「光をもらう」という形で表現できたのかなあ、と。
──助けてもらうのはうれしいということと同時に、助けた方も相手が輝くのを見るとうれしくなるということも、同時に表現されていたと思います。
そう感じていただけたらありがたいです。そんな風に「この飛行場は何なのか?」「飛行機は何のメタファーなのか?」を考えることで、どんどん自分ごとにできるという、演劇的な擬人化や見立てが多用された式典になりました。普段僕は何気なくやってますけど、演劇のイマジネーションを喚起する力は大きいんだなあと、改めて思い知った感じがしました。
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